お風呂

 

「うわ〜・・・広いね--」

僕カイル=マクドールは、今『オレンジドラゴン』軍に来ている、

ついでに言うなら、お風呂場だった。

たしかに大理石でキレイだし、広いケド・・・

 

「なんか・・、オドロオドロしいね・・・」

「ああっ!今『のろい人形』片づけます!!」

「いや、僕も昔やったし、別にいいんだケド」

「そうだね、しかも一度もはずそうとしなかったしね」

横でルックがボソリと呟く。

「・・・・・。ところでカナタ、それなに?」

ルックをムシして、さっきから気になっていたカナタの前に浮かぶあひるさんを指差した。

「あ、コレですか?お風呂アイテム『あひるさん』で〜す」

無邪気にはしゃぐカナタ。

おもわずそれを見て僕は

「・・・いいなぁ」

「え?よかったらいりますか?」

スッと『あひるさん』をカナタは差し出す。

「え?いいの!?」

あわてて尋ね返す。

「はい!どうぞ!!」

ニコ------と笑ってカナタは言う

しばらく躊躇った後、

(やっぱり『あひるさん』の可愛さには勝てなかった)

「・・・ありがと」

ちょっとテレつつも僕はお礼を・・ ・・・って

「---------っっっ」

いきなりカナタが湯舟に突っ伏した・・・

鼻血を出して

「カナタ!?大丈夫!?」

僕は急いでカナタを助け起こす

『カイルさん・・・可愛すぎ・・』

そんな事をカナタは考えていた。

「湯当たりかな?ルックも手伝ってよ。」

「気付いてないみたいだね・・」

「?」

どういうイミだろ?まあ手伝ってくれてるみたいだしいいか、

「なに?なに?そっちで何かあったの?」

女風呂の方からナナミの声が響く

「カナタが鼻血を出して・・・」

「あ、」

ルックが珍しく声をあげた。

「ええっ!?カナタが!?カナタ〜今お姉ちゃんが側に行ってあげるからね!!」

どか--んっ

ガシャッ

『うわっナナミそんなかっこで!!』

ナニカがこっちに向かってくる・・・

「えっと・・・」

あまりに唐突な行動に僕は唖然となる。

(まだこの姉弟の事がよくわからない)

面倒に巻き込まれそうだとルックは素早く退散した

「カナタ-------!!大丈夫------!?」

「おうっカナタ!!オレの風呂になにすんでい!!」

ナナミやらテツさんやらが乱入してきて大変な騒動となった。

「坊ちゃん、最近お風呂に持って入ってるあひるさん、どうしたんですか?」

「カナタにもらった------」

その後カナタからもらった『あひるさん』は、僕のかなりのお気に入りとなった。

 

 

カゼ

 

「----以上が今の戦況で・・、どうかしましたか、カナタさん?」   

ガタンッ

アップルが地図に向かって、説明し終わったと同時にカナタが立ち上がった。

「カイルさん迎えに行かなきゃ!!」

ズルッとこける一同

「お前いきなりそれか、」

あきれたようにビクトールが言う。

「よ〜し!カナタさっそく出発しよ〜」

「・・・・おい、カナタお前、顏赤くないか?」

フリックがカナタを覗き込んだ瞬間   

 

バターンッッ

 

いきなり倒れたカナタ

「カナタッ」

「カナタ〜〜大丈夫ッッ〜!?」

「おいっ、誰かホウアン先生呼んでこい!!」

一気に場内が慌ただしくなる

「大丈夫?カナタお姉ちゃん心配したよ〜」

気がついたカナタの枕元で、心配げに何人か仲間が立っていた。

「これくらいで、倒れるなんて案外弱いんだね」

心配するナナミやら、ルック(暇つぶしだと思われる)やらが、あれこれ話し出す。

「えへへ、ナナミ特製おじや、作ってくるね〜」

パタパタとナナミは去っていく、

その後あわれ、ハイヨーのレストランはナナミによって、壊滅状態になったという。

「ところで、何か欲しい物あるか?」

「おい、フリックそんなこと聞くと・・」

「カイルさん。」

間髪置かずに、カナタは言った。

『やっぱり』全員が心の中で呟く。

「他の物じゃ・・」

「ダメッ!カイルさんにお見舞いに来てほしいーーー!!」

布団でバタバタと暴れ始めたカナタにルックが切れた

「うるさいよ、『我が真なる風の…』」

「わー!ルックやめろーーー!!」

ビクトールとフリックが止めに入ってまたもや大混乱に陥る。

「------で、結局君が来たの?」

「まあね・・・」

カイルはベットに腰掛けて、その話の一部始終を聞いた

「う〜んと・・。」

「坊ちゃん…」

『やめとこうかな〜』と言いかけたカイルに、 グレミオの強い視線がささる。

「・・・心配だし行くよ・・」

「そう、お人好しだね」

フウッと息をつくルック。

その後ろでグレミオが、ニッコリ笑ってかごを差し出す、

「はい、これお見舞い用の果物です」

ルックのテレポートによって、カイルは『ぼっちゃんラブ城』(いやなネーミング)に来たが・・・。

「カイルさーーーーん。お見舞いに来てくれたんですね!?」

「・・・うん、それより大丈夫?」

「はい!全然平気です!」

「------なんか、体中に包帯巻いてるけど・・」

カイルはふと思った事を口に出して尋ねる。

「・・・じゃあ、僕は失礼するよ」

そういってルックは部屋から出ていく、

「・・・・・」

「カイルさん?どうかしましたか?」

「いや・・、別に・・・」

「ところで、そのかごなんですか?」

キラキラと瞳を輝かせるカナタに、ほほえましいなと思いつつ カイルは、にこと笑ってそれを手渡す。

「グレミオからのお見舞い、」

「わー、ありがとうございますー!!・・・カイルさん。」

「・・・なに?」

カナタのおねだり攻撃だ。

------以前からこれでひどい目にあって いるカイルは少し身をかたくする。

「この、りんご剥いて下さい。」

「------、(なんだそんな事か)いいよ」

カイルは笑ってりんごを受け取った。

棚に置かれていた果物ナイフで、器用にりんごを剥いていく

「わーい。うれしいな〜」

「そう?」

少し照れつつも、カイルはりんごに意識を集中しつつ答える。

「僕に『あ〜ん。』って言って食べさせて下さいね。」   

ドシュッ

その言葉に気が抜けてカイルは手を滑らせた

「------っっ」

「カ、カイルさん!大丈夫ですか!?」

手袋をはめていなかったが、たいして切れていない。

「だ、だいじょう-----・・・」

「えいっ」   

パクッ

いきなりカナタはカイルの指を、口に含む。

「カっ、カナタっ!!なにしてっ?」

「消毒です〜」

「だッ大丈夫だからっっ」

ぐい〜〜っとカナタの顔を押し退ける

「本当ですか?」

「うん、本当、本当!」

焦りつつもカイルは言いつのった。

「ちぇ〜〜〜」

残念そうな顔をしつつ、カナタは掴んでいた腕を放す。

そして、思い直したようにに〜っこり笑い・・・

「じゃあ、『あ〜ん。』」

口を大きく開いたカナタに、カイルはあきれて、 皮の剥きかけのりんごを、丸ごと突っ込んでやる。

『元気そうだし大丈夫かな?』と思い、帰ろうと思ったカイルだったが………

『ナナミ特製おじや』なるものを食べて意識不明になってしまったカナタに、 手を掴まれてしまい帰る事が出来なくなってしまった。                                                      

後日

「カイルさ〜んっ!!僕のカゼ移ったってホントですか〜?」

「あたし、カイルさんに『おじや』作りました〜!!」

「カイル、カゼたって?」

「食べたい物あるか?」

「・・・・・」

みんなせめて、静かにしてほしい・・・

カイルはみごとに、カゼを移され本拠地で寝込むことになったそうだ。                              END          

 

看護

「カイルさ〜んっっ!!大変なんですーーーー!!」

「どうしたの?カナタ」

「とにかく本拠地に来て下さい!!」

せっかくカゼが治って、自分の家に戻って来ていたカイルはまたもやカナタによって、本拠地へと連れ出される。

「坊ちゃん、夕飯までには・・」

「ムリです!」

カナタは即答して駆け出す もちろん、カイルを連れて・・・。

「-------で、どうしたの?」

「はい、でもその前に、」

そこでカナタは一息おく。

「何も言わずにこの服を着てくださ〜いっっ!」

どこからか取り出したソレは、 いわゆる、ナース服(しかもミニスカート)

「帰るッッ」

カイルはすぐに踵をかえそうとする、が----

「カイルさんッ待ってくださ〜いっっ!これには訳があるんですっ!」

ガシッとしがみつかれ、涙目でウルウルされればカイルでなくても断れない

「---------訳って?」

予想通り、カイルは抵抗をやめる

「はいっ!実は。」

カナタはカイルに気付かれないようにニヤリと笑った。

「え?みんなカゼで倒れたの?」

「はい、僕達のせいだと思うんです・・」

(hっ)

「で、でもだからって、なんでナース服なの?」

「シーナさんが、『どうせ看護してくれるなら可愛い女の子がいいな』って言ってましたから・・だからカイルさ〜んっ」

「・・・わかった着るよ」

「わーいっ!!」

 

 

「カイルさんっかわいい〜。」

「・・・・・」

カイルはもう泣きたい気分だった。

「じゃあ、みんなの看護に回りましょ〜♪」

「・・カナタはなんで着ないの?」

「ノーコメントです。」

「カイル、お前・・・」

「なにも言わないで、」

「いやよく似合ってるぜ(笑)」

一人元気なビクトールは、不機嫌な前リーダーに睨み付けられる。

「ところでカナタ、シュウ元師からの伝言だぜ」

それを気にした素振りもなく、カナタへと視線を移す

「えっ?なんですか」

「もうむちゃな特訓はやめて下さいだとよ、」

「『むちゃな特訓』?」

「ああ、」

「ビクトールさんっ!!!」

「こいつが、『みんなカゼを引かないように〜』ってこの寒い中、寒中水泳やらしたり、乾布摩擦させたりな、」

わははとビクトールは笑ってどこかへ去ってゆく

「・・・カナタ、」

「はっはい!」

「僕帰るからね。」

に〜っこり笑うカイル、ただしその目は笑っていなかった。

「ええっっ!そんなっ!!」

そしてカナタは、カイルに『一週間無視の刑』にされたそうだ・・・

                             おわる