―――それは、ある悲劇的な出来事であった…。




 












(あ〜…空が青いな…)


海面よりも、なお眩しい視界一面の空に、テッドはぼんやりと意識を浮上させた。
キラキラと輝く太陽、それを直視しないよう気を付けていても、その眩しさに目が眩む。
気のせいか、全身が濡れたように重く、身体を動かすのも億劫だ。
ぼんやりとした感覚の中で、ただ視界だけがやけにクリアだった。


(―――夢かな?)


それにしても、空が青い。
ぼんやりと感心した。
こんな色の中で、海を見たらどんな気持ちになるだろうか――…

一面の青。
海平線が空と溶け合い、煌めく光。


―――そして、青い海色の瞳。


…それも良く映えそうだ。


『てっど。』


そんな事を考えていると、脳裏に描いていた双眸が視界に混じった。
薄茶の髪が陽光に煌めき、影になった顔はハッキリと見えない。…その筈だったが、何故か無表情な顔も瞳も見取る事が出来た。

(…ああ、近くにあるからか…)

間近まで寄せられた相手の顔と、髪を撫でる指先に小さく笑みを浮かべた。
そうすると、無表情ながらもカイカも嬉しそうな様子で、他人にはそれとわからないような笑みを浮かべた。
慈しむような手の動きは変わらず、その姿はどこか、全てを包み込む海の女神のようにも映った…。


「…カイカ…」
「…」


思わず頬に手を伸ばす、
そのままカイカを引き寄せ、口付けを交わそうとしたが―――――





妙にハッキリとどよめきが聞こえた。





「…………………」

ギギギと、軋むように首を動かすと、山のようにギャラリーが集っているのが見えた。
…いや、ギャラリーの中央に自分がいた。

「目の前で熱愛宣言!!?」
「有り得ない!!」
「婚約前言か!?」
「テッドく〜ん!お幸せにーっ!」
「カイカさま〜!!」

悲喜こもごもな様子はさておき………なんだこの情況は?
テッドは考えた。
…そう、確か自分は無理矢理部屋から引っ張り出され、無理矢理泳ぎの練習をさせられていた筈だ。
…で、情け容赦もない特訓で当然溺れて―――

「てっど」

だいじょうぶ?と覗き込んでくるカイカの膝の上、と。………………………………………………………………、

 



テッドの絶叫(恥ずかしさのあまり)が、青空と海一面に響き渡った…。

 

 

 

 

(デレ部分を衆人の目に晒された、ツンデレの喜…悲劇。 
何気に溺れネタを引きずる。 
テッドさんは泳げるようにはなりましたが、 
多分ヨロイやら重石やらをつけての特訓で溺れた模様。 )