一年が終わり、新しい年を迎える為の最後の日、それが大晦日である筈だ。
確かに、今が群集諸島の命運を賭けた戦いの最中であろうがなかろうが、それを意識するのはまあ仕方のない事だと思う。
来年の今日この日を迎えられる奴も居れば、当然迎えられない奴もいる訳で(戦いに負ければ全員が迎えられない羽目になるだろうし)慰労しあいたいという気持ちはわからないでもない。
――――ないが…。



「酒のつまみが足りねぇぞー!」
「あれ?ここに置いてた酒は…」
「エレノア様が全部持ってっちゃいましたよ〜?」
「オイつまみーッ!」
「自分で釣って来いよ」
「いや!もう誰か飛び込んで獲って来いッ!!」




ドッボ〜ンッ!!ガハハギャハハ!………と上がる水しぶきととめどなく上がる笑い声…。



宴 会 を 開 い て ど う す る !?



…テッドは甲板の入口で、黙って額に青筋を浮かべた。


 

 






「あ!テッドも来たんだ〜?」
この酔いどれ達の集いの中で、元海上騎士団4人のグループはかなりまともな部類だった。
小さな輪を作り、そこで飲み物(酒もあるがアルコールの入っていない飲み物もある)や食事などを比較的大人しく楽しんでいる様子だ。
こっちこっち〜!と呼ばれるままにテッドは歩き、敢えて仏頂面で口を開いた。

「別に来たくて来た訳じゃない」

そう。食事を取りに出た所、食堂は酔い潰れた連中が集い、調理場は注文が出来そうな様子もなくてんてこ舞い。何とか話を出来そうな者から「忘年会の真っ最中だから、食事を取りたかったら甲板へ行け」という言葉を聞き出し、ここまで来たのだ。

「今日はここまで来ないとメシが食えないからなぁ」
「マグロ丼食べるか?」

差し出されたそれを、黙って受け取る。
とりあえず、まだこの席が1番安全だという事はわかっている。それに、食事さえ済めばすぐ自室に戻れば何の問題もない――――…
しかし、ふと気が付いた。

「……………」
「どうかしましたか?」
「………別に。」
「あ!わかった! もしかしてカイカがどこにいるかが気になるとかでしょ?」

ずばり図星だ。
普段姿が見える相手が急にいないと、何だか気になるという現象に襲われ、騎士団4人組に生暖かい視線を注がれる結果となった。

「そんな訳あるかッ!!」

照れ隠しに怒鳴り、手近にあった酒を煽って話を逸らそうとしたが、そんなものにごまかされる相手ではなかった。お節介な連中は、テッドが聞きもしない内にカイカの居場所を喜々として教えてくれる。

「ほら、あそこだあそこ」
「今、あの辺りで動き回ってるのカイカでしょ?」
「―――――ブッ!?;」

思わずテッドは口の中の物を噴き出した。


………何故なら、指し示された方向では、カイカが商売女のごとく酌をして回っていたからだ…。(しかもかなり慣れた手つきで。)


「――…ッ何で軍主に酒の酌なんかさせてるんだよ!?(怒)」
「え?変かな?」
「そう言われてみれば…確かに;」
「騎士団の時からやってたしなぁ、慣れてて違和感なくなってたよな」
「前からもやらせてたのかッ!?;」

頷き合う一同に、(噴き出したものを拭いつつ)テッドは突っ込みを入れる。

「でも、これには一応事情があるんですよ?」
「…どんなだ?」

うろんな目付きでポーラの言葉を待つ。

「海上騎士団にいた頃も、やはり酒の席があったのですが…その席で女性隊員が酌をするというのが通例になっていたんです。で、当然酔いに任せて不埒な行いをされる事も少なくなくて…」
「そうそう!それでカイカが代わってくれたって訳、」


代わりに不埒な事をされてどうする…!


ピキリと青筋を浮かべて怒りを堪える。
そんなテッドに気付いたのか、一同はフォローに走るがその表情は陽気な笑顔だ。…少し酔いが回っているらしい。

「大丈夫だって!カイカにそんなそこまで卑猥な事する奴はいないからな!」
「………あれは?」


遠目だが、カイカが酔っ払いに肩を引き寄せられ頬擦りされている様子が見える。


「熱烈な親愛行動の一種です」
「…………じゃあアレは?」


次の席で、酌をするカイカの尻を撫で回し揉みしだいでいる酔っ払いの姿。


「かなり過剰なスキンシップの一種だな」
「……………、〜〜アレはどうなんだ…ッ?」


酒臭い息の酔っ払いに、ぶちゅっとキス(ほっぺ)を贈られているカイカの姿…。


「度を越えた友愛の…」
「もういいッ!(怒)」


途中で言葉を遮り、テッドは怒りに任せてズカズカとカイカの方(酔っ払いの群れの中)へ歩き出す。
無論、酔っ払いからカイカを引っぺがす為だ。

「てっど」

無表情ながら、相手は嬉しそうなオーラを振り撒いてこちらを見た。
そこをスバンと頭をはたく。

「いたい」
「〜〜〜オマエ」

頭を両手で抱えるカイカ。酒臭い(酔っ払いの臭いをつけられたらしい)上に、テッドの機嫌の悪さに気付いていない様子だ。

「…何、してるんだよ?」
「…お酒。(訳:お酒注いで回ってる)」
「今すぐやめろ!(怒)」
「?(訳:どうして?)」
「どうしても何も…!(怒)」

首を傾げるカイカに、テッドはブルブルと怒りに震えながら怒鳴ろうとしたが――――…
周りの「痴ー話ー喧ー嘩ーっ」「ひゅーひゅー!」「邪魔すんなー!」「むしろこの場でヤれ〜!」「脱げー!」…だのという酔っ払いの野次に、出鼻をくじかれてしまった…。
そのまま、怒り状態で硬直したテッドに何を思ったのか、カイカがはっ!と何かに気付いたような表情(でも無表情)になると、新しく取り出したグラスにとくとくと酒を注いだ。

「てっど」
「違うッ!(怒)」

テッドもどうぞ?と渡して来たカイカに、もう一度頭をはたく。

「〜〜〜〜もういいから来いッ!(怒)」
「?」

ぐいぐいと全く抵抗のないカイカを引っ張り、その場から離れて行く。途中で酔っ払いに止められるかと思ったが、野次は上がるもののテッドの行動が阻止される事はなかった。


――――とりあえず、酔っ払い供に触られた場所を触り直す…ッ(怒)


そう心に決め、自室に向かう(嫉妬に燃えた)テッドの姿が甲板から消えた途端―――


「…よし!元旦までぶっ通しで姫初めに2万ポッチ賭けるぞ!」
「いや!途中休憩を入れての姫初めに…!」
「大穴で途中で耐え切れなくなったカイカ様が逃げ出すに1万!」

わはははは!と沸き上がる笑い声…。
…間違いなく、酔っ払いの賭けのだしにされていた……。



「…下品です」
「でも賭けてくる?」
「とりあえずヤるにはヤるだろうな…;」
「問題は日付が変わる頃って訳だなぁ」


しかし、それを止める者もなく、酔っ払いに満ちたまんじゅう船の大晦日(=乱痴気騒ぎ)は過ぎて行くのだった…。

 

 

 

 

時間の都合で、えろすなシーンはありませんでした。(吐血)

…書きたかった気持ち半分、タイムアウトな気持ち半分。(笑)

 

補足:拍手にてメッセージが入りました(ありがとうございます♪)のでこちらで補足です♪
姫始め…そう、日付が変わった元旦に行われるアレですが、
現在大晦日。テッドさんがぶっ通しでやるのかやらないのか、どうなるのかという賭けです。(ええええええっ!?;)
…ゴハンは?(※問題点はそこではない)