怪談

 

 

み〜んみんみんみ〜

蝉の鳴き声が城中に響いている。

「…暑いですよね、」

カナタは上着を脱いだ状態で、カイルにくっついていた。

「そうだね…」

そう思うのならくっつかなきゃいいのに、と思いつつもカイルはその言葉に同意を示す。

「何か涼しくなる事〜」

「怪談とか…」

カイルは何となく(自分の趣味で)そう言ってみる。

「それです!!さっそくみんなを集めて、怪談大会です!!」

しかしカナタはガバッと起き上がると、部屋から飛び出していった。

「…『のろい人形』いるかな〜?」

そしてカイルも『のろい人形』を持ってくるために部屋から抜け出す。

 

「---と言う訳で、怪談大会です!!!」

広間には、カナタと目があったために連れてこられた不幸なメンバー達が集められていた。

飾り付けに『のろい人形』や『らくがき』が飾られ、おどろおどろしい雰囲気を

醸し出していた。

「なんで僕がこんな事を…」

「カナタ〜!お姉ちゃんがんばるわよ!!」

一部の者ははりきっているが、ほとんどの者はやる気が無さそうである。

「あっそうだ!一番つまんない話した人は、僕の黒魔術の生け贄になってもらうね♪」

「お前いつの間にそんな事をッ!!?」

「ふっ、最近ライバル多いんですよね〜」

何のかは聞かないでおこうと思うメンバー達であった。

「ねえ、カナタ」

「はいvなんですかvvカイルさんv」

いきなり態度の変わったカナタだった。

「たしか、怖い話好きな人いたよね?」

「シドですか?本気で怖そうなのでチャコを犠牲にして来ないように言っときましたv」

おいおい。

「それはともかく、始めましょう!!」

カナタはそう言うと蝋燭に火を灯して、カイルの隣を陣取った。

「あ、お姉ちゃんこっち取った〜vvv」

ナナミもそう言うとカナタとは反対側に座る

「♪♪♪」

「vvvvv」

「どうでもいいんだが、この蝋燭どうすんだ?」

ビクトールが手に持っている何本かの蝋燭をふる。

「百物語らしいよ、」

辺りに灯された蝋燭は丁度百本ある。

 

「僕からやるねv」

怪談をやると言うよりは、笑い話をやると言った表情でカナタは話しはじめた。

「夜中にね、なんか身体が重くなった時があったんだ、」

ぼうっと蝋燭を顔に近づけ、雰囲気を出す

「それでなんだろうと思って目を開けたら…」

そこで言葉を区切り、口元に指を持ってゆく

「ど、どうなったの?」

ナナミがこわごわと身体を乗り出す

「シュウがのっかってた。」

し〜ん

「そ、それはあるイミ怖いな…」

「見回ってて、転けたんじゃねえのか?」

「あははvちゃんと殺したけどねvv」

「カナタ…自分の軍師にそんな事していいの?」

カイルがツッコミを入れるが、聞いちゃいなかった。

「じゃあ、次はお姉ちゃんね!!」

「え?ナナミも怖い話知ってるの?」

「ん〜どっちかって言うと面白い話よ〜」

「へー。」

「ちょっと前に一緒に寝てた時あったでしょ?」

「うん」

「その時にね、家具とか色々飛び回ってたのよ」

「それってポルターガイストじゃ…」

かなり怖い話である。が、本人はその事に気づいていないので放っておこう。

「つ、次!!次に行こうぜ、サスケなんかどうだ?」

「オ、オレ?…この間、廊下歩いてたら妙な鳴き声が…」

「それ、ブライトだ…ごめん。」

「じゃ、じゃあ修練所で真夜中戦う音が…」

「それ私です〜。」

ワカバが手をパタパタとふる。

「なんか、あんまり怖くないですね〜」

ぺた〜とカイルにくっつきつつ言うカナタ。

その言葉(?)にサスケはムッとする。そして閃いたように言葉を繋ぐ。

「恐怖!戦闘中なのに、色恋にうつつを抜かす軍主ってのはどうだ?」

「…なにか言い残す事ある?」

ちゃきっとトンファーを構えた、それをカイルに軽く止められる。

「ちぇっ、じゃあ次ルックとか?」

「君の後ろにいるヤツにでも聞けば?」

と言って黙りこくる

しかし、カナタの後ろには誰もいなかった。…目に見えるものは、

「ぎゃ〜〜〜〜っどう言うイミなんですかーーーー!?」

「カイルさんっ!怖い〜〜〜っ!!」

「あっ、ナナミずるいッ!僕も!!」

2人掛かりで抱き着かれ、息も絶え絶えになったカイルだ。

 

この後、ニナに追い掛けられたフリックの恐怖体験やら、酒場に出現する熊の話やらと

いった話で99まで蝋燭の火が消えた。

「最後はカイルさんですよ、」

「え、うん。う〜んと、ここの城に墓場あるよね?あそこにいった時の話なんだけど、」

「なんでそんなとこに…」

「フリックさんうるさいですよ、」

ベキッとカナタはフリックを叩き倒す。

「僕が、墓の前を通りかかったら何かぼうっと光るものがあってね、なんだろうってそっち

に行ってみたら髑髏が浮かんでたんだ。はいお終い、」

最後の蝋燭をふっと吹き消す

案外呆気無い話だと思った。が、

「で、その髑髏どうしたんですか?」

「オレ知ってるぜ、一撃で倒したのを」

シーナが首をっつ込んでくる、

「うん、それで今日怪談やるんだから…」

「「「ら?」」」

「上に吊るしてみたんだ、」

たしかに、蝋燭を全て吹き消したはずなのに広間はぼんやりと明るかった。

カイルが指差す方向を見てみると、

----髑髏が浮かんでいた。

「ぎゃーーーーーーー!!!!」

「うわあっ!?」

悲鳴が大量に上がる。

「そういえば、百物語って全部言い終わると何かが起こるっていうよね?」

ぴたっ

その言葉に騒ぎがおさまる。さすがはリーダーといった所であるが、

この場合逆効果だろう。

「カナタ、カナタ、ナニカって…なに?」

ナナミが恐怖に顔を引きつらせつつ、尋ねる。

「さあ?」

どんっどんっっっ

ドアが激しく叩かれる、こんな時でなければなんとも思わなかっただろうが

その場にいた全てのもの(一部を除く)を恐怖に陥れた。

「ぎゃ〜〜〜〜〜!!!」

「ルック!お祓いお祓い!!!」

「僕はぼうずじゃないよ、ガンテツにでも頼めば?」

クールにルックは言い返した

「たしか、おばけは光に弱いって聞いた事あるわよ!!」

「わ、わかった!!」

「ちょっ、まって…」

カイルは慌てて止めようとするが、

バターン

扉が開かれる、

「いったいこんな時間に誰が…」

そこにいたのは、シュウだったのだがもう攻撃は放たれていた。

「『輝く光』ーーーーーー!!!」

「お姉ちゃんも手伝うわカナタ!!『破魔』!!!」

「うわわわわぁぁぁーーーーーー!?」

何もわからぬ間にシュウは戦闘不能に陥った。

 

そしてこの後、シュウの小言を全員でうけた事はいうまでもない。