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ふぇーーーーふぇ〜〜〜〜〜〜〜っっ

 

真夜中、同盟軍本拠地リーダー自室。

そこから何故か、猫が泣くような声が城中に響き渡っていた…………。

「ね、眠いです…(汗)」

「………」

カナタが虚ろな目で、身体を起こしそう呟いた。そして、その一瞬後にはベットに沈む…。

カイルはと言うと、泣きじゃくる赤ん坊を再び寝かし付ける為にあやしている最中だ。

 

数週間たった現在、同盟軍本拠地には、1人の赤ん坊が世話されていた……………しかもこの軍のリーダー(+姉)の手によって――――――――

実質的に世話をしているのは、カイルかもしれないが…(というか、その通り)

つまり、夜泣きの被害は、実質的に全てカイルが背負っていたのだ。

「………(眠い…)」

 

 

 

でん………ででん………でん…でででん

 

「…………カナタ殿っ…なんですかな?その背中のモノはっ…?」

怒りに震える声で、シュウが尋ねた。その手には、書類が握られていたのだが力を込め過ぎて破れてしまっている。

「赤ん坊。」

「そんな事は知っておりますっ!(怒)」

「じゃあ聞くな〜」

それだけ言うと、カナタは再びでんでん太鼓を鳴らす。でん、ででん、とテンポ良く鳴らせている。

 

結局、あの赤ん坊は女の子であった。

ゆえにカナタにも一応は可愛がられているのだ。

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ(血管切れそう)カイル殿は!?」

「育児疲れで今寝てる。」

ででん、ででん、

カナタが、太鼓を鳴らすとおぶわれている赤ん坊のからだが揺れた。首も、かっくんかっくんと。

「なあ、カナタ…(汗)」

フリックが恐る恐る声をかける。嫌な予感がしたのだろう…………。

「その赤ん坊……首、座ってるのか?」

 

どきどきと緊張の走る一瞬後。

 

 

「知りません。」

 

 

かくん、と赤ん坊の首が曲がった。

 

「「「ぎゃーーーーーーーーーー!!!!!早く下ろせーーーーーーーーっっっっっ!!!!!!(汗)」」」

 

 

「ん…」

泥のような微睡みの中、カイルは寝返りを打つ…。

暫くは起きてくる気配は全くないようだ。

 

 

ひじの辺りに頭をのせ、手でしっかりと身体を支える。

頭は胸の辺りに寄せると安心する。

「う〜〜〜ん…(汗)」

その間。背にまわした手でぽんぽんと優しく叩いてやる。

「むつかしいわね〜〜〜(汗)」

どこか緊張を孕んだ、堅い手付きでカナタは赤ん坊を抱いていた。無論、赤ん坊の方はあまり機嫌が良い様だとは言えない。

少年は、会議をエスケープする事に決めたのだった。…………追い出されたとも言えるが、

「だよね〜〜〜(汗)ナナミパス!」

「お姉ちゃんに任せなさいv」

早々に諦めると、カナタはナナミに赤ん坊を手渡す。

途端。

 

―――――――ふぁあああぁっ…ふぇああ…!

「あれあれ?(汗)」

「な、泣いちゃった〜」

あまりの仕打ちに堪えかねたのか、泣き出す赤ん坊。ついでに、パニックに陥る二人。

「泣き止んでーーーーー!!」

「ガラガラです〜〜〜〜!!」

ふぇにゃぁ…ふぁあああああ!

 

 

 

 

 

 

「見回り報告です」

「………………何か、変わった事はなかったか……?」

今にも倒れそうな顔色の軍師殿に、兵士は同情するが、ともかく報告が先だった。

「近頃、城の周りを何度もうろつく者が…」

「―――スパイか?」

サッと、顔色を変えシュウが問いかける。しかし、返答はまたシュウの胃にダメージを与えるものだった…………。

「いえ…どちらかといえば、カナタ様の起こす騒動を見学しにきている街の者の1人かと…………(汗)」

「くうううううう!(汗)」

胃を抱えて、悶え苦しむシュウであった。南無南無…

 

 

「いい子、いい子…」

薄暗くなった城内。皆で、夜のお散歩しましょう!と言うカナタとナナミの発案によりカイルは赤ん坊を抱いて二人が用意して出てくるのを待っていた。

赤ん坊は寒くないようにという配慮から、ピンク色の柔らかな毛布にくるまれている。カイルの腕のなかで不鮮明な目をぱちくりと瞬かせ、僅かに、しかし絶え間なく腕を動かしていた。小さな手が可愛らしくカイルは楽しそうに、それを見ている。

ガサッ…

「?」

僅かに、茂みのなかで音がした。獣かとも思うような音だったが、気配は人のものだとカイルは気付いた。

「誰…?」

殺気はない。

そう判断するが、隠れている者は出てこようとはしなかった。

カイルは、一歩踏み出す。

 

「あの…」

「!」

そこにいたのは、20代ぐらいの女性だった。姿を見せたカイルに驚いた表情を見せていたが、逃げ出そうとする様子はなくどうしようかと悩んでいるようだ。

カイルが再び問いかけようとした時。

 

「「カイルさ〜〜〜〜〜〜〜んvvv」」

 

「あ、」

不意に女は、身を翻してかけていってしまった。

「カイルさん?」

「何かあったんですか〜?」

「うん…」

カイルは考え込むような素振りを見せると、腕のなかの赤ん坊とカナタ達、そして駆けていった女とを見比べる…………

 

少し悩んだ後、カイルは口を開いた。

 

「カナタ、ナナミちゃん…」

「はい?」

「何なになんですか〜?」

「言わなくちゃいけない事が…」

腕のなかの赤ん坊が、カイルの服を掴んだ――――――

 

 

 

 

 

 

「――――?」

いつものように、女は忍び込んだのだがその日は様子がおかしかった。

 

――――――赤ん坊が1人で置かれている。

 

そんな事は、今まで全くなかったのに。

この数週間、誰かしら必ず側に付いていたのだ。例え、少し危ない事が起ころうとも、注意し育んでいてくれた事が見ていてもわかっていた。

女は悩んだ。

今日、訪れる事も悩んだのだった。

――――――不審に思われていないだろうか?

あの少年(少女?)に姿を見られたのに、

それでも、堪え切れなかったのだ。

…数週間。もう大分、大きくなっていた……………

 

考え込むように俯いていた女が、急に顔をあげた。

 

「!」

 

――――――狼!?

 

大きな白い獣が、赤ん坊の側まで近寄ってきていた。

「あ…!」

近付き、口を大きく開く。

鋭い牙が見えた。

 

「いやあああああ!やめてぇえええええええええええええ!!!!!」

 

女は駆け出し、赤ん坊の上に覆いかぶさった。

そう、――――――我が子の上に。

 

「貴方が、キッドナップ犯ですねっ!」

「違うだろっ!それになんで、英語だっ!?(汗)」

ガサリと音を立てて、草むらに隠れていたカナタと数人のメンバー達がでてくる。

「あ…」

多きく目を見開く女性。

カイルは、シロの頭を撫でていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり、あの赤ん坊の母親だったようです。」

「「…………」」

「生活に困って、子供を捨て、それでも気になって覗きにきていたようで…」

「「…………」」

「聞いているのですかッ!?」

シュウの雷を落とされる二人だが、全く聞いていないようだ。

他のメンバー達も困った顔をしていた。

赤ん坊を返す事になった時、ごねてごねてごねまくったのだ。そして、それが今なお尾をひいている。

「せっかく兄弟がもう1人できたのに〜〜〜っ…」

「可愛かったのに〜…」

「ナナミちゃん…カナタ…」

カイルが声をかける。他の者も、カイルが適任だと思ったのか、口を挟まず黙って成りゆきを見ていた。

しかし、立ち直りの早さに駆けてはカナタの横に出る者はなく―――――――

 

「いいです!決めました!!――――ナナミ!いい案があるよっ!」

「何よ〜…?」

「?(汗)」←嫌な予感

すっくと少年は立ち上がり、宣言する。

 

「カイルさんに僕の子供産んでもらいます!!」

「!?(汗)」

「「「「は!?(汗)」」」」

 

「カナタ!それいい案よ!カナタとカイルさんの赤ちゃん絶対可愛いわ!!」

「カイルさん!さあ!産んで下さいーーーー!!」>抱き着き

「!!!!!(汗)」

「いや、カナタ無理だ!!それは無理だっ!!」

「幾らカイルでも、それは無理じゃないのかッ!?」

「できます!!成せば成るです!!」

「あれれ?それじゃあたし叔母ちゃんになっちゃうの!?」

「…………(汗汗汗)」

 

結局、城にはいつもの平和(嘘)が戻ったと言う…。

一部は不幸なままだが………………

「…………!……!……!」←倒れて痙攣中なシュウ。

 

 

 

お決まりネタで終わりましょう。

後一回だけ続きます。(番外編)