海原の真ん中で停泊した船のてっぺん。
テッドは見張りという名目で、カイカと共にマストの上に2人きりにさせられていた。
確かに、敵が現れるかもしれないという事であれば哨戒はしておくべきだろう。
――しかし、現在交戦中でもなければ、警戒中でもない状況で2人きりにさせられるとは………何らか策謀を感じてならない。
その証拠に、甲板に立つ見張りの船員らは、休息のように思い思いの行動をとっているばかりだ。(気を抜く時は気を抜いて過ごすという、海で生きる人間らしい様子だ。)

(余計なお世話だ…!)

変な気の回し方に、テッドは機嫌悪そうに狭いスペースに寝転がる。もうふて腐れるしかないという態度だ。
対するカイカは、無表情ながらも楽しそうに(テッドにすれば)何の変哲もない海を見つめている。

「……………」
「?」

風も波も穏やかで、天気も良く、隣には曲がりなりにも恋人が可愛らしく小首を傾げている……この状態で文句を言うと罰が当たりそうだ。(一般的な感覚として)

「…寝る、後は任せる。」
「…(こっくり)」

相手が頷いた気配を感じ、テッドはあっさりそのままふて寝…昼寝の体勢に入った。


―――とどかない…明かりから…にげて…
―――いつかみたあの場所で…なにかは待ってる…



「…………?」

――――歌?

どれくらいの時間が経ったのか、ふとテッドの耳に小さな歌声が届いた。
うっすらと目を開いてみれば、カイカが波の音に混じらせるように口ずさんでいるのがわかった。
どこの国のものともしれない歌、テッドは知らず知らずに音色に聞き惚れていた…。


―――I'm waiting for the night…The moment to be calm…
―――とぎれずに…ただようきこえるおとが…ふたりをつつみこむように…


「…上手いな…、」
「、」

ぽつりと呟いたテッドの声に、カイカは歌うのを止めて振り返った。

「何か他の歌も歌えるか?」
「…」

促すように微笑んで見せたテッドに、カイカも嬉しそうに促されるまま別の歌を高らかに歌い上げた…。


珍しく穏やかな恋人らしい雰囲気で過ごした…そんな昼下がりだった。











――――気付かずに不安を隠してた…
――――won't you take me in your heart…
――― 交わす言葉 暗い道照らす


いつの間にか動き出した船の揺れの中、それさえも心地良く感じさせる歌声に目を閉じたまま耳を澄ませる。

(コイツ、こんな才能もあったんだな…)

テッドがカイカの新たな一面に感心していたのもつかの間―――――突然船が大きく揺れた。

「何だッ!?;」


「カイカーーー!!;」
「ダメーーッ!!;」
「運航中に歌うなーーッッ!!;」


――マットの下から、元騎士団員達が制止の声を上げている…。
―――――隣を見てみれば、通常通り運航していたであろうの味方の船が、まんじゅう船にぶつかっているのがわかる…。

「………まさか;」
「…」


(カイカの歌に聞き惚れてぶつかったのか――…?)

テッドは顔を青くした…。
そして彼は、カイカの歌声がローレライやらセイレーンの歌声として恐れられている事を知るのだった………。

 

 

 

ふと…歌を歌う4主が書きたくなっただけ(吐血笑)
船を惑わしてしまえば良いとか思って作成!
…ちなみに、2つ曲を使っていたりしますが、前者が分かった人は拍手を進呈します。(爆)
コレがわかった人はかなりのマニアです。
…まあ、2つ目のは分かる人は、ニヤリ…vと笑ってやってください☆