よよいの酔い
「リーダー、酒呑まねえか?」
「お酒?…一回呑んでみたかったんだよね〜!!」
「………」
いったい何があったのだろうか…
カイルは考え込んでいた。
カナタと待ち合わせていたはずの酒場からけたたましく陽気な声が響いている。
かなり盛り上がっているようだ。
「…帰ろうかな………」
なんだか嫌な予感がするようだ
カイルは酒場へと伸ばしかけた足を180°回転させる一一一が、
「カイルさあ〜〜〜〜〜〜んッv♪v♪v♪」
いつもよりもテンションの高いカナタに見つかり、ガバアッと背後から抱き着かれる。
「うっ……」
酒臭い………。
いつもは太陽の匂いのする少年だが、今はアルコールの匂いがプンプンと香っていた。
「…カナタ、離れて欲しいんだけど………」
ちょっと控えめに提案するが、酔いの回ったカナタは聞く耳を持っていなかった。
「いやですぅvもう離しませ〜〜〜んっvvvvv」
ギュウギュウと更に腕に力がこもる
「カナタ、酔ってる?」
「え〜〜〜?何がですかぁ〜〜〜?カイルさんも一緒に呑みましょーv」
カイルは抗う間もなく酒場へと連れ込まれてしまった。
中は予想通りの狂乱振りだった。
「そこのお姉さん俺と一杯どう?」
「からくり丸ーーーーー?」
「あ〜ボナパルトぉ〜それ食べちゃダメぇ〜〜〜」
「わはははは、おう、カイルお前も来たのか?」
「ビクトールさんっ!カイルさんは僕のですよーーー!!!」
「…」
話が全く噛みあっていない所を見ると、かなり酔っているらしい。
「わはははは、まあ一杯やれや、」
「はいv」
酔っ払い熊に酒を進められ、ビールジョッキ(大)をカナタが嬉しそうに受け取るのをカイルが無言で没収する。
「あれぇ?消えちゃったー」
「それ以上呑んだら…」
「カイルさーーーーーん!!」
カナタよりも高い声が聞こえ、それに背中に張り付かれる。
ナナミだ。
「…ナナミちゃん(も酔ってる…)」
「ああっ!ナナミずるいっ!!」
僕も〜っとカナタは前から抱き着く。
背中に張り付かれ、片手にジョッキを持っているので抵抗しようにも抵抗できない。
「カナタッ!ナナミちゃんもっ…」
「ZーーーZーーー」
寝てしまったらしい。
「あああっ!!カイルさんの背中で寝るなんて!!僕だってカイルさんの上で寝ます!!」
「カナタ…」
「やれやれ…」
見兼ねたレオナが寝ているナナミを引き離し運び出してゆく、
カイルがホッとし油断した瞬間に、カナタはカイルの手からジョッキに口をつけグビグビと呑んでいた。
「カナタッ!!」
「んむむむむ、(大丈夫ですvカイルさんにもあげますからぁ♪)」
言っている事は解らないが、ロクな事ではないと察し、カイルは逃げようとしたが…
ガシイッと頭を掴まれ唇を合わせられる
「ん〜〜〜♪」
「んーーー!!」
2人が唇を合わせて暫し、周囲は静まり返りかたずを呑んで見守っていた。
一一一一一一一一一ゴックン、
カイルの白い咽が上下し、酒を嚥下してゆく。
その瞬間、首筋から一気に淡いピンク色に染まる。
「……………」
ぼ〜っと虚ろになったカイルの瞳がカナタを捕らえる。
どうなるっ!?と全員が思ったが、事はすべての者の予想をはるかに上回っていた。
「…カナタぁ〜好きぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜vvv」
「僕もカイルさん大好きですう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜vvv」
だああっと全員転けたが、酔いが回って思考回路が鈍っていたからだろう、さ程衝撃を受けずに復活した。
「わははははは!!呑ませろ呑ませろ!」
この宴会は全員が酔いつぶれるまで続いたそうだ。
終える
と、みせかけてオチ。
「h〜?何か頭いたいです…」
がんがん響く頭に手をやり、カナタは身体を起こす。
ふと見ると自分の腕に誰かの手が絡まっていた。
それを誰か理解するまでに少し時間がかかった。
「…カイルさん?」
すーすーと規則的な寝息を立てつつ、幸せそうな顔でカイルが寝ていた。
上に毛布がかかっているが、全裸である事は間違いない。
しかもここは酒場である。
周りに酔いつぶれた人々が幾人も転がっている。
ついでに言うとカナタも、下以外何も身につけていない。
「?」
よく見ると、紫色に鬱血した痕が幾つもついていた。カイルはそれの倍程はついていそうだ。
「???」
カナタの額から嫌な汗が一筋流れ落ちた。
「な、なんにも覚えてませんーーーーーーーーーーーッッッ!!(もったいないっっ!!)」
「ん〜〜〜?」
カナタの絶叫にカイルが身じろぐ、
カナタはこの後すぐに証拠隠滅に走ったらしい。