迷子しゅうりょうにゃんこさん
…。
「………。」
にゃんこはぶじに、自力でもどってきました。
いったい、前回までのフリはなんだったのでしょうか?
いえ、しかし。落ち着いてかんがえれば、知らないまちからでも、じゅうぶんもどってこれるのです。
しかしまあ。それでも疲れたことは疲れたカイルでした。
黒いにゃんこさんは、ふぅ…と息をつき、よろよろと歩きながらこにゃんこの所にもどろうかと考えました。
…でももう、夕暮れどき。こにゃんこはもうさがしつかれ、帰ってしまっているかも知れません、カイルはそう考えてどうしようかと立ち止まりました。
その時です、
「カイルさんっ!!」
「、」
どろまみれ、キズまみれなこにゃんこがかけよってくる姿が見えました。
「カイルさん見つけました〜〜〜vvv」
「………」
どこをどう見ても、にゃんこをさがす為にこんな姿になったのでしょう。いつもはきれいに毛づくろいで整えている、茶トラの耳もしっぽも見る影もなくよごれています。
「カイルさん?」
不安な時に見つけだしてくれなくても、家への道を教えてくれなくても、…さがしてくれるだけで充分。カイルはそうおもい、(もはや本能的に抱き着いて来た)カナタをじっと見ました。こにゃんこは不思議そうなかおです。
そのほっぺたについたケガをぺろっと舐めます。
「……ありがとう、」
さがしてくれて…
にゃんこの笑顔は夕暮れの中、とてもとてもきれいなものでした。
そして、こにゃんこは…
(鼻血がっ…!!///)
春ももう終わりかけの中、訪れる『春』の予感に、本能をもやしておりました…。