ハロウィン=仮装してもいい日。
あっているが間違っている。―――そんな認識からこの話は始まった…。




「あれ?今向こうで歩いてたのお前じゃ無かったのか?」
「はぁ?」

食事を取りに行く為、廊下を歩いていると、突然オベル国王(らしい)からそんな事を言われた。
しかし、向こうも何もここにテッド自身がいるのだから、向こうにテッドがいる訳が無い。

「―――何でだよ?」

不信感を覚えたテッドはそう尋ねた。で、

「いや、最初遭った時のな…顔の隠れるローブとランプ持ってうろついてたヤツがいたから、てっきりお前かとな(笑)」

そんな格好で船内をうろつくかッ!!(怒)

「しかも、お前だってつい言っちまった、ハハハ!すまんなぁ!」
「ハハハじゃないだろッ!?(怒)」

コスプレ(?)をして船内を歩き回るテッド…そんな物は見たくないだろう…。
テッドにとっては不名誉な誤解を解く為、かくしてテッドの犯人探しの旅(?)は始まった…。



しかし…




「え?アレあんたじゃなかったんだ?えーと、甲板の方に行ってたケド…」
「お前じゃなかったのか?なんかキノコとか生えてる場所に入ってるの見たぞ」
「うふふふふ〜」


異様にウロウロしているらしく、どうにも掴まらない。(しかも怪しすぎて誰も声をかけられないらしい。)
たまに視界の端を掠めるのだが、振り向いた先から別の場所に移動するので掴まりやしない…。

「クソッ!」

舌打ちをしてテッドは足を止めた。その間にもテッドの不名誉な噂(コスプレ徘徊…)は広まって行く。
一体誰がこんな事をしてるんだ!?と怒りに燃え上がるテッドだが――――ふいにその時、怒りが止まる。
誰が―――…
と、考えるとすぐに答えが出るのだ。そう、こんな事を仕出かす奴と言えば、テッドの心にあるのは1人しかいない。
……………なるべく、怒りを押さえた声でテッドは視界の隅にまた現れた黒ローブに向かって声をかける。


「―――――カイカ、」


「…」

そしてその声に気付いたのか、ピタっと黒ローブが動きをとめる。かと思うと、急いでテッドの方に向かってせわしなく駆けて来た。そしてテッドの前で止まると、独りでにフードが落ちて…

「てっど。」

外見の割りに中身は丸っきり子供という…まんじゅう船こしあん軍リーダーのカイカが現れた。
…楽しく過ごしていたのか、頬を上気させてピンク色に染め。いつもの無表情な顔にははにかむような笑みを浮かべていた。

――――理由はまずは聞くまい、


「…カイカ、」
「てっど?」

は〜、と拳に息をかける。

――――まずは、理由は聞かない。…聞いたら絆されてしまうから、

…せーの、

テッドは、加減はしつつも、カイカの頭に拳を思いっきり降り下ろした。
痛そうな音と同時に、ネコにデコピンをかました時(?)のような鳴き声が聞こえた…。






「で?何でこんな事したんだよ」
「…」

まだ目尻に涙を浮かべて頭を抱えているカイカに、テッドは声をかけた。
…下はいつもの服なのか、しゃがんだ裾から覗く素足が妙にエロティックだ。

「……………」

それからは目を逸らしつつ、ちょっと強く叩き過ぎたかと、頭を撫でてやるお、ようやくカイカは立ち上がった。そして、

「はろうぃん。」
「は?」

…良くわからない事を言った。

…。

要領を得ない会話をカイカと交わし、解読し、そしてわかった事には、―――――どうも絵本を読んで、ハロウィンと言う行事を知ったらしい。(なんでテッドの扮装をしたのかはよくわからないが)

「とりっくおあとりーと…?」
「…なんで疑問形だよ(汗)」

発音が微妙に、どっちにする?というよりも、これでいいのかな?という感じで喋っている…。
しかし、ランプを持ったまま首を傾げる姿が可愛らしく、クラッと来るテッドだ。これだからタチが悪い。

「とにかく、俺の格好(?)は止めろ、;」

確かに、魔女(?)っぽい衣装ではあるが、リノが口を滑らせたばかりに、テッドの扮装だという事はばれてしまっている。カイカが顔を見せて歩いていても、「ああ、テッドさんの格好してるのか…」というような妙な認識で、生温かな視線が送られる事は間違いない…。


「あーーー!いたいた!」


そんな時、ふいに少女の高い声が響いて来た。

「やっぱり怒られてる、」
「だからやめとけって言ったのに…」
「言って聞くカイカではありませんし…」
「それは違いないな、」

…もう保護者の役をテッドに譲り渡した、騎士団メンバー達が現れた。今は小姑役だ。

「やっぱりダメだったかー?」
「…当たり前だろうが」
「カイカ、ダメだってさ、やっぱ他の衣装にしなよ、」
「…(こっくり)」

一気にその場は騒がしくなる。
まあ…とりあえずは、衣装は変わるらしいのでそれくらいは我慢しようとテッドは思う。


「兎の耳つけるか?」
「やっぱりネコではないでしょうか…?」
「いっそメイド服着せるか?」


―――――兎?ネコ?メイド服??
…………………うっ…!(汗)
…鼻血が出そうになったテッドだ。(ムッツリ)


「やっぱりもっと足をさー」

何かもうハロウィンの仮装からは遠く離れた事になってしまっている。
(準備していたらしい)衣装袋らしい袋からは、マントやらメイド服やらカボチャやらがわんさかと取り出されていた。…バニー服もある。(フィル製作)
何やらこの場で服を脱ぎ出し、更にはネコ耳を装着しているカイカを見て、テッドは慌てた。そして、その動揺は騎士団メンバーにはわかる為、笑いを堪えるのに必死に様子だ…。
ついでにジュエルが調子に乗った。

「カイカーネコにするんなら、首にリボンも付けてみなよ〜?」
「…(こっくり)」

(さすがに首輪はマズイので)大きな赤いリボンを渡されるカイカは、素直にそれを受け取って――――…

「――――!」

テッドは目の前にあったカボチャを掴むと、ガッ!とカイカの頭に被せた。
後、バサバサと黒マントをカイカの身体に巻き付けた。

「?」
「―――それにしとけ。」
「(こくっ)」

巻かれた本人はと言うと、何もわかっていない様子だったが、真剣に言うテッドにじゃあそうする〜とばかりに頷いていた。
そして、騎士団メンバーは思いっきり笑う為にこの場から走り出していた…。(懸命な判断)




で、ハロウィンはどうなったかと言うと。

何やらカイカが可愛らしい格好で「おかしかいたずらか?」とやって来ると言う事が噂になっていた為、こしあん軍ではまんじゅうを用意したり、あわよくばイタズラを選んで部屋に引きずり込もうとする輩が何やら画策していたりで、大変な騒ぎになっていた…。


「とりっくおあとりーと…。」
「カイカ様」
意気揚々と兵士A(匿名希望)がドアを開けると――――…カボチャお化けが立っていた。
「…カイカ様?」
「(こっくり)」

ちょっとショックだ…。しかし、彼はめげなかった。

「おいしいまんじゅうとお茶があるんですけど、その…」
「♪」
「――――オイ、」

嬉しそうにしたカボチャお化け(カイカ)の背後で、低くドスの聞いた声が響いた…。

「あ?………うわあああああ!?」
「………(怒)」

妙な仮面を付けた男が立っていた。…よくよく見ればテッドの服な訳で、テッドとわかるが、この場合(妙な)仮面 をつけた人物よりも、テッドの方がヤバい訳で…

「そ、その…」

何か言い訳しようと冷や汗をダラダラと流す兵士A…テッドは容赦なく、これで何人目になるのかわからない輩に言い放つ、

「吸うぞ?」

ピキーン!と凍り付く兵士だ。

「後!お前も何回言えばわかるんだッ!?(怒)」
「…(汗)」


結局一緒に回る事となっていたテッドだった…。

 




おまけ。


「まんじゅうばっかだな…」
「♪(こくこくこくっ)」

山と積まれたまんじゅうを前に、呆然とテッドが呟いた…。
ハロウィンとは果たしてこういう行事だっただろうか?
和菓子だと偉く雰囲気が妙だ。

「で、このまんじゅうどうするんだよ?」
「たべる、」

愚問だった…。
嬉しそうに即答するカイカだ…。
しかし…

「………」
「…」
「………」
「…」

テッドは黙って睨み付けていた。(教育)

「…みんなでたべる」
「よし、」

まあ…子供の躾のようだが、こう見えてもラブラブお付き合い中な二人だ…。
ちみっ子らとハロウィンパーティーならぬ、まんじゅうパーティーが行われたという事だ…。

 

 

仮面はレックナート様に借りたらしいです…(爆)3ルックのです…