水着
「水着が眩しい季節ですね…v」
水泳バックを振り回しながら、カナタはそんな事を言った。
…そして、周囲の物は困った。
本日、プール開き。確かに、そう思って今日の体育の授業を心待ちにしている男子生徒は少なからずいるだろうが、まさか女子生徒の中で既に男子外と認識されているカナタが、そんな事を言うとは誰も想像していなかった事だ。
一瞬熱でも出たのか!?(又は、世界滅亡の危機か!?)と恐怖したクラスメイト一同だったが、次の少年の言葉で、通 常通りの雰囲気に戻った。
「カイルさんの水着姿…vっていうか生肌楽しみです…♪」
なるほど。
納得してしまえばそれまでだ。
確かに、高等部三学年カイルさん、とてもとても注目を集める存在ではある。そのカイルの生肌と言えば、ついつい視線を向けてしまうかも知れない代物ではあるが――――…そんな事を口に出そう物なら、いや、考えただけでも、この少年の恐怖の報復が待ち構えている事だろう。ので、誰も何も突っ込まなかった。
唯一、一応親友であるらしいジョウイだけがそんなカナタに声をかけた。
「でもカナタ、(汗)」
「は?」
嫌そうな声を出している。
「別の学年だからさ、同じ授業は受けられないだろう?;…あ〜、どうする気だい;」
遠回しに、盗撮だけはしてくれるな、と言う事を言いたいらしい。
「ふっ…」
いやに自信を持った笑いだ…。
「―――その事なら心配無用ッ!次の時間の体育が合同授業になるように、わざわざ大学部まで行って、生徒会長に土下座して頼んで来たからっ!!」
「うわあ;」
そこまでするか…と言いたくなる。…まあ、誰も言えないが、
「水泳なのよ〜っ!」
「プールだ〜!!」
てーん!と紺のスクール水着姿なナナミ。もしも映像ならば、かなりのサービスカットになるだろうが残念ながら、文では仕方ない。
「ナナミッ!!準備体操にシャワーと消毒!!カナタ、うわあ!?;その格好!?」
「………(殺気)」
背中にフロート、腕にビート版、ついでにうき輪。
…どうひいき目に見ても、泳げないらしい。
「偉いわよっ!カナタ!!アレだけお姉ちゃんが特訓したり、説得したりしても、今までプールの授業サボって見学してだけだったのに、カイルさんの為に泳ごうとするなんて!!」
「当然!カイルさんの艶姿を一目見るまでは溺れても溺れ切れません!!」
どうでもいいが、過去における『ナナミの特訓』というのが、更にカナタの泳げなくなった原因である。…とジョウイは知ってはいたが、口には出さなかった。
「さあ!!カイルさんはどこですか―――――ッ!!」
チャイムが鳴り響く中、カナタはバッ!と辺りを見回す。
何故か楽しげに笑っている少年(テッド)の隣、カイルは座っていた…。
そう、―――――――体操服で、
「なんでですかーーーーーーーーーッ!!(血涙絶叫)」
「あっはっはーーーっ!!(笑)」←言うと思った〜!風の笑い。
「ちょっと風邪引きかけてて…;」
「わーーんっ!!(泣)大丈夫ですかーーーーッ!?」
カナタ少年の楽しみは、別の日に延期されたと言う…。