『観用少年(プランツドール)』

 

 

『観用少女』。
それは、ミルクと砂糖菓子を食べて、絹のドレスやシーツに包まる『人形』達。
元々は貴族の隠れた楽しみと言われる存在達。
持ち主の惜しみない愛情を受け、輝く『人形』達だった。

 

―――で、そんな『人形』(プランツ)の中でも、変り種の『観用少年』の持ち主がいた。

 

「ダメったらダメだ!;」
「…」

サラサラの茶の髪に、キラキラと光る海色の瞳。
服装は赤いバンダナと、シャツにハーフパンツという『人形』らしからぬ格好だったものの、とても可愛らしい様子だった。
そんな『人形』であるカイカが、その持ち主であるテッドに、懇願の視線を送っていた。
『歌う少女』(プランツ)という種類はあるようだが、『人形』は殆ど喋る事はない。
そのため、目は口ほどにものを言うのだ。

「だから…―――お前はまんじゅうは食べられないだろうが!!」
「…(ふるふる!)」

…うっかりまんじゅうをやってしまい、危うく育ってしまいそうになったカイカ…。
そんな失敗を踏まえて、テッドは心を鬼にしてそう叫んでいる。
またうっかり人から土産でまんじゅうを貰い、それを隠す前にカイカに目撃されたというのが、この言い争いの発端のようだ。
…もう、テッドはカイカの懇願に負けそうになり、『人形』が育ってもいいじゃないか…!とヤケクソに考えていた。
そう、何気に『人形』を育てて、妻にする男は少なくないのだ。

「―――はっ!;」

そこまで考え、テッドはカイカが『観用少年』である事を思い出した。
そして、心を鬼にして、まんじゅうの箱をカイカの手の届かない棚の上へと隠した。

「とにかく!;ダメなものはダメだッ!」
「…」

テッドがそう言い切って、そっぽを向くと…―――少しして、カツン…と何かが転がるような音がした。

「?」

その音にテッドが振り返ってみると。

「…っ」

…カイカの海色の瞳から涙が溢れ、その瞳と同じ色をした石が床を転がっているのだ。

「カッ…かっ…!!;」
「…、…っ」

 

カイカーーー!!;と、テッドの大きな悲鳴が上がった…。

 

 

 

 

 

「ええ、『人形』というものは、名人の育てた一品ともなると、『天国の涙』と呼ばれる結晶を生み出すこともあるのです。…勿論、最高にいつくしまれた最上の『人形』からしかとれませんが…――――それにしても…」

『天国の涙』を生み出したのに驚いて、『人形』を担いで走って来られたのはお客様が初めてでしたよ、

と、店主。

 

…まあ、そんなこんなで、2人は割りと平和に暮らしているらしい。

 

 

(番外的な感じで…)