木の実
幻水学園(仮) 、秋の行楽行事、ブドウなしその他木の実狩り。
意外にイベントの多いこの学校、今日は高等部一同で、山へと訪れていた。
せそして、やはり、自由行動可ともなると、この少年がじっとしている訳もなく…
「小道の木の実見つけて〜♪」
某有名アニメの歌詞を口ずさみつつ、カイルと一緒に楽しく山道を歩いていた。
背中には、カゴを背負い、手には軍手とカニ鋏、頭に麦わら帽子、と完全なる装備ぶりな少年だったりする。対するカイルはと言うと、カゴを手に一つもっているだけだ。(ちなみに、両名とも、学校指定のジャージ姿である。)
「いい天気ですねvカイルさん♪」
「そうだね、晴れたし…遠足にはちょうどいいよね、」
るんるん♪と和やかに山道を歩く2人だったが、このほのぼのとした世界を形成するにあたってカナタの使った労力は果 てしない物だったりした。まず、義姉ナナミからの脱出、カイルの親友、テッドの説得、協調性を強いる担任の撃退、その他諸々の障害を踏み抜きぶちこわし、カナタは幸せを手に入れたのだ…。
「何事も、犠牲なしには手に入らない物ですよね…」
「何?」
「いえ、こっちの話ですvでも山の天気は変わりやすいそうですから、油断ありませんよね〜!」
「?うん、」
話をはぐらかしたカナタに、カイルは首を傾げるばかりである。
「お〜!きのこも発見ですー♪ベニテングダケ(毒)でもないですかね〜♪」
「カナタ、なしどれがいい?」
「あっvそのもう少し右上にある大っきいのがいいですっ!!」
意外にこういうイベントが好きなカイルは、わくわくと楽しそうな顔で、カナタを振り返っている。とても嬉しそうな顔をしている為、「可愛いです〜v」と、カナタのラブレベルもMAX値に突入していたりしたのだが…
「(可愛過ぎです!!)カイルさんーーーーっ!!(天気もいいですし、嬉し恥ずかしの青姦タイムですーーーっ!!)」
「?」
ほとんどタックルをする勢いで抱き着いたカナタのその上から、熱を一気に冷やすような雨が降り注いで来た。
ザーーーーー!!
「…」
「あっ雨宿りしないと…」
なしを抱えてカイルは慌てるが、少年は何かに運命を阻まれている気がしてならなかった…。
「結構降って来たね…」
「そうですね…(ていうか、お決まり通り洞窟があって助かりました。)」
「集合時間過ぎちゃいそうだけど…」
「大丈夫ですよっ!いなかったら迎えに来てくれますから!!」
こういう団体行動を乱すヤツがいつも全体に迷惑をかけると言う…
「それより、カイルさん…」
「?」
「濡れちゃいましたから!服を脱いで暖めあうっていうのはっ…!」
どきどきどきどき!と期待に満ち満ちた瞳で少年はそうカイルに提案する。…ちなみに、まだ2人は清いおつき合いの段階だ。
「あ、うん…」
「!!!!!」
こくりとカイルが頷いた瞬間、カナタはガッツポーズを決めたがしかし。
「上しか濡れてなくて良かったね、」
「あう。;」
上着の下は半袖のシャツである。
「…そうですね〜っ(泣)」
「?」
悔し涙を流しつつも、カナタはせめてもの慰めに、ぴっとりとカイルにくっついた。…セクハラだ。しかし、そんな事とは知らないカイルは、寒いのかな?と思い、子供らしい行動を微笑ましそうにしている。
…
しかし、たき火の前でくっついていると、やはり暖かくなり、そして眠くなってしまう。
「…カナタ、」
うとうと…
「…なんですか〜?」
うとうと…
「場所…みんな、わかるかな…?」
うとうと…
「大丈夫です〜…ここまでの道々にどんぐりまいて来ましたから、」
うとうと…
「そっか…」
「はいっ…」
「おーい、カナタそれにカイルここか?無事か――――――…わーーーーーーーっっ!!!!;」
…そして、薄着で2人がくっついている光景を見て、一同が「不純同性交遊かーーー!?」と絶叫するのは、その15分後の事だった…。
完