今日はクリスマス。
…その前日だ。


「………お前らカイカにプレゼントやるなよ」


そのテッドの言葉に一同は沈黙した。
しかも、いや〜な、沈黙だ。
そこで勇気を出して、タルが口を開いた。―――いつもはまるで気にしないタルでさえも、恐る恐るといった具合だ。

「そ、それはつまり…カイカにあげるのはお前だけって話なのか…?」
「違う!(怒)」

テッドは怒鳴った。
その通常の反応に一同はほっと安心した。
一応ラブラブな二人だとは知っているが、見るからにラブラブな言動をとるテッドというのはあまり見たくない感じだ。何故なら似合わないから。


「じゃあどういう事なのですか?」

ポーラが首を傾げて問う。

「…収拾癖、がな…――お前らも知ってるだろ?」
「「「「あ」」」」

カイカには収拾癖がある。
別になんでもかんでも取っている訳ではないが、特別な時にもらった物は全部残して宝物にしてしまうのだ。
…そう、食べ物でも。

「まんじゅうなんか100人近くも渡してみろ…(怒)」
「う、うわぁ〜;」
「間違いなく腐るな;」

100個ものまんじゅうがみっちりと箱に入って腐っている…そんな光景は見たくないだろう。

「じゃあ腐らないもの?」
「でも100個近くもあったらそれでもな〜;」
「今までは4人分だけでしたから…」
「なんとかならねぇか?」
「―――とにかく、俺はもう戻るからな。他の連中にも伝えろよ」

話し込んでしまった4人に、テッドは背を向け歩き出す。

「あ、ちょっと―――」
「…何だ?」
「あんたは何あげるの?」

ジュエルの言葉にテッドは少しだけ眉を寄せた。


「俺は、アイツに何もやらない。」

 






―――部屋に戻ると、カイカがヤシの木に圧し潰されていた。


「…」
「カ…ッ!(怒)この――バカ野郎!何潰れて…!いや違う!なんで俺の部屋にそんな物持ち込んでるんだよッ!?」
「クリスマス…」
「ヤシの木か!?本当にヤシの木を飾るのか!?違うだろうが!?(怒)」
「…(困っている)」
「いいからまず退けろッ!!(怒)」


…一体いつから潰されていたのか…
助け出したカイカは足が痺れて動けなくなっていた。
丈夫と言うかなんと言うか、…判断の難しい所だ。
仕方なくテッドは、自分よりも少しだけ身長の高い(でもとてもそうは思えない)相手を抱き起こしてベッドに運んでやった。

「…大丈夫か?」
「…」

足が痺れて身動き一つとれていないが、大丈夫のようだ。(…足の痺れから漏れる声が、『あの時』の声に似ていて少々問題だったが、)

「………」
「…」

話題が途切れてしまった。
何となく、間が悪い…。

―――仕方なく、テッドから口を開いた。

「…クリスマス、したいのか?」
「?」

無表情だが、よくわからないといった雰囲気でカイカは視線で問い掛けた。

「………俺と、」
「…(こくこく)」

頷くと―――足が動いて、カイカは身悶えた。

「!!!!!」
「動くな!!;足伸ばしてじっとしてろ!…何で真面目な話にならないんだよ、お前と話してると…;」
「?」
「(いいか、もう…)―――――俺は絶対お前に何も渡さないからな、」
「…」
「クリスマスだけじゃなくて、思い出になるような物は全部、」
「…」

戦いが済んだならそれで終わりの関係なのだから。

そう言外に込めて、テッドはわざと冷たくカイカに告げた。

「………」

黙ったままカイカを見つめる。
泣くだろうか?
せめて、まんじゅうを落とした時くらいには、悲しむだろうか?

「…」

カイカは珍しく何か考えているようで―――――


…そして、その後にとった行動は、予想外の物だった。


「てっど」

にこ〜とカイカは嬉しそうに笑った。

「!?」
「…」

まだ足が痺れていたようで、すぐに笑顔は消えてベッドに突っ伏したが、

「な、んで…」
「?」
「何で笑え―――…」


コンコン、


「すみません、テッドさんだけ出て来てもらえますか…?」

タイミング良く、部屋の外からポーラの声が聞こえて来た。






…。








「―――何なんだ?(怒)」

思いっきり怒気を覗かせてテッドが言った。
それもそのはずだ、目の前には網、ロープ、武器、…諸々の物を持った108星が集まっていたのだから…

「あのさ、クリスマスプレゼントの事なんだけどね、」
「…あぁ(怒)」
「カイカが喜ぶ物でさ、まんじゅう以外で何があるって全員で会議した所なぁ」
「………(こいつら、暇なのか?>怒)」
「やはり、」
「あぁ、」
「うん、」

テッド以外の全員が顔を見合わせて、苦笑いをした。そして、


「「「「「「「「「『テッド』しかないだろう、って事になって♪」」」」」」」」」
「ふざけるなーーーーーーー!!!!!(怒)」


プレゼントにされて堪るかー!(怒)とばかりに、ソウルイーターが思いっきり発動した。


 

 


メリークリスマス!









ソウルイーターの攻撃の振動が伝わる部屋の中。
カイカはまだ足が痺れて苦しんだままだった…。

でも、そんな中…


「…大事、」


1人ぽつりと呟いて、嬉しそうだった。

―――――大事にされている、
そんな気持ちをクリスマスにもらってしまった。
無表情だが、とても嬉しそうにカイカは転がっていた。




終わる。