雪事件

 

 

「カイルさん!!雪合戦しましょう♪」

どこからやって来たのか、カナタは図書室一一一というよりはカイルの元一一一へ息をきらせて駆け込んできた。

「雪合戦?」

読んでいた本を閉じて、カイルは窓の外を見る、が当然雪など降っているはずもない。

「うん、いいけど…」

テレポートでどこかの場所でやるのだろうと思い返事を返す。

「わ〜〜〜〜い♪♪♪じゃあ速く外に出ましょう!!」

「外?」

カナタは返事を聞くとすぐに、カイルの手を引き外へ走り出す。

図書室なので、周囲からの咎めるような視線が刺さったが今さらであろう…

 

 

「じゃじゃじゃじゃ〜〜〜〜〜ん♪どうですか!!」

謎の効果音をあげつつ、カナタが見せたものは…………よくわからないものだった。

いうなれば巨大な樽に大量の筒が刺さっているものに見える。

「……………なに?」

当然カイルにそれが何なのかわかるはずもない。

「ふふふふふ、これはアダリーさん作『雪雪降れ降れマシーン(名付けカナタ)』です!!」

「動力は?」

何となく聞いてみるカイルだ。

「エレベーターの人たちが巻いたゼンマイです!!どうやって作ったのかまでは知りませんけど、」

えっへんと胸を張ってカナタは答える。

どうでもいいが、そこまで労力を割くぐらいならテレポートで雪のある所に行った方が速いのではないだろうか?

「………」

カイルは、大丈夫かなあ?と首を傾げその樽らしきものをポンポンと叩く。

「じゃあ!スイッチオンです!!!」

カイルの不安を他所にカナタは思いっきりレバーをあげた。

 

し〜〜〜〜ん。

 

「?」

特に樽に何の変化も起こらず、辺りは静まり返ったままだった。

「あれ〜?おっかしいですね〜???」

首を傾げながらカナタは樽から出ている筒の一つに顔を突っ込む、その途端樽は振動を始めた…

「カナタ…」

『はい〜〜?なんですか〜〜〜?』

くぐもった声が筒の中から聞こえる、

「危ないと思うんだけど………」

『え?』

ぶごごごごごごごぉぉおおぉぉおおおおぉっっっっっっっ!!!!!

「ぶっっ!!」

「…………」

時はすでに遅く、筒から大量の雪と共にカナタも押し出された(…と言うより吹っ飛ばされた)。

「大丈夫?」

「………はい。」

ボコッと雪の山から起き上がりカナタは言うが、顔は雪だるまのようになっていた。

「………♪ カナタ、カナタ…」

「え?なんですか♪」

カナタは急いで雪を叩き落とし、カイルの表情を見る。

「ちょっといい?」

予想通り満面の笑みを浮かべていた。

「はい♪何でも聞きます〜〜vvv」

たまに見せるこの表情に、カナタが逆らえた事などないのだ………

 

ぺたぺたぺた…

 

「………カイルさん…」

「?」

「冷たいんですけど…」

「あ………」

カナタを『人間雪だるま』(←身体だけ雪だるまにする)にほくほくとしていたカイルは、その事実(?)に気づき雪を固めていた手をとめる、

「………ごめんね…今崩すから、」

しゅんと項垂れる姿は、無意識からの色気が放たれる。本人に自覚がないのがこわい…

「いえ!いいです!!!全然オッケーです!このまま生きます!」

「え?いいの???」

「はいvほら、ここから手出せば雪合戦できますしvvv」

………とかなんとか言っている内にも、『雪雪降れ降れマシーン』は作動しっぱなしだった…。

辺り一面に雪をまき散らし、地面だけではなく、城まで雪で埋め尽くしてゆく…。

そして、当事者達はそれに気づかずにのほほん♪と遊んでいる………

 

 

 

「あはは〜♪誤算でしたよね〜vvv」

ごごごごごごごご、と振動する樽の隣に二人は座って周りを見渡していた。

どこをどう見ても、雪、雪、雪、それしかない。

そう、気づかぬ内に『雪雪降れ降れマシーン』は城を雪山(しかも吹雪時の、)としていたのだ。

ここの気温ではすぐ溶けるだろうと思っていたのがそもそもの間違いで、解ける端から又次の雪が『雪雪〜(以下略)』から放たれるのだ。そして、未だにゼンマイがきれる様子もない。

「……………」

「何人くらい凍死したんでしょうね?」

そんな物騒な事をニコ〜と笑って言っているが、死人はまだでていない。まだ。

「……………どうするの?」

この惨状を、とは口に出さずにカイルは尋ねる。

カナタは寒さからではないのだろうが、カイルにピットリとくっつきつつ答えた。

「えへvどうしましょう?」

「……………」

カイルは墓を掘った方がいいかな〜?などと諦め始めた。

「冗談ですvちゃ〜んと考えてますってばv」

あはは♪と笑ったカナタの手には巨大な段ボール箱とガムテープが構えられていた…………。

ついでに、速達と書かれた紙も持っていた………。

 

 

 

 

「クルガンクルガン!!なんかすっげぇでっかい箱が届いたぞ!?」

「……………」

好奇心を丸出しにしたシードにはこの箱の怪しさは全く伝わっていないようだ…

何故かパンパンに膨れ上がり、びくびくとたまに動いているこの箱の怪しさが………

(………カナタ殿からか、)

クルガンは宛名に素早く目を通すと、顔を挙げてシードに言い放つ

「まて、シード開ける一一一一」

「は?」

……………もうすでにシードはガムテープを捲っていた。

 

ごごごごごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!

 

「ぎゃああああああああああああああ!!!?なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁあああああ!!!?」

 

 

合掌。

 

 

 

「いや〜♪片付いてよかったですよね〜v」

ザクザクと雪掻きをしながらカナタ、

「…………」

どこに送ったのかはこわくて聞けないカイルだった…。