落とし物に御注意

 

 

「あれ………?ないっ!?」

ごそごそとカイルはポケットを探ってみたのだが、どうしても求めている物が見つからない。

いや、正しくは処分しようとしていた物が見つからないのだ。

「どうかしたのか、」

その様子を訝しく思ったクライブはめずらしくそう尋ねた。

「いや、別に…」

そう、カイルは言ったが心の中ではパニックを起こしていた。

 

『もしあんなのが、誰かに拾われたらっっ!!!!!!!』

 

 

 

「…………………」

その日酒場ではめったにない出来事が起こっていた。

 

トランの英雄が一人で座っていたのだ。

それも、知る人ぞ知る解放軍時代のオーラーを出しながら、

そしてそれが、彼の周りに人を寄せつけなくし、酒場をぴりぴりとした雰囲気にしているのだ。

さすがのハンフリーも、いつものように黙々と呑んでいられなかった。(らしい、フッチ談)

 

ついに対策本部が結成された。

つまりは元解放軍メンバーが集められたのだ。

「カイル様………」

「ありゃあ相当きてるな…」

「だいたい犯人アイツしかいねーんじゃねーか?」

言わずと知れたこの城の主で、現リーダーであろう。

「なんで僕が…」

謎の集団の周りをスタリオンが走り回る。

そして、その速さを上回る人物がやってきた。

「あっ!!カイルさ〜〜〜…」

おもわず、真っ白になったメンバー達だがなんとかもちなおす。

「ビクト−ル!!」

「おいよっ!」

 

どたんっっばたんっっっ

「なにするんですかーーーっっ!!!」

「ルック紋章を使ってくれえ!!!!!」

 

壮絶なバトルが繰り広げられていたが、カイルは全く気づかずに考え込んでいた。

 

 

「ぷ〜。」

「すみません、カナタ様。」

ルックの呪文により、ズタボロにされカスミによって縛られたカナタだった。

「お前…あのカイル見てどう思う」

「………怒ってる姿もステキですv」

一一一一一とりあえず怒っている事は理解しているようだ。

「リーダー、なんか怒らせるような事したんだろ♪」

なぜか楽し気にシーナが尋ねる。

「してないですよ〜〜〜、嫌がるカイルさんを無理矢理女装させてついでに縛って朝まで寝かせなかったぐらいしか−ー−、」

「「「それだろ」」」

全員が口をそろえて言う

「え?でもその後、ソウルイータ−発動させられましたよ−?」

「しょうがねー、こうなったら本人に聞くしかないだろうな。」

「…誰が?」

 

 

「あのっカイルさんっっ!!」

「どうしたの?ヒックス」

コチコチに固まってヒックスが話しかえる、

心の中でテンアガール〜〜〜〜っっっと叫びながら………。

一番八つ当たりされにくい人物が生け贄(?)として捧げられたのだ。

 

「おー話してる話してる、しかしいっつになったら本題に入るつもりなんだ?」

「いまどき、『今日はいい天気ですね』から言うか〜?」

「まだまだかかりそうだな…」

「付き合ってらんないね、」

「私も修練が…」

スタスタとルックが去ってゆく、その後ろに申し訳無さそうにカスミが続く(今までいたのが不思議なくらいだ。)

「からくり丸どこーーーーーーー?」

メグがいつものようにからくり丸を探して走ってゆく、平和と言えば平和な風景なのだが、酒場から立ち上る緊迫したオーラは相変わらずだ。

「いったい何が原因なんでしょうか〜?今回は本当に僕、関係ありませんよ?(多分)最近やったいたずらはテンプルトンの地図に落書きしたくらいですし、」

「あの…」

「あれ、お前がやったのか…」

「だって、カイルさん王国なんてあったら楽しいでしょ?」

「あのう…」

なぜか話はそれ始めていた。

「…あんたら雁首そろえて何やってるんだい?」

「あ、ローレライさん」

「フッチがそこで何か言いたそうにしてるよ、」

「え?」

ローレライはそれだけ告げるとどこかへと去ってゆく、

カナタが振り向くと、確かにそこにフッチが立っていた。

「フッチそんな所で何やってるの?」

「いえ、声かけようとしたんですけど…」

実際にかけたのだが、

「何か用があるみたいだな、」

フリックがフッチの手に何か握られているのを見つける。

「はい、拾い物なんですけど…カイルさんの名前が書いてあったので…」

真っ赤になってフッチは俯いた。

「何拾ったんだ?」

ヒョイッとシーナがそれを取り上げる

 

「………………下着?」

 

それも、ネコ柄のかわいらしい下着だった。

「あvそれカイルさんのです。(この間僕がプレゼントしたv)」

「「「これがか?」」」

 

「いや〜、案外あいつも可愛いの履いてんだなぁ…」

「ぷっ…」

にやにやと人の悪い顔を浮かべたビクト−ルとシーナだったが、

「おい、ビクト−ル…」

フリックが青ざめた顔で後ろを指差す

 

「カイルさんv」

 

いつから背後にいたのか、カイルは無表情で立っていた。その後ろにはヒックスが泣きそうな顔でいた。

そんなカイルの出現を喜んだのは、カナタだけだった。

 

「カイル、はやまるな!話せばわかるッッ!!!」

「そうそう!別に言いふらそうなんて思ってないしな!!!」

 

「っっ『大爆発』!!

 

紋章は酒場をも焼き尽くす勢いで発動した。

 

「ビッキー!!バナ−の村まで、」

「あっ、まって下さ〜い、僕も行きます〜♪」

『炎のエンブレム』のおかげで無事だったカナタは、通りかかったヴァンサン・ド・ブールを跳ね飛ばし真っ赤になったカイルの後に続く。

床には真っ黒にすすけた物体が三つ落ちていた……………。

 

 

「……………熊焼き」

ボソリとペシュメルガが呟いた………。