一度はやってみたかったネタシリーズ - 子供編7-

 

 

―――子供は怯えていた。

 

「………」

可愛らしいとしか言い様のない顔は、今はきゅっと厳めしく顰められていて、緊張した風情だった…。

「ムム〜?」

腕の中のムクムクは、その緊張に気付いたのか心配げな声を上げたが、子供はその温もりをそっと離した。

「ばいばい」

バイバイと小さな手を振られると、ムクムクは振り返りながらも、何やら用事があるらしく、中庭へと飛び立って行く…。

 

―――それを見送ると、子供は背後から人が集まってくる気配に、身を硬くした。そして…

 

 

 

 

 

「カイル様そっくりな子供が屋上にいるらしいぞ!?」

「出産!?」

「いや!カナタ様がまた子供化薬でトランの英雄様を小さくしたんじゃないのか!?」

 

まだ、『ハル』というカナタ似の子供を目撃していない兵士らが、ざわつきながら屋上へと集まる中…それを蹴散らして少年が駆けて来ていた。

「うりゃーーーー!!(怒)退いて下さいよーーーッ!!僕とカイルさんの愛の結晶ーーーッッ!!どこですかーーーッ!?」

「る〜!どこーっ!!」

どっかーん。…と、その様子はまさに戦車(?)のごとくであった…。(又は除雪車(?)かもしれない…。)

人を蹴散らし、無理矢理道を作る2人は、誰にも止める事の出来ない勢いであった。

そして、運良くその魔の手にかからなかった者らも、その光景を見てしまった為に、「アレ?;今何かカナタ様がダブって見えたような?;」と首を傾げ医務室へ向かったりするのだ。

どちらにしても、人に迷惑をかけなければ気が済まないのか…

「僕の前に道はない!僕の後に道が出来るんですーーーーッッッ!!」

「おとーさんすごーい!」

ちょっと文学的だが、使い方を間違っている。

「カナタ!;ハルも…!(周りの人が)危ないから走らないで!;」

後ろから追い掛けていたカイルは、必死にそう叫んで制止するが、それでもパワーが×2になったカナタらは止まろうとしなかった。

「だって!危ないじゃないですかーッ!屋上なんてッ! それに一人でいて変な人に連れて行かれでもしたら…!(むしろ僕が連れて行きたいですしッ!>泣)」

「………(じゃあせめて、周りを見て走って欲しい…>汗)」

ギャー!と頭を抱えて叫ぶカナタだったが、この城内にカイルと同じ顔をした者に手を出そうとする命知らずはいない…。

しかし、そんな時だ。今まで楽しそうに笑っていた子供が、真剣な表情でぽつりと呟いたのは…

 

「る〜…、よく変な人に目つけられる…」

 

カナタの暴走リミッターは、見事に外れた。

「今お父さんが助けてあげますよーーーーーーーーっッッッ!!!(怒)僕とカイルさんの愛の結晶〜〜〜〜ッッ!!」

スピードに付いて行けなくなった子供を小脇に抱え、少年は物凄い速度で走った…。そう、逃げ遅れた兵士を踏み潰す勢いで、

「カナタッ!!;」

「ごめんなさいですーーッ!先行きますーーー!!」

「おとーさんカッコイー!」

さすがに見捨てて行けなかったのか、カイルは潰された兵士(おくすりで治療)の前で足留めをされた。

 

 

 

そして、屋上へ駆け込んだカナタは―――――…

「ここですかーーーーーーッッ!?」

 

ゴーーーーーーッ。

 

…一瞬にして燃やされた。(さすがに灰になって燃え尽きる事はなかったが…)

「…あぢーーーーーーーーーーッッ!!!!!;」

「カナタすごーい。」

丸っきり無傷な子供は、先程から同じように賞賛の言葉をカナタに送っていたが、これは嫌味である。

…何故なら、火だるまになっている少年に笑いながら拍手を送っているからである…。(間違いなく同じ遺伝子)

 

 

続く

久々更新…