カイカは近頃、ラズリルから猫を拾って来ていた。(…他に、人間も拾って来ていたが)



「ねこ。」

にゃごにゃごとジャレ付いて来る猫と遊ぶのは構わない。
例え、元気盛りの猫の本能に火が付き、手やら顔やらをキズ塗れにされていても、まあ止める筋合いではないだろう。
そう…


「………」
「ねこねこ(♪)」

どたたたたたた!シャーッ!

「………〜〜〜」
「ねこ」

どたん!ザリザリザリ…

…この部屋でなければ。

にゃー…ザリザリ〜ッ

「あ。」
「〜〜〜〜ッ」

ぷつん。…と、勘忍袋の緒が切れた…

「外でやれ−−−−ッッ!!」



…1人と1匹はテッドの部屋で暴れていた…。





「…いたい」

別にカイカは、テッドからゲンコツをもらって、痛がっている訳ではない。
ひっかかれたキズを、そのひっかき主に、ザリザリと舐められている為のセリフである。
…まさに、キズ口をヤスリで削られているような感触なのだろうが、カイカは変わらず無表情で猫の好きにさせてやっていた。
それは確実に痛いだろうな…とテッドは思った。

「ねこねこ。」
にゃー

…騒動は収まり、静かに遊んでいるからいいものの(そうでなければ、部屋から出て行かせている)、なぜだかまだテッドの部屋に、猫同伴でいるカイカだ。
1、無理矢理追い出す。2、もう1回怒鳴る。3、諦める
………咽も痛いので、諦める事にした。
…一日くらいなら、まともに相手をしてやってもいいだろうし(※ほだされてる)、…猫もそんなに嫌いじゃない…

「…カイカ、」
「?」
「その猫、なんて名前だよ」
「? 猫。」

…。

「…もう一度聞くけどな、…猫の名前だ」
「猫。」
「……………」

ちなみに今のを訳すならば… 「猫っていう名前」 …だ。
…テッドがまた怒鳴り散らした事は言うまでもない事だろう…まともな名前を付けろ!いや、一般 常識を学べ!と…
まさに可愛さ余って憎さ百倍の良い例である。
…しかし、愛であろうがなかろうが、暫くほのぼのとした時間を持とうとテッドが思う事はないだろう。





そんな事があり、カイカは悩んだ。
滅多にない程、頭を使って悩んでいた…。
カイカは、人から「名前を付けるのは好きな物の名前を付けると良い」と教えてもらっていた。(まあ少々片寄ってはいるが、間違ってはいないだろう。…おかげで、まんじゅう船こしあん軍などという名称が付いてしまったが…)
幾らカイカでも、学ぶ事はあるので、「てっど」と付ける事は無い。
本人も、「てっどはてっど。」と、彼は彼以外では有り得ないと思っている。
ではまんじゅうにするかと言えば、それは船の名前にもう付いてしまっている。

「…」

カイカが考えた末に思い付いた物は…








「まぐろ。」
にゃ〜
「まぐろ。まぐろ。」

猫と変わらず遊ぶカイカ。
今の場所は、ごはん時の為食堂だ。
カイカはフンギから貰った、魚の余りを猫に与えている所だった。猫は間違ってカイカの指まで噛るというような、ほのぼのとした光景をも見せていたりする。

…それは良い。

「まぐろ(♪)まぐろ(♪)」

と、カイカが無表情に嬉しそうに猫を呼ぶ度に…

 

「聞いた?ポーラ、カイカ猫に名前付けたの、」
ひそひそ
「はい、…嬉しそうですよね、カイカ。」
ひそひそ
「だよね?テッドの好物なんだってさ、〜もーっそんなに好きなの!って感じでさ、ちょっとねー」
「…妬けますね、」
ひそひそ
「そう! …それに、スノウなんて呪い人形使って何かやってるって聞いたんだけど、大丈夫かな?」

 

…こんな具合に(?)、「そこまで惚れられやがってこのヤロウ」的な会話が、そこかしこで囁かれていた…。
怒りたい。
…しかし、多少「うっ///」と来たのも、確かで…。
なら、どうすればいいのかと言うと…


―――――もう、どうにもしようがないに決まってるだろうがッッ(怒)



…そんな訳で、
まんじゅう船こしあん軍在住のラズリル猫の名前は、「まぐろ」となったのだった。

 

…オチなかった…;