巨大船、まんじゅう船は常に海の上を漂っている。
勿論、街に寄港する事も多い為、陸の上で過ごす事もある。
しかし、圧倒的に海の上で過ごす事の方が多いのだ。
それ故、必然的に娯楽は海で出来る事に限られて来る。
まんじゅう船甲板、そこでは現在――錨を降ろし、船が停止している為――船員らは日光浴や釣りや泳ぎ等を楽しんでいた。(………勿論、警戒の為に戦闘員がいたりするが、気を抜く時には気を抜くというアバウトな海に暮らすものの考えでほぼ形だけのものだったりする。…そのクセ、テッドが部屋に戻ろうとすれば、「軍紀違〜反!」とブーイングが上がるのだ。)
「……………」
現在、テッドは半ばヤケクソ気味に日光浴を楽しんでいた。…かなり不機嫌そうだったが。
「そう言えばさ〜」
その不機嫌さをものともせず、元カイカ保護者連中の1人、ジュエルが声をかけた。
「テッド、あんたって泳げた?」
「……………」
黙秘っ。
…という訳にもいかず、渋々彼は口を開いた。(この辺りが付き合いが悪そうに見えて、実は付き合いのいい男と言われる由縁である。)
「泳いだ事事態がない。」
「それはちょっと困るかもね〜」
「一応海戦では泳げる事が必須って、この間決まったしな。」
「今の所、暇だし泳ぎ方を習っておくか?」
「カイカが1番泳ぐのが上手ですよ、」
いつの間にかわらわらと寄って来た騎士団員元カイカ保護者連中が、さりげなく…もとい。割と露骨に2人の時間をとらせようと画策して来る。
「……………(怒)」
――ここで怒鳴らなっても仕方がない。
テッドはお節介な人間らに、ピキリと青筋を浮かばせながらも、その話題の主を探した。
「その肝心のカイカはどこにいるんだよ?」
「え〜っと…あ!ほら、あそこ!」
「今、海面に顔を出しました」
…2人が指差した方向には、確かにカイカがいた。
人魚らと遜色なく海で遊んでいるカイカがいた。
そう…ヨロイ(防具)を装備したままのカイカがいた。
「〜〜〜〜あれくらいに泳げるようになれって言うのか?」
今まで泳いだ事のない人間には無茶だ。無理だ。無謀だ。
…が、メンバーら(周りで話を聞いていたらしい船員含む)はうんうんと頷いてテッドに肯定してみせた。
「まあそうだなー。装備つけたまま海に落ちても、大丈夫な程度にな、」
「最初は着衣のまま泳げるようになる練習からか?」
「出来るかァッッ!!!!(怒) 大体っカイカ!普段からヨロイ着たまま泳いでどうする!!」
「大体、脱いでたら脱いでたで怒るくせに…」
「そうですね、それにカイカが脱ぐと船上の風紀が乱れますし…」
そのまま乱闘に縺れ込まれる前に、名前を呼ばれたかと感じたカイカが、なになに?と戻って来た。
ビチビチと跳ねる魚をお土産に、甲板に上がって来たカイカは、そのままテッドの泳ぎのコーチにつく事になった。
小船を一叟準備し、その上での特訓開始だ。(ギャラリー達はまんじゅう船の方から面白そうに顔を覗かせている。)
「…まず、何するんだ?」
早く泳ぎを覚えて、この羞恥プレイじみた場所から逃げようと決意したテッド(上半身裸体)は、諦めたように自分からそう尋ねた。
「準備体操。」
端的に、しかし嬉しそうなオーラを出して(でも無表情)カイカは答えた。
どうやらテッドと遊べる(カイカ主観)事が嬉しいらしい。
「…………」
「…(?)」
海水に濡れて色っぽくなった姿(上着と胸当てとズボンを剥ぎ取られた、シャツとスパッツだけの状態)と相俟って、微妙にテッドの心にクリティカルを決めた。
「〜〜で、次は!;」
動揺を隠そうと、テッドがカイカから顔を背けた瞬間だった。
「泳ぐ。」
「なッ!?;」
―――油断していたテッドは、バッシャ〜ン!!と問答無用に海中へ突き落とされ、容赦なく海水を飲み込んだ。
「おま…っ!;ゴフッ何、考えッて…!!;」
「??」
カイカは不思議そう(でも無表情)に首を傾げる。…全く悪気はないようだ。
で、見学者だが――…
「お〜ガイエン海上騎士団式だな〜」
「あの、カナヅチの者なら誰しも最初に受ける洗礼ですね」
「『人間死ぬ気になれば何でも出来る泳法』だな、」
「テッド〜頑張ってね〜。」
「殺す気かッッ!!;(怒)」
テッドの当然のツッコミは、呑気な見学者らによって黙殺される事になった。
―――――幸か不幸か…テッドは、カイカの指導(足を動かせば沈まない、手を動かせば進む、…という程度。)の元、すぐさま泳ぎをマスターし生きながらえたという……。
「ちなみにあの泳法では、小船に捕まって来た場合、オールで手を払いのけるという手段に出ます。」
「でも残念だったよねっ、泳げなかったら伝説の『溺れる恋人を助ける為に泳げるようになる』が見れたかもしれないのに…」
「カイカが溺れるのか…?;」
「その後はお約束の人工呼吸、か…」
「………(怒)」
「…」←タオルを差し出す
(記念企画で書いたテド4主坊のネタで)少し使ってたネタを改めて書いてみる。(爆)