「いいですかー!外には何百人も敵がいると思って行動するんですよー!?」

「はーい」

「はい」

「寧ろ親兄弟肉親以外は敵と思うがいいです!!」

「はーい」

「はい」

「声をかけられたら逃げるかなぎ倒すかするということで!!」

「はーい」

「はい」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜やっぱダメですーーー!!!!! 2人きりで買い物なんて絶対ダメですーーーー!!(泣)」

「カナタ!!!!; ハル、ルィ、いいから…気をつけて行ってきてね?;」

「はーいvおかーさんいってきまーす!」

「いってきます」

「ああっ!!カイルさん離してください〜〜〜〜!!可愛い我が子らが悪の手にーーー!!」

「いいから落ち着いて!カナタッ!;」

―――じたばたもがくカナタをカイルが取り押さえ、両親そっくりな子供2人は元気よく外へと飛び出していった…。

 

そう、森の奥深くで暮らす家族はめったに人里には下りてこないものの、今日は珍しく4人で町に来ていた。

「おかーさん!おかーさんおかいものしたいー!」

「買い物? 何か欲しいものがあるの?」

「ううん…」

元気よく提案する子供にカイルが問いかけると、もう1人の片割れがその質問を否定する。

「「2人で行きたいの」」

と、幼い子供らが言い出したことから、話は始まったのだ。

「つまりは初めてのお使いデビューって事ですか…クッ!我が子がついにそんな過酷な旅に出るなんて…!!」

「カナタ…;(過酷って…宿屋からすぐ近くに市場があるのに…)」

「いいですよう!!このメモに書いてある品を見事入手してきて下さい!!」

「わーい!」

「―――しかしっその前に世間の心得って言うものを聞いてから行くんです!!外は危険が一杯です!!」

 

…そして冒頭へ戻る。

 

 

 

『せめてー!せめてコレをーーー!!僕特製にゃん帽子を被っていくんです!!』

『何でそんな物を…;』

『大丈夫です!!ハルのはちゃんとわん帽子ですから!!』

『何が大丈夫なの!?;』

…と色々揉めたものの、カナタ特製の防止を被った子供ら2人は、仲良く手を繋いで大通りを歩いていた。

 

「よし!道はあってますね!」

「カナタ、一本道だから…(汗)」

 

…そして、その後ろを隠れてついてくる両親2名。

何だかんだで心配なのだ。

「…そう言えば、何を買い物するように書いたの?」

「買い出そうと思ってたメモそのまま渡したんです!確か食材と雑貨だったはずです!」

具体的にどういうものかと言えば、

じゃがいも、ニンジン、トマト、ほうれん草、せっけん、おくすり、鶏肉、牛乳。

と、割と沢山だ。

「さあっ!2人で買えますかねっ!」

「…それよりも、重いような気がするんだけど…;」

幾ら2人とはいえ、子供には少し重くなりそうな量だった。

しかし、そうこうしているうちに、子供2人はついに(?)食材屋の前まで到達していた。

―――が。何故か店の前で暫く立っていたかと思うと、次の店へとずんずん進む。

「「?」」

何事かと2人が眺めていると、子供らはいくつかの店を見て周り…

「この店!いちばんやすい!」

「ニンジンはあっちのお店…」

熟練の主婦のような目利きで、野菜を買い込んだ。

「……………(汗)」

「やー…さすがは我が子らですー…」

目を逸らして褒めるカナタだった。

 

 

 

「ん〜〜〜〜〜っ!;」

「ハル、重くない…?」

「ヘーキッ重くないっ!」

「おにくも野菜も牛乳も買ったから…後はお薬と石鹸だけ…頑張ろう?」

「ん!」

鶏肉とトマトとほうれん草を担当するにゃん帽子の子供に対し、わん帽子の子供はジャガイモニンジン、牛乳という重いものを担当している…。

幾ら本人が望んだとは言え、重そうに引きずる姿は片割れを不安そうな表情にさせるばかりだ。

「おくすりとせっけんください!」

「あら、君達2人だけでお買い物?偉いわね〜」

「はいっ!」

「ハル、せっけんとおくすりこっちにちょうだい…」

仲の良さそうな子供の様子に、微笑ましく思った店主は、おまけとばかりに多めにおくすりと入れてくれた。

…そして、ルィの袋もずしっと重くなった。

荷物を引きずり宿屋に向けて歩き出した子供に、それを見守っていた両親達が慌てる。

 

「マズイです!!ダッシュです!!ハルとルィより先に戻りますー!!;」

「カナタこっち!;」

ばたばたと慌てて帰り、2人の到着を待つこと数分…

「ただいまー!」

「おかいものできた…」

「お帰りですーv」

「お帰り、2人ともありがとう」

満面の笑顔で帰ってきた子供らを、カナタとカイルは整えた呼吸と笑顔で迎える。

「おにくとトマトと、ほうれん草と、おくすりとせっけん…」

「ハルはまずぎゅーにゅー!」

早速袋から戦利品(?)を取り出す子供らを優しく見守るが―――…

「それとにんじんー…?………………」

「?」

「ハル?」

何故か子供の1人が袋に手を入れたまま固まった。

「〜〜〜〜〜〜〜〜じゃがいもない…」

―――――引きずる最中に破れたのであろう…袋には穴が開いていた。

「かいもの…できなかった…(泣)」

「うっ……(涙)」

「大丈夫です!!;来た道も一回戻れば!!」

「泣かなくていいから…;」

 

半べそになったものの、無事にじゃがいも達は回収され、買い物は何とか成功となった。

 

 

 

その日の夕飯はシチューとサラダ。