にゃんこ劇場番外編!?〜にゃんこでテド4☆〜

 

 

「カイカ!逃げてっ」

「…」

 

必死の形相で言われ、カイカは理由が何も分からないながらも、こくりと一つ頷き、身を翻した。薄い茶をした耳としっぽがピロリと揺れた。

言った相手は、姉のようにカイカにいつも接してくれていた、フレアにゃんこ。

飼いにゃんこである彼女は、野良にゃんこカイカに、とても良くしてくれていた。

だから、今もカイカの身が危ないという事で、彼女が庇ってくれているというのがわかる。

カイカには何が危険なのかわからないが、それだけはわかった。

そして、もう一つ。カイカがこの場にいない方が、彼女が安全だという事も…

「…」

カイカは走った。

 

 

 

 

 

 

カイルの親友にゃんこテッドには、放浪癖があった。

マクドール家で半分住み込みながらも、半分は野良という状況はその為だ。

…この時も、テッドはちょうどちょっとした旅に出ている所だった。

(そろそろアイツの所に戻るかなぁ…)

何だか、最近厄介な相手に懐かれているらしい親友の姿を思い返しながらテッドは思った。…誰がどうみても、面 白がっているような表情を浮かべながら。

「久々にグレミオさんのシチューも食べたいし…って、おわあッ!!?;」

ドスン!…と、突然にぶつかられ、テッドはバランスを崩してその場に倒れ込んだ。

「…」

そして、自分の上にぶつかってきた相手が乗っているのが、その重みでわかる。

「オイ!あんた一体ッ…!」

「…」

 

―――身を起こし、目の前にあったのは、海の色をした綺麗な青の瞳…。

 

 

「いたか!?」

「そっちだ!」

 

 

…この時、テッドは自分が親友よりも面倒で厄介な相手を抱え込む羽目になろうとは、思ってもいなかった………。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁるーの〜おがわーはーさーらーさーらー♪い、く、よぉ〜♪」

「………(歌詞あってるかなぁ?;)」

も一つ聞き取りにくいズれたテンポで歌っているのは、茶トラの耳としっぽのこにゃんこカナタ。そして、その隣に座っているのが、真っ黒でサラサラの毛並みの耳としっぽを持つ、マクドール家のぼっちゃんにゃんこカイルだ。

2匹は今日も仲良く、外で遊んでいる所で、今は桜の木の下で休憩中だったりする。

そう、こにゃんこカナタが歌うように、今は春もたけなわというとても気持ちの良い季節だった。

ついでに…

 

(今日こそセカンドチャーンス☆をGETします…!)

 

にゃんこらの一代イベント…恋愛のシーズンでもあった。

そして、こにゃんこというか、何というか…その可愛らしく見せ掛けた外見とは裏腹の内面 を持つカナタは、ギラギラと「ナーウゲッターチャーンス☆」と燃えていた。幾ら無害そうな歌を歌いながらも、その内面 は野獣だ。

「カイルさん!」

「え?」

何故か突然妙に真剣な面持ちを向けてきたカナタ。

…このような顔を見せる時は、ろくでもない事が起こると知っている黒にゃんこは少し困った。

それでも首を傾げながら、こにゃんこの言葉を聞こうとするが―――

「そろそろ二度目の気分に―――…!」

 

「カイルーーーーーッッ!!;」

 

…こにゃんこの言葉は、途中で打ち消されてしまった。(多分それで良かっただろう。)

「あ、テッド。久しぶ…」

ひさしぶりに顔を見せた親友に、カイルは嬉しそうな顔をしたが…必死な形相をした相手は、それどころではない様子だった。

テッドにゃんこは、一気に傍まで駆け寄ると一息で叫んだ。

「一生のお願いだッ!!―――コイツ、預かってくれっ。」

「え?」

コイツって…と、カイルにゃんこがよくよく見てみれば…確かに、テッドは何かを引きずっていた。

カイルが何だろうと認識するよりも早く、目前に突き出されたのは…青い瞳をした一匹のにゃんこだった。

無表情ながらも、とても整った顔だちをした彼は、この辺りのにゃんこではないように思えた。

「…こんにちは?;」

「こんにちは」

ペコリと挨拶をする。

「頼むよ、親友! …じゃあな!;」

「え、ちょ、テッド…頼むって…??」

理由は…(それに人にゃんこ を物みたいに…)と、呼び止めようとした手が…テッドにゃんこの姿が見えなくなった時に…力なく降ろされた。

テッドは頼むだけ頼むと、しっぽを逆立て明らかな怒気を撒き散らせながら行ってしまった…。

「………(汗)」

「…」

「わーんっ!!(泣)僕無視されっぱなしですよーーッ!!しかも邪魔されましたー!!(涙)」

呆然とした黒にゃんこに、こにゃんこが構ってタックルをかます。そこで、ようやくカイルは我に返る事が出来た。

(一体なんだったんだろう…?;)

「べそべそっ…(泣)せっかくの二人きりの時間〜っチャンス〜っ春の日の情事〜っ(涙)」

「…カナタ;いいから、ちょっと離れて…;」

何やら不穏な事を言っているこにゃんこを、カイルは引き剥がした。

…とにかく、テッドがあんなに慌てていたのだから、異常事態が起こった事は分かる。

それはわかる。…わかるが、それが何なのか、そして預けられたこのにゃんこが誰なのか、さっぱりわからない。

「…」

「………(汗)」

無表情ながら、どこか子供っぽい仕種で首を傾げる相手に、カイルも困惑してしまう。

「で!(僕とカイルさんの二人っきりタイムを邪魔してくれた)貴方は一体どこのどなたなんですかーっ!僕はカナタです!!」

…が、一気にその状況をこにゃんこが打破した。

「あ、カイルです…;」

「…カイカ」

素っ気無いともとれる言葉を相手は返したが、別段無愛想な訳ではなく、どこか幼い口調のように聞こえた。薄茶のしっぽも、言葉の代わりにゆらゆらと揺れている。

とりあえず、これで名前はわかった。後は、預けられた理由だ。

「…カイカさんは、どうしてここへ?」

「?」

カイカは分からないのか、まばたきをするだけだった。

「カイルさんーーーッその人ばっかに構っちゃ嫌ですーーー!!」

「カナタッ!;しがみつかないで…どこ触って…ッ!?;」

「うーーッ!(威嚇) ―――カイカさん!」

「?」

「今までテッドさんと何してたんですか!」

どうやらこにゃんこは、問題ごとをさっさと片付けてしまおうと企んだらしい。自ら質問役を交代した。

「、てっど。」

「です!」

それがよかったのか、カイカにゃんこは反応を返した。

そして、考え込んだような表情をすると。(でも無表情)

 

「…追いかけっこ。」

 

「「 ? (汗)」」

何がなんだかわからなかった。

「な、なんでですか…?;(どういうシチェーションですか!?)」

「人がいっぱい追い掛けてくるから、逃げろって言われて…その途中でてっどと会った」

「…カイカさん、追われてるんですか?;」

「一体誰に…?」

「知らない人」

「知らない人って…;」

無表情ながら、ぺしゃっと耳が下がってしょげているように見える。

しかしカイルも、どうしていいのかわからない。原因が分からないのだから、どう対処する訳もいかないのだ…。(事情を知っていそうなテッドも消えているので、)

「猫狩りとかそういうのですかね!」

「どうかな…?;」

「それか変質者…――――って、あ!カイルさん、この人…!」

 

―――――『その手』の事に関しては、こにゃんこの方が勘が良かった。

そう、にゃんこだというのにも関わらず、カナタはわんこのようにカイカを匂い、ヒクヒクと鼻を鳴らした。

「いい匂いって言いますか…フェロモンが出てます!」

「え?」

「ズバリ!――――『発情期』です!」

もうそうんな時期だったの?…と、カイルは首を傾げる。

張本人であるカイカは、わかっていないのか同じく首を傾げるばかりである。

カイルは元より、カイルしか目に入らないこにゃんこにも、特に何を感じる訳ではないが…この青い瞳のカイカにゃんこはというと、見た目もとても綺麗なにゃんこであるし、その上発情期だと言うならば、全身から食べて下さいオーラが出ているようなものである。…一番食べ甲斐があるまでに育った身体と、その裏腹の幼さがアンバランスな魅力さえも醸し出している…。

 

―――この時期狙われるのも、無理はない話だ。(本人無自覚だし。)

 

「じゃあテッドは…」

「お出かけの途中で出会ったカイカさんに愛想が尽きてここに置いて行ったか!はたまた追い掛けられるのがムカついたから、単身追っ手と対決に向かったかですね! カイカさんを安全な場所(僕らの所)に残して。」

「……………」

前者だと嫌なので、おそらく真相に近いのは、後者の方だろう。

…しかし、結局置いて行った本人(テッド)が戻ってこない事には、真実は明かされない。

「………とりあえず、(汗)」

「?」

「家にでも戻ろう?;」

「ですね!外は危ないですし!(これ以上邪魔物が来ても嫌ですし!!>重大) カイルさんちに移動しましょうっ!」

「うん。;」

それに、発情期は危険がいっぱいだ。

カイルも、その強さがご近所に知れ渡るまでは、何かと大変な騒動になっていたのだ。…まあ、その警戒をかいくぐったこにゃんこに、黒にゃんこは美味しくいただかれてしまったのだが…。

「不服不満もっさりですケド、行きましょー!」

「それでいいですか?;」

「…(こっくり)」

尋ねるカイルに、新顔にゃんこは頷く。

 

――――が、その時!

 

「…!」

「ムッ…!敵襲ですね!!」

怪しい気配を2匹は感じ取った。

「?」

「いや、カイカさんが当人なんですから、ちょっとは警戒して下さいよー!;――――ハッ!でも、相手は発情したチンピラにゃんこ…!無防備で可愛いカイルさんまでもその毒牙にかけんと―――!!」

 

〜イメージ想像。〜

 

『へっへっへ、追い詰めたぜこねこちゃんー(死語)』

『そっちの可愛こちゃん(死語)ともども可愛がってやるぜー』

 

あくまで、こにゃんこの想像である。…まあ、大体同じような言葉を相手は口にするだろうが。

 

ドスッドカッガリッ!!

「許せませーーーんッッ!!カイルさんは僕のですーーーッッ!!(怒)」

すでに黒にゃんこが、テキパキと名前も台詞すらも出なかった、カイカを追い掛けてきたにゃんこをのしているのにも気付かず、こにゃんこは叫んだ。ついでに、フシャー!と威嚇もする。

 

 

「―――ふぅ…;」

あっという間に、無惨にも相手を仕留めた黒にゃんこカイルは、小さく息を吐いた。

もう問答無用と言うか、何と言うかの反射行動で、下世話なにゃんこらを叩きのめしたのだ。

…普段、こにゃんこカナタの暴挙と暴走で気付かれにくいが、カイルも大概普通とは言えないような行動を取る。

「僕のカイルさんに手を出そうとした酬いです!!(←想像の中で)
 ―――あ、カイルさーん、そっちの人達も川に重しつけて流していいですかー?沈めますー。カイカさんは、そこの人達引っ張って来て下さいね!」

「?」

「沈めるのはダメだから!!;カイカさんも手伝わないっ!;」

ずるずると素直に引きずっているカイカも止める黒にゃんこ…。

―――やはり、周囲が異常すぎるのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

取りあえず、外に居るとまた面倒な事になるので、家に戻る事になった一同。

家で遊ぶ事暫く。

日も落ちかけ、夕食もすんだ頃に、ようやくテッドにゃんこが戻って来た…。

 

「本っ当…、ありがとな、カイル」

「それはいいけど…;」

そう、戻って来たのはいいが…、テッドは何か戦って来た後のように、擦り傷を作って来ていた。

まあ表情は晴れ晴れとしているので、勝ったのは分かるが…。

「どこ行ってたの?;」

「言ってなかったか?」

「うん。;(全然…;)」

2匹の視線は、自然と

 

「カイルさんに構われるなんてうらやましい目をみせるくらいならッ僕が力の限り構いまくってあげますーッッ!!(怒)」

「…」

 

…などと、ボール遊びとは思えない勢いで、熾烈な攻防を続けるこにゃんことカイカの方に注がれた。

「―――ここに戻る途中でアイツとあってさ…目つきのヤバイ連中に追われて他のを助けたんだ。…そしたらッ」

「うん、」

「―――――次から次に湧いてくるわ、カイカの奴は何度も懲りずに…しかもッ抵抗もしないで物陰に引きずり込まれるわで…ッ…いい加減頭に来たから、アイツを狙ってる奴ら全部倒して来た。」

「うん…;(今度からちゃんと説明してから行って欲しい…;)」

そして、拾い零しが、3匹の所に辿り着いてしまったらしい。

「それじゃあ、もう決着はついたんだ…?」

「まあな…」

(具体的にどうしたとは聞かないが。)…何故かテッドは疲れたため息を吐いた。

「―――おい、カイカ。」

「?」

テッドの声に振り向いたカイカの後頭部に、スパーン!と、ボールが当たった。(こにゃんこが「受けるか避けるかして下さいよーッ!!;」と叫んでいる。)

「…フレアって人から『春の時期がすむまで隠れてなさい』だってさ、」

「…(こっくり)」

こっくりつ頷くカイカ。

「じゃあカイカさん…、しばらくここに泊まりますか…?」

「? (訳:いいの?)」

「―――ッ意義ありです!! 僕もお泊りしますーー!!」

こにゃんこも負けじと叫んだ。

カイルの親友であるテッドにゃんこや、新顔ながらもあれこれ世話を焼かれるカイカにゃんこに、カイルを取られたようで面 白くないのだ。

「カナタ…いいけど、ナナミちゃんは?こんな時に1人じゃ危なくない…?」

「今ジルさんの所に遊びに行ってるから大丈夫です!!(むしろカイルさんとイチャラブタイムって言って出て来たから、応援してお泊りに行ってくれました!)」

「じゃあ…」

「やったですーv 僕カイルさんと一緒の寝場所ですよ! 4人だと多いですから2人っきりですよッ!?」

「テッドの寝床は元々別だから…」

「じゃあ僕とカイルさんー! カイカさんはテッドさんと一緒の場所で寝て下さいー!」

「おい、ちょ…」

カナタはまだ寝るには早い時間にも拘らず、しっぽをフリフリカイルを引きずり寝床へと走り切った

テッドにゃんこの制止の声もまるで聞こえていない。…いや、敢えて無視したのかもしれないが。

「…マジかよ;」

「?」

そう呟きながらも、カイカにぺとりとくっつかれ、テッドにゃんこは苦虫を噛み潰したような顔をした。

「カイカ…」

「?」

「…あんまりくっつくなよ」

「? (訳:何でどうして?)」

 

…テッドは、にゃんこながらに、羊を頭から口の中に突っ込まれた狼の気持ちが分かった…。

 

 

「♪〜♪〜(カイルさんはあの説明で疑問持たなかったですけど、あんな厄介ごとに首を突っ込んだ理由は、やっぱ惚れた腫れたですよね〜☆)」

邪魔がなくなり、こにゃんこは目に見えてご機嫌な様子だ。

「カイルさん♪」

「何?」

「そろそろ2回目どうでしょうっv!」

「何が??」

「だから…」

ぼそぼそぼそぼそ。

「っ!(///)」

 

ガリィッ!

 

…そんな引っ掻き音が響いた…。

まあ、猫生じんせいはそんなに甘い物ではない。(特に、ちゃんと雰囲気を読めないようなにゃんこには。)

こにゃんこカナタ…二度目の春は、黒にゃんこカイルが照れ屋な限り遠いだろう。

 

 

 

 

 

 

おまけ。

 

「…」

昨日の様子から変わらないかのように見えるカイカにゃんこ。

元気は元気なのだが、…何とな〜く、テッドにゃんことの距離が心持ち近くなっていたりした…。

「……………」←何か言いた気なカナタの視線。

「………」←目を逸らすテッド。

「?」

「ご飯出来たよって、…カナタ?」

「…何でもないですー。 …ええ、僕はですけどねぇ?」

 

まあ、何はともあれ。そこはかとなく平和な春のマクドール家…。

 

 

終わる。

 

 

「にゃんこ劇場にテッドにゃんことカイカにゃんこ登場でドタバタ」

わ〜v望月さんー☆リクありがとうございましたーvv

…で、こんな感じになりました。

が、がんばりましたー!;ガッツでした!力の限りでした!

テド4混ざりデス♪(吐血笑)