破壊、そして逃避
がしゃん
陶器の割れる音が、森の中で響き渡った。
ここから全ては始まった…。
「ど、どうしよう……」
カイルは、ひん死状態のカナタに『おくすり』を使おうと袋を広げていたのだが
それを過って落としてしまったのだ。
「カイルさん、どうかしたんですか…?」
「うん…とりあえずおくすり…」
今回も、メンバーは2人だけである。
「え!?『せいじのつぼ』割っちゃったんですか!?」
カナタは珍しく、驚いた声を上げた。
「ごめんね…」
「いえ、僕はいいんですけど…それシュウから預かったやつなんです………それを忘れてた僕も悪いんですけど…」
「「………………」」
沈黙が辺りに満ちる
「ど、どうしましょう!!カイルさん!罰当番が回ってくるかも知れませんよ!?」
「ば、罰当番っ!?」
「そうです!!なんと、城中を綺麗になるまで磨かされるんです!!」
本気でそれを恐れるように、カナタは頭を手で覆う。
「じゃあ、僕が…」
「いいえっ!実は僕がレブラントさんに渡すように頼まれてからもう…一ヶ月も経ってるんです!」
カカッッと、バックに稲光りが走る。
「「……………」」
またもや沈黙が満ちる。
「うわーーーー!!多分それをまた後からネチネチと責めてくるんですーーー!!」
「とりあえず!のりでくっつけよう!!」
もう、怒られるどころではないと確信したカイルは懐からのりを取り出す。
慌てて修理に取りかかった。
「カナタ、それこっちじゃない?」
「カイルさんこそ、それはここですよ〜」
そして出来上がった物は一一一一一一一一一一。
「な、なんかすごい……」
「どうしてこんなのに………」
もはや原形はとどめてはおらず、いびつに歪んだそのつぼはある意味芸術のようだった。
「と、とりあえず届けちゃいましょう!」
「うん、早く帰ろう」
ぎくしゃくしながら、2人は本拠地へと帰還する。
「ほお、シュウ殿が…なんというかシュールですな、」
「はいぃぃぃ!!じゃあそう言う事で!!」
急いでカナタは手渡すと、カイルを引っぱりダッシュで逃げる。
この後当然、シュウにバレた。
結局掃除をさせられる2人だった。
おわる