嬢様ネタ〜所謂女体話〜
<その1>
だだだだだだだ!と、元気よく駆け込んでくる足音に、クレオはカナタ君が来たんだな…と気付き、微笑ましい気分で微笑んだ。
「お邪魔しますー!カイルさん居ますかー♪!?」
「坊ちゃんなら、お部屋にいますよ」
「わーい♪」
そして、その予想は当たり、走りこんできた少年はその勢いのままこの屋敷の主人の元へと走って行く。
…しかし、そこでふとクレオは思った。
今の時間帯は…
「カナタ君!ちょっと待って…!;今坊ちゃんは着替えの最中で―――」
「ええええええーv!?」
…逆に、少年の速度に加速がかかった。
「………?」
もそもそと服を脱ぎ、白い肌を露にしていたこの屋敷の主は、下から駆け上がってくる音に首を傾げる。
一体何が起こっているのだろうか?と思う事で、着替えをしていた手はとまり、そこには未だ巻かれていないままの『サラシ』があった。
「カイルさんー!一緒に戦って下さい〜〜〜っ♪♪」
「ッ!?;」
…ノックもなく、バターン!と開け放たれ先にはカナタの姿…。
――――そして、カナタの先には少年の予想していた白く華奢な裸体(半裸)があった。
…しかし。少年の予想もしていないものもあった。
露になった上半身には、小さくとも微かな白い膨らみがあったのだ。
男性のものではない、確かに女性の胸で…
硬直した2人は、ほぼ同時に我に返った。
「き、きゃ――――――――っっ!!;(///)」
「ふわーーーーーーーーーーッッ!?!?」
真っ赤になったカイルが、身体を服で隠した直後、バッターン!と大きな音が響いた。
「………?;」
恐る恐る目を開いて横目で少年を見てみれば、…カナタが頭から湯気を噴いて倒れているのが見えた。
「うーぷーぱー@X#$%&…(蒸気)」
「カナタッ!?大丈夫!?;しっかりして…!;」
「坊ちゃ…嬢様!!?;」
性別がバレた事や、裸を見られた事も忘れ、あわあわとカイルはカナタの心配をした。
<その2>
現在。マクドール邸では、頭の痛い事態が勃発していた。
「………」
「………」
「………」
「大丈夫?カナタ…;」
「ふ、ふぁい…。」
緊迫した面持ちで席に着く保護者らとは裏腹に、未だに湯気を噴いているカナタを正気に返らせようとカイルが必死になっているというようなほのぼのとした光景が繰り広げられていた。
そんな2人の様子に、ふっと場の空気が和む。
「――――カナタ君…ご覧の通り『坊ちゃん』…いえ、嬢様は実は女の方です…」
「―――はっ!(正気に返った) はい!それはさっき見ましたから!!」
「それは忘れて!(///)」
バシッ!とカイルからビンタを食らう。
「くうっ…!本来ならば、この事実は永遠に秘匿されるものだったんです…っ!」
それがこんな事になってしまうなんて…と、マクドール家の秘事があっさりと外部に漏れてしまった事に、グレミオは落ち込み、一同は頭を悩ませているのだ。
「…死んでいただくしか…」
「それは…」
ぼそりと呟いた(半ばホンキの)言葉に、カイルが眉を顰め、悲しそうな表情をして保護者3人を見つめる。
「嬢様、私達もまさかそこまでしようとは思っていません(赤の他人ならともかく、カナタ君ですし)、…ですが嬢様の肌まで見られたとあっては、他の方法は一つ…」
一拍置いて、
「―――――婚約していただくしかありません。」
………。
「…僕はいいんだけど…;カナタが困るんじゃ…――――カナタ?」
「……………………………ぷぎゅ〜」
カイルが振り向いた先には、再び頭から湯気を噴いたカナタが、今度こそ失神していた。
…無論、たなぼた的な喜びでだ。
<その3>
少年、カナタは至福の中にいた。
婚約。
カイルさんと結婚!
夢にまで見たカイルとラブラブっ!!
夢だろうか?夢じゃない!
確かに、カナタはカイルの性別が今までの認識から逆になってしまった事には驚いたが、それはそれでOKだ。
性別がどっちだろうが、少年の愛は変わらない。
むしろ留まる所を知らず燃え上がっていた。
この世の春!今なら何人足りとも少年の敵にはならないと思われたが―――
「グレミオは…グレミオは反対ですッ!」
「Σガーン!!?;」
いきなり邪魔が入った。
半泣きで反対するグレミオは、カナタを締め上げる代わりに隣に座るパーンをガックンガックンと締め上げ揺さ振っていた。
「大事にお育てして来た嬢様が結婚っ…そんなまだ早過ぎます!!」
「グレッ…落ち着$#&…!!;」
「グレミオ、落ち着いて…;」
「そうだよ、落ち着きな。何も本当に結婚するとは言ってないだろ?」
え?
―――そして地獄に落とされた。
<その4>
「なっ…」
「『な』?」
金魚のように口をパクパクさせていた少年が、不意に声を取り戻したと思ったら一音しか発しなかった為、カイルは首を傾げた。
「なんでですかーーーーー!!!?」
ふぎゃー!と少年は半泣きで雄たけびを上げた。
「え?何でって??」
「嬢様、カナタ君は何故結婚が出来ないのかということを尋ねられているのですよ;」
ぼそっとクレオが小声で素早く(鈍い)主に向かって、少年が自分の言葉にショックを受けたのだという補足を入れる。
「ああ。 あの、僕は対外的には男という事になってるから、結婚は…」
「ヤですーーーー!!嫌ですーーーーッッ!! 婚約までしたなら結婚も出来ますーーー!!」
それはそれ。
これはこれ。
家の面子を保つだけの手段である。
しかし、カナタもそれは理解していても、納得はしたくないというゴネっぷりだ。
「でも、ほら、カナタも急に婚約なんてことも嫌でし…」
「いいんです!!―――だって僕はカイルさんが男だろうが女だろうがどっちでも良い位好きなんですから!!」
おお!告白した! と、保護者の面々は少年の思い切りの良さに感心し、(少年を気に入っていることもあって)止めに入ることはしなかった。…が。
「? ―――ありがとう、」
―――――伝わらなかったー!(一同心の叫び)
カイルはとても鈍かった。
補足:カイル(女)さんは、通常比に比べニブさ2割増、タフさ3割増、乙女度アップ。
番外。
<〜お着替え編〜>
「カイルさんカイルさんvv 女物の衣装着てみませんか?」
「え、でも…誰かに見られたら…」
「大丈夫です!折角ですし一度くらい女の子の服着たって良いと思いますよ!むしろ僕が見たいんです!!コレ着て下さい〜〜〜vvv」
「う、ん…それじゃあ(でも何でカナタが女の子の服持ってるんだろ…?)」
お着替え。
「どう、…かな?」
「〜〜〜〜〜〜〜っっっvvvvv」
ふわりと裾の広がったピンクに誓い赤のスカートを着たカイルは、とても愛らしい様子だった。着慣れていない様子がありありと表情に表れ、初々しい恥じらいで頬を染めたそんな姿…―――それはもう、カナタが鼻血を噴いて倒れるほどに。
「カナタ!?; しっかりして…!!」
「どうした!?」
「何があった!」
「あ。」
………。
部屋に飛び込んできたビクトールとフリックに、カイルは硬直し、何をどう言いつくろえば良いのか…と、口をパクパクさせたが…
「女装です。」
―――――そう(復活した)カナタがいい笑顔で言い切った為、全く怪しまれなかった…。
……………………カイルはそれから暫く、複雑な心境だったという…。
<〜戦闘編〜>
(――――あ。)
戦闘中、目の前のモンスターを倒した瞬間、カイルは心の中で困った声を上げた。
動き方が悪かったのか、結び方が甘かったのか……パラリと服の中でサラシが解けたのだ。
(ちょっと困ったかも…;)
目立つような胸でも服でもない為、性別がバレるような事はないだろうけれども、恥ずかしい上に何となく動きにくい。
「カイルさーん!横ですーー!」
「え?」
どっかーん!とミサイルのように突っ込んで来た少年が、飛び込み様カイルの横から迫っていた敵を屠った。
―――が、体勢悪く、カイル諸とも地面に倒れ込んだ。もにゅっと。
―――――もにゅ?
「……………」
「……………」
互いに妙な感触を感じた二人は、固まった。
そう…胸に顔を埋め埋められたまま、固まった。
そのまま二人は心と心で会話を交わす………。
(カイルさん…これは…伝説の……)
(…サラシが解けて;///)
「もぎゃーーーーーー!!!!!(///)」
「カナタ!!;大丈夫っ気にしてないから落ち着いてっ!!;(///)」