種蒔く人

 

「カイルさん種まきませんか?」

 

てくてくてく

手を引かれて歩く

 

「種?」

 

てくてくてく

伝わる温かさが心地いい

 

手を引かれながら歩く

いまではもう、懐かしい行為

 

それが何故かとてもうれしい

 

「何の種?」

 

微笑んでしまう

見つからないよう祈りながらも

 

不意にもれる笑み

 

「何の種かは解らないんです、ポケットに入ってたのを見つけたんです」

 

楽し気に笑う少年

 

「へえ」

「植えてからのお楽しみですね♪」

 

てくてくてく

握られた手に力がこもる

 

振り向いた少年のいたずらっぽい笑顔

微笑み返すと

更にうれしそうになる

 

 

「埋める穴の大きさってこれくらいでいいんでしょーか?」

「多分…水もやらないと、」

「一緒にやりましょうねっ!!」

 

泥まみれの君と僕

なんとなく楽しいと思える『今』

大切にしたい…

 

「芽が出るまで一緒にいて下さいねっ!!」

「………うん」

 

一緒にじょうろで水をやる

こぼれる水が地面を湿らせてゆく

 

こんな日がずっと続くといいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、オチ。

 

「……………カナタ、」

何も言う気がしないが、何かを言わなければと思いカイルは口を開く。

「……………なんですか?」

「あのね、」

会話はしていても、二人の視線は昨日種を植えた場所、(現在は謎の巨大植物が暴れている)に注がれていた………。

「昨日の種何……?」

「え〜っと、今見る限り食虫…いえ食人花みたいですね。」

カナタ曰く、『食人花』は縦横無尽に暴れ回り周囲のメンバー達を食べようと蔓を伸ばしまわっている。

「………どうするの?」

「さあ、どうしましょうか♪(汗)」

「………」

いつもの日常、一言で言えばそういう事だ。

 

                        終える