相合傘

 

 

言ってみるなら、ザバー。

もっと言ってみるなら、ドバー。

 

バケツをひっくり返したような雨が降っていた…。

「あ”ーーー…;」

そして、学校内に残された少年が1人。

「雨降りやまず…僕は家に帰れない〜…♪」

意味もなく、リズムを付けて歌ってみるカナタだ。…やけっぱちのようだ。

どうやら、傘を忘れた上に、放課後まで居残ってしまったらしい。

「くっ…こうなったらカイルさんの下駄箱に愛の限りにラブレターを詰め込みます!大量 生産で朝まで粘りますよっ!!」

嫌がらせだろう。

しかし、自分にそう宣言するが早いか、カナタはダッシュで3学年の下駄箱へと向かった。

…のだが、そこには予期していなかった物が入っていた。

「あ。」

カイルの、靴。

(まだに帰ってなかったんですか〜…)

微妙にラッキー☆と思いながら、カナタはきょろきょろと辺りを見回す。そろそろ下校時間ギリギリだ、すぐにカイルが来ると思われたがふいにカナタは顔に緊張を走らせた。

「はっ!!もしやっ…!」

カッ!と目を見開く。

 

「用具室とかでカイルさんは襲われてるんじゃッ!?しかもセーラー服でッ!!」

 

 

薄暗い体育用具室…跳び箱に縛り付けられたカイル…(何故跳び箱?)

『先生ッ…止めて下さいっ……』

 

(本人の人権に関わるような映像な為、お見せ出来ませんと言う内容な妄想)

 

「ああっ…カイルさんッ!!なんて事にっ…!!」←人権侵害者

「カナタ…?何してるの?」

ちょうど部活(生物部)で遅くなったカイルが、妄想で暴走しているカナタの元に現れた。

「あ、カイルさんっ!無事だったんですねっ!!…じゃなくて、今帰りですか?」

「うん、カナタも…?」

「はい!!傘忘れてピンチで遭難中なんです!!」

にこにこと屈託なく言う少年に、カイルは小さく笑みを零す。その笑顔にますます悩殺されているカナタだったりするが、そんな事には気付かないカイルだ。

自分の折り畳みの傘を示し、首を傾げてみせる。

「入って行く?」

「(相合い傘ッv!?)はいっ!よろこんでっ♪」

「うん…」

あまりの喜びように、よっぽど傘がなくて困ってたんだ…と思うカイルだった…。

 

 

降り方が大分柔らかくなった雨の中、2人は並んで校門を出てゆく。

カイルが持っていた傘は折り畳みにしては大きく(保護者の過保護っぷりが伺える)、どちらも余り濡れずにすんでいる。…まあ、それは少年がぴったりとカイルにくっついているせいもあるだろうが、

そして、カナタは考えていた。

(ふっ…ここでカイルさん傘を受け取り、僕がカイルさんに差してあげると言うのがお約束かつ、ラブラブなパターンですね!さあ!いざッ!!)

 

…。

 

「ああっ!!;」

「Σ!?;」

…カイルの方が身長が高いのであった。

「くっ…(泣)―――――カイルさんっ!!」

「何?;」

「僕きっと身長大きくなってみせますからねっ!!」

宣言して大きく成れると言うものではない。

しかし、そう熱意を込めて宣言すると同時に、カイルの手を握るように、傘の柄を一緒に握った。

「今は一緒にっ!って感じでv」

「……うん、」

雨の中、伝わる温度が心地よい。

 

 

 

…その日、カイルの家まで着き、再び豪雨に降られたカナタは、始めての同居(?)体験版!が出来たという事だった。

…とりあえず、押し倒しはしなかったらしいが、父親に「カイルさんを僕に下さい!」宣言はやらかしたらしい………。

 

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