WANAWANA!!

 

「カイルさ〜〜〜〜ん♪♪♪朝ご飯食べに行きましょうーーーーーーーーーッッッッ!!!!!」

朝っぱらから(と言うよりはいつも)ハイテンションな少年だ。

カナタは扉から顔を覗かせ、中にいるカイルに向かってぶんぶん♪と手を振り回している。

「うん。ちょっと待ってね………」

洗面し、濡れた顔を手ぬぐいで拭いながらカイルは返事を返す。

「わかりました〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪♪♪」

さながら子犬がパタパタとしっぽを振りながら『まて』をしているような光景だ。

のほほんとした雰囲気だったが、カイルはある事に気づいた……………

それまではいつも通り、何の表情もみせない顔が、ハッと驚きの表情に変わった………。

 

――――――最近自分はいつ、家に帰ったのだろうか?

 

「カナタ………僕いつからここにいたっけ……………?」

「三ヶ月前くらいからです♪」

かなりの期間家に帰っていない。

どうもカナタのペースに巻き込まれ、そのままずるずると本拠地で過ごしていたらしい………。

カイルにとっても、色々と居心地がよかったのか、帰れなかったのか……それはわからないが、カイルはカナタの言葉で今日は帰ろうと決心した。

「カイルさーーーんッッッ朝ご飯食べに行きましょうーーーーーーっっっっ!!!!!」

「あ、うん…。」

 

 

結局、カイルが外に出れたのは昼過ぎだった。

 

「はあ、カナタには悪いけど………今日こそは帰らないと…」

結局朝ご飯を食べ、いろいろと予定が伸びて昼ご飯を済ませた頃、ようやくカナタの監視の目(?)が弛んだのだった………。

「こっちからでよ………」

カイルが扉からでたその時、頭上から聞き覚えのある笑い声が響いてきた………。

上を見上げると、洗濯物とその縄の上になぜか立っている幼い軍主の姿がある………………………。そして、手には何か紙のようなものを持っていた、

「あはははははははは♪甘いですッッ!!甘いですカイルさん!今日食べたバニラのように甘いですーーーッッ。。。」

「…………………カナタ、」

そういえば、あのデザートおいしかったな〜…。などとカイルがずれた事を考えつつも、カナタは更に叫んでいた。

「こんな事もあろうかと思って!ここから入口までの間に大量に罠を仕掛けておいたんですッッッ!!なんと!あのアダリーさんとメグの合作ですッッ!!」

「…………(そういえば、誰もいない…)」

辺りを見回すと人1人どころか、猫一匹もいない。嵐の前の静けさというヤツだろう。

「僕もどこに何が仕掛けられているのか知りませんッッ!!この地図を無くしたら!僕も一歩も動けなく…………」

カナタが自信満々に言い放ったその時。

突如として突風が吹き荒れた。

「あわわわわわっっっっっ!!」

カゼに煽られて洗濯物とカナタが揺れる、落ちまいと手をぶんぶんと振り回しバランスを保とうとするが…………………。

 

「…………」

「―――――落ちます……。」

ダバーっと涙をこぼすと、カナタは地上へと向い落下した。

ゴツッと鈍い音が聞こえた………が、それだけではすまなかった。

おそらく彼の言う『罠』が作動したのだろう………。

 

ちゅどーーーーーーーーーーーーーーーんっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!

 

「!!!!?」

ものすごい爆発音と火薬の匂い。

罠。『地雷原』に落ちたのだ………

「hーーーーーーーー………」

「カナタッ!?生きてる???」

「カイルさ〜〜〜んッッ痛いです〜〜〜〜〜〜(泣)」

消し炭状態と化したカナタだが、まあ大丈夫なようだ。

「大丈夫………?」

こういう所がカイル的に憎めないのだろう、カイルは反射的にカナタの落下地点まで駆け寄っている。

「はい〜。―――でも……………さっきの衝撃で、トラップの位置の地図なくしちゃいました……。」

「……………」

「二つくらいは、何がどこにあるのかわかってるんですけど……。」

扉からはかなり離れてしまっている。カイルがここに来れたのは運がかなり強かったためだろう………。

「えーっと、ここだと酒場の方の入口から行った方がいいと思います〜。」

「あっちから行くとどうなるの?」

カイルは何となく、さっきでてきた扉を指し示し、そう尋ねた。

「………偶然持っていたこのムササビぬいぐるみをあっちに投げます。」

カナタはぬいぐるみと言うより、ワラ人形に近い『打倒ムササビ』と書かれたボロ雑巾(?)を放り投げる。

そして、ヒュヒュヒュヒュヒュッ!と風をきる音とトストスッブスブスッッ!!という音が辺りに響き渡った…。

「ってな感じになるんです。」

「……………」

哀れムササビぬいぐるみ?は、矢の的になっていた。

「取り敢えず先に進みましょうっッ!!」

もはや誰のせいでこんな事になっているかは考えていないようだ。

どんなダンジョンよりも恐ろしい罠の道にカナタが一歩足を踏み出した瞬間、地面は消え失せた………。

「どあわわわっわわわわっわわわわっわあっっっっっ!!!!!!」

『落とし穴』

古典的なもの程かかりやすい。

カナタは基本的に穴の底に飲み込まれてゆく……。

「カナタッ!」

カイルが助けようと穴の方に近づくが、何故か一瞬のうちにカイルの視界が反転した。

「あああっっっ!!カイルさんっっっっっっっ!!!!!!」

「…………逆さま……。」

カイルが足を縄に取られ、ブラーンとぶら下がっているのを、竹やりの刺さったカナタ(落とし穴からでてきたらしい)が慌てて引っ張る。

「カナタッ!痛い………」

「うわーーーんっっっ!!!」

動転し過ぎているのか、カナタは縄を切ると言う発想をせずにカイルの身体をグイグイと引っ張り降ろそうとしている所に、次の罠が作動した。

 

ごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごっっっっっっ!!

 

「ぎゃーーーーっっ!!火炎槍っっっ!?」

 

「水攻めッッッ!?」

 

「木人の大軍!?」※木人=少林寺とか中国ものでよくでてくる木の人形v食い倒れ人形ではない♪(死)

 

「ぎゃーーーーーーーーーっっっっっ!!!芥子攻め〜〜〜〜っっっっ!!!!(泣)」

「…………」

カナタはどんどんと罠を作動させていき、吊るされたままのカイルはただそれを黙ってみている事しか出来なかった…………。

 

 

「はーはーーーーー。ようやく酒場の入口前ですっ…………」

「そうだね………」

全部の罠にかかり、おくすりもつきた頃、ようやく二人は酒場入口前に立っていた………。

カイルは無事だが、カナタは満身創痍と言った感じだ。

城の外も罠のおかげでものすごい事になっている………、シュウが見たならば即胃潰瘍で入院だろう程だ。

「―――入る…?」

「いえっ!ちょっとまってくださいっっ!!たしかここには!最後の罠があったはずですっっ!!!」

「?」

「最終兵器、『自爆装置』ですっっっ!!!」

ビシイッとカナタは言い切った………。

「なんでそんなの作ってるのっっ!!」

「自爆装置は男のロマンなんです〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッッッッ!!!」

ぶんぶんと頭と手を振り回しながらカナタは言葉を続ける、

「ほら、白い糸が見えるでしょう?あれ切らなきゃ大丈夫ですよっッ!!」

「そうだね……………」

確かにカナタの言う通り、扉の前には見え難いが糸が張られているようだ。教えられていれば、さほど引っ掛かりやすくものない罠だ。

しかし、カイルはイヤな予感を感じていた………。

まだ最後の爆弾は現われていないはずだ…………………………

 

「さあ!罠を跨いで――――」

「カナタぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!どこ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!?」

「「……………」」

聞き覚えのある、そして、今一番聞きたくないものの声が聞こえた………

 

「あーーーーーーーvvvカナタ見〜つけたーーーーーー!!!!!!!!」

 

 

――――――――――――どかん。

 

 

 

 

 

「ぼっちゃんvグレミオ特製シチューいっぱい食べて下さいね♪」

「うん。」

「もちろん、カナタ君たちもですよ?」

「「いっただいてま〜〜〜〜〜〜〜〜〜す。。。」」

 

結局、カイルは実家に帰る事は帰れたのだが…………。新たな本拠地建設の間中、問題の姉弟を預かる事になってしまっていた……………。

これは運命と言うものなのだろうか?

 

         〜終〜 城の修復費で、ほとんどの資金を使い果たしているのだろうな………