うららかな、ある晴れた日…
「カイルさ〜ん♪お茶とって下さいvvv」
「うん――――はい、どうぞ」
「ありがとうございます〜♪♪♪」
もくもくもく…
「カナタ、ソース取ってくれる?」
「はい!喜んで〜vvv」
もくもく…
「はっ!なんか僕ら新婚カップルみたいですねっ!!」
「え?何が???」
仲良くお弁当を食べる同盟軍リーダーとトランの英雄。
それはまあ、別にいいだろう。
が、まあ、食べる場所が問題だ。
「がーーんっっ!違うんですかっっ!!!?」
「?」
「――――お前らな…」
ぴくぴくと青筋を立てて、『もう我慢できないッ!』とばかりに紅い髪の青年が勢いよく机を叩く。
「なんでこんな所で呑気に飯食ってんだ〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッ!!!!!」
がった〜んと椅子がひっくり返った。
ここは、ハイランド。シードの自室である。
その部屋の中で堂々と『おべんとう』を広げているのだ。(しかもカイルの手作りと思われる。)
「えっと………シードさんも食べますか?」
「カイルは黙ってろっ!!俺はカナタに文句つけてんだっ!!!!」
があっと一括し、黙らせるシード。
「………」
カナタはそれまでは口に加えていた箸を丁寧に弁当箱の上に置き、シードと視線をあわせ、口を開いた………
「ふっ………最近城内でイチャイチャしてると邪魔が入るんですよね〜。ここなら邪魔も入りませんから〜♪」
たるそうに言い放つと、熱いお茶に手を伸ばしずずっと啜る。
「…………カイル、殴っていいか?」
コレ、とカナタを指差しながら尋ねる。あわててカイルは止めに入った。
「大体、シードさんなんでそんなにイライラしてるんですか?」
いつものシードさんなら『俺も混ぜろ〜♪』ぐらい言いそうですよ?―――とカナタは続ける。
「……………」
何か思い当たる節があるのか、シードは黙りこくってそっぽ向いてしまう。
「そう言えば、クルガンさんの姿がないですよね〜」
「…………」
「ずっと一緒にいる訳がないですけど、『最近クルガンに会ってねぇ………』とかで拗ねてたりなんかしてたりして(笑)」
あはははは♪と呑気に笑うカナタだが、喋る度に、シードの青筋と殺意が増えている事に気がついているのか?
ゆらり…
ついにシードが抜き身の剣を構え、カナタの側に近寄った。
「あの…シードさん……カナタ、死んでませんよね?」
「ん、(多分)」
さっきから黙って『おべんとう』を片付けていたカイルだ。
「じゃあ失礼しま…………」
「待って下さいっ!!」
カイルが帰ろうとするのを血塗れのカナタが止める。まあ、何故血塗れなのかは言わずとも知れたことだろう………。
「カナタ……?」
戸惑いながら、カイルは呼び掛けるが、もうすでにカナタは暴走していた。
「破局を迎えたカップルを放置するなんて!『愛のキューピットカナタ』の名が泣きますっ!!」
「誰が『破局を迎えた』だッッ!!(怒)」
「……………(あ、愛のキューピット???)」
「まあ、それは置いといて!クルガンさんの様子を僕らが探ってきます!!」
ごそごそとふくろの中を探ると、ニ対の羽根を出してくる。デフォルメされた天使の翼のようだ、
「さあ!カイルさんもコレをつけてレッツゴーーですっ!」
「おいっ…俺まだ何も……」
本能的に『カナタに任せるとヤバい』と悟ったのだろう、シードは止めようとするが………。
きゅぴ〜んとカナタの目がひかり手に何かを構えシードの横を走り抜ける、カナタが駆け抜けたその瞬間シードは縄とガムテープでぐるぐる巻きになっていた…………。
「ふっ………甘いです、『天使』を甘く見ないで下さい♪」
すでに、背中に白い羽根をつけたカナタだ。
「むーーーむーーーーーっっっ!!!」
怒り狂うシードだが、ガムテープで口を塞がれ、手足を縄で縛られては、まさに手も足もでないと言うものだ………
「カナタ…………(それは『天使』のやることじゃないと思うんだけど…)」
「細かい事は置いといて!クルガンさんの様子を見に行きましょうっっ!!」
カイルを引っ張りダバダバとシードの部屋からでてゆくカナタ。その背中についた羽根から、一枚の羽が落ちた。白いはずのその羽は何故か黒かった…………。
「っていう訳で、クルガンさんの部屋です!!」
正確に言うとクルガンの自室の天井裏だ。
「……………」
カイルはまだ『どうしよう』かと考えているのだろう、カナタの覗きを止めていない。
「はっ!いきなり誰かいますっ!!しかも女の人ですッッ!!!」
「え?」
覗き穴から目をこらすと、確かに女性の姿が見られる。
が、よくよく耳をすますと(カナタには)聞き覚えのある声だった。
「って、あれはジルさんです。」
どこか残念そうに言うカナタだ。結局この少年は楽しければなんでもいいのだろう。
「ジョウイ君の奥さんの………?」
「はい。―――って言う事は不倫ですかッッ!!『失楽園』ですかっっ!!?」
一応は小声で話しているのだろうが、これだけ喋っているととてもそうとは思えない。
「クルガンvクルガン?シードとの情事の写真を撮らせていただけません事?」
「ジル様……何度も言うようですが、それはお断りいたします、たしかそれでも黙って撮っていたのではありませんか?」
「近くで撮りたいんですのv」
下から聞こえてくるのは、とても色気のありそうな話とは思えない。
「ちいっ!浮気じゃないみたいですね!!でも、これで諦めたら『ラブハンター』の名が泣きますっ!!」
「カナタ………なんか、目的代わってない?(名前も………)」
暫く議論が続いた後、ジルが残念そうに、それでも優雅に退室していった。
「は〜、クルガンさん仕事ばっかしてますね〜。」
「そうだね……」
「さっきから来たのは補佐官のアスティアさんぐらいですね。」
「そうだね………」
「はっ!もしや!!上司と社員の禁じられた愛ですかっ?!」
「……………(アスティアさんに失礼だと思う…。)」
カイルはもう、なにやら呆れて何も言えなくなっていた。(いつもの事だが、)
「あれ?また誰か来ました……って、あれは…」
「クルガン………」
「ジョウイ様、」
「ジョウイですっ!しまった逆ですかッ!!」
「………(何が?)」
ホントに。
「クルガン………このシードの作った始末書の山どうにかならないのかい……?」
「無理でしょう。」
「hっ……」
ばったりと胃の辺りを押さえて床に転がるジョウイ。
「けっこう苦労してるな〜。」
うんうんとカナタが頷く中、ジョウイは担荷で運び出されていた。
どうも、今まで観察しているとクルガンは仕事が多すぎて身動きが取れなくなっているらしい。
「あの、クルガンさんが身動きできなくなるくらいの量ですか?」
「もしかして、シードさんの分までやってるんじゃ………」
もしかしなくてもそうだろう。
「シードさんからこっちくれば話は早いんでしょうけど、いじっぱりですからムリですね〜。」
「………」
ノーコメントなカイルだ。
「って、言う事は『愛を育み隊』として、クルガンさんに休憩をとってもらってシードさんの所に行ってもらえばいいんですね♪」
またもや、名前(?)が変っている。が、カイルはもう突っ込む気にならないらしい。
カナタもそろそろ飽きが来ているらしい。
ごそごそと懐を探ると、弓矢を取り出す。
ペンキで白とピンクに塗り、矢じりの先をハート形にしているが、本物の弓矢である。
「え〜っと、手紙手紙っと、」
「?」
かきかきとカナタは手紙を書いているが内容はカイルには見えなかった。
「じゃ、行きま〜すv」
きりきりと弓矢を引き絞ると覗き穴からクルガンに標準をあわせる。―――クルガンの頭に、
「チェスト〜〜〜〜〜〜ッッ!!」
何かのかけ声を叫びつつ、カナタは思いっきり矢を放った。
「カナタ!?」
ドスッ
クルガンは飛んできた矢を軽々とかわすと、机――先ほどまで自分の頭があった――に刺さった矢を無表情に引き抜き、結んである手紙に目を通 る。
「お〜♪さすがクルガンさんですvちゃんと避けてます。―――じゃあ、帰りましょうか〜v」
(あわよくば、殺ってしまうつもりだったのか?)
カナタはカイルの手を掴みここを抜け出すべく、出口に向かって走っていった。
そして、手紙の内容とは………
クルガンさんへv
シードさんが最近構ってくれないと拗ねてましたよ♪
今部屋にいますv
ので、がんばってください
カナタより♪
「…………」
クルガンは無表情で、(しかし、クルガンの表情が解るものにはにやりと笑って…)部屋を出ていった。
「は〜vやっぱりピクニックは外でやるものですよね〜〜〜♪♪♪」
「うん………………あれ?カナタその羽根……」
「ああ、これリバーシブルなんですvvvカイルさんは白い方が似合ってますv」
「………ありがと…」
カナタの羽根の色が何色だったかとう事はあえて言わないでおこう…。
そして一番不幸なのは、言うまでもなくこの人だろう………。
「むーーーーっっっむ〜〜〜〜〜〜〜っっっ(怒)」
この人、シードがどういう目にあったかと言う事も、謎という事にしておこう………。
まあ…最終的にはラブラブになった事なので、一応はカナタ(達?)の目的は達成したという事だろう。
小悪魔によって結ばれた(?)二人に幸あらん事を……………
長くなりましたが、終わりますv>死