失敗

 

 

「ぷう〜〜〜〜っ」

ほっぺたを膨らませ、同盟軍リーダーカナタは書類の積み上がった机に頭をのせ、拗ねていた。

「…カナタ殿、さっさと仕事をして下さい。」

顳かみをひくつかせつつ神経性胃炎持ちの軍師が静かに言い放つ、

「やだ」

「カナタ殿…」

ピキッ

「ヤ・ダ。」

ピキキキキキッッ

 

「カナタ殿ッ!!いいかげんにして下さい!!この溜りに溜った書類の山を見たらどうですかッ!!」

「へっ、キレるの速すぎー」

何やらやさぐれモードに入ったカナタだ。

2人とも最初とたいして変わらない姿勢のままだったが、その場に満ちている空気はかなり険悪なものに変わっていた。

「とっとと書類を片付けて下さい!!」

「い〜やだっ!今すぐカイルさんと会うっ!!」

「終わらせてから会ったらどうです、」

にべにもなく言い放つシュウ。

 

『このクソ軍師〜〜〜〜っっっ!!!』

『我が侭軍主めっっ!!!』

 

カナタは考えた。

知恵を絞り、どうやればカイルと会えるかを考えた。

自分はここを動けない。と、すればカイルに来てもらうしかない。

頼みの綱のナナミはレオナの手伝いで出かけている。

 

「…シュウ、」

ゆっくりとカナタは口を開く、

「…なんですか」

「禿げるよ、」

 

ピッシャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッン

どこからともなく雷の落ちる音が聞こえたような気がする。

 

「あなたが仕事をしてくれればいいことです!!!」

「絶対しない。だから禿げるよ。」

「やって下さい!!」

「カイルさん呼んでくれたら考えるv」

にこ〜とカナタが笑う。子供独特の笑顔だというのに、何故だか悪魔の微笑みにも見えた。

「…………」

 

シュウも考えた。

このままでは絶対に書類は減りそうにない。

トランの英雄を呼べば遊び呆けることは間違いない。

しかし、このままでは仕事は終わらない、そして自分の胃と髪の毛が危ない。

 

「………いいでしょう」

「やったーーーーーーーーーーーーー♪」

 

 

 

 

「えっと…、と言う事は………僕は何も関係ないんですよね?」

カイルは言った。

椅子に縛りつけられたカイルは言った。

突然現われた同盟軍メンバーに酔って運ばれてきたカイルは言った。

「そう言う事になりますね、」

「ああっっ!!カイルさんを椅子に括りつけるなんてッ!!!(そんなうらやましい事!!僕もしたかった!!)」

そう言うカナタも椅子に括られていた。

「カナタ殿がさぼっては困りますので、」

「………(僕を括っても仕方ないんじゃあ…)」

しかし、特に不自由な事はないのでそのままでいるカイルだった。

カナタも縛られているのでカイルは安心している、

 

「シュウ…手使えないけど?」

「口で判を押して下さい。」

 

バチバチッと火花が飛ぶ。

それを見つつ、カイルはボ〜ッとしていた。

 

 

 

10分後

「飽きました!!」

はやっ!

ていやっと机を蹴り倒すカナタ。

それを見てシュウは切れた。

「いいかげんにして下さいっッ!!!!!!!」

 

喧嘩(?)を始めた2人を無視し、カイルは膝の上にのっている猫を嬉しそうに眺めていた。

 

「『火炎の矢』!」

 

カナタの放った紋章の力はシュウを外し、猫にかすった…それが仇となった……………

 

「み゛ゃっ!」

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「シュウ兄さんーーー…?」

アップルは崩壊し切った部屋を見て目を丸くした。

中にはカナタとシュウだと思われる物体が倒れていた。

無事なのはなぜかしっぽが焦げている猫とそれと戯れているカイルぐらいだった。

「あの…カイルさん、何かあったのですか?」

「別にv」

ニコッと笑いカイルは猫をじゃらす

 

そう、別に何もなかったのだ。

別に何も…

 

 

 

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