天魁星3人日常劇(仮)9

 

 

この城には今現在、3人の天魁星がいる。

 

一人、現在の天魁星カナタ。

一人、3年前の天魁星、トランの英雄カイル。

一人、約150年前の天魁星、カイカ。

 

バランスが崩れたような、新たな均衡をとったような、それなりに上手く行っているような…

そんな彼らの日常。

今日も今日とて何かが起こる…。

 

 

 

ある日の事。

カナタは疑問を抱いた。

 

「カイカさん、食べ物で好きな物って何ですか?」

「まんじゅう。」

…会話は終わってしまった。

しかも、何を分かりきった事を…というような質問になってしまっている。

問い掛けた少年は、頭を抱えて少し考える仕草をすると、それからもう一度カイカに尋ねた。

「まんじゅう以外で好きな食べ物って何ですか?」

「?」

ビシッ!と指を自分の顔の前に出してのポーズに、カイカは首を傾げるだけで答える。

「好きな物ですよ、好きな物。」

「??」

「甘い物と辛い物どっちが好きですか!?」

「両方」

「ん〜;じゃあ嫌いな食べ物!」

「ない」

言葉だけ取れば、あっさりした感じだろうが、(無表情にだが)よく分からないと言ったオーラが出ているので、どこかたどたどしい口調に聞こえてしまう。

「まんじゅう以外で好きな物とか嫌いな食べ物ないんですかーーーーーー!!?」

 

どうでもいい事にムキになる…

それもまあよくある話である。

 

 

 

「…カナタ?(汗)」

「なんですか〜?」

「…何、してるの?;」

「何って朝食の準備ですよ☆!」

「それは…わかる、けど;」

今、カイルの目の前には、割烹着を着て茶わんにご飯をよそっているカナタがいる。そして、部屋の真ん中には、ちゃぶ台があり、その上におかずが並んでいる。

色々と問題はあるだろうあ、まあ朝食の場としては問題無い気もする。

しかし、その『おかず』に問題があるのだ。

「それ…(汗)」

納豆ととろろともずくとオクラと海苔(ペースト状)です!」

…何か、ネバッとしてどろっとした物ばかりだ。

別に食べられない訳ではないが、ここまで勢ぞろいされると、カイルでなくても、ウッ!;となる。

「…何かあったの?;」

「いえ!ただカイカさんの食の嗜好を知りたいと思っただけです!」

「?;」

嫌がらせのようにしか見えない。

いつの間に起きて来たのか、カイルの右側には、座布団に座ったカイカがいる。

それに素早く少年は山盛りになったご飯を差し出した。カイルの分はもう入っていたので、カイルは箸を取る…そう、二人の姿を見ながらこう思ったのだ。

(…もう放っておこう;)

と、

 

「う〜ん;好き嫌いはないんですよねー;」

「…」

もぐもぐと納豆で粘っこくなったご飯を、ただカイカは食べていた。

 

…納豆やらとろろやらもずくを食べている天魁星…

信望者には決して見せられない光景かもしれない。

 

納豆でご飯を食べ終わったカイカの茶わんに、カナタはタイミングよくしゃもじで追加のご飯を投げた。…まるで椀子そばのようだ…。

「カラシ入れたのと卵入れたの、どっちが好きですか?」

「?」

「………(汗)」

とろろかけご飯を食べるカイルには、二人が何をやっているのか分からない…。しかし、何か実験のように見えて仕方がない。(正解)

「はい、次もずくです!」

「…(もぐもぐ)」

「(もずく…ご飯に入れる物じゃないんじゃ…;)」

「とろろも〜♪」

「…(もぐもぐ)」

「(そろそろ止めた方がいい、かな…?;)」

「おくら行きましょう!」

「…(もぐもぐ)」

「カナタ…」

「最後に海苔ですーーー!!」←聞こえてない

「…!!」

 

カラン…!と、カイカの手から箸が落ちた。

 

「カイカさん?;」

「海苔!?海苔嫌いですか!?この甘辛い感じのが嫌いですか!?」

「〜〜〜〜…」

何かを訴えるような目で、カイカはカイルを見る…そして、そのままぱったりとその場に倒れた。

「そっ…そんなに嫌いだったんですか!?;」

「…カナタ、」

「はい??;」

医者をーーー!!;と慌てるカナタに、カイルは一言、

 

「食べさせ過ぎ…;」

 

「…………あれ?;」

 

 

 

まんじゅうなら幾らでも入るカイカだが…

そんなに胃が大きい訳ではない事が発覚した。

 

 

「うーん…!;ちょっとでも謎がわかってよかったというかなんて言いますか!」

「カナタッ!(怒)」

いいから胃薬持って来て!;と怒るカイルは、これからの事を考えて、ちょっと疲れるのであった…。

 

 

続く