夫婦喧嘩は犬も喰わずに跨いで通る!

 

 

―――――――ガシャーーーンッ!ドゴオッ!!バキィ!メリッッッ!!メキメキメキメキメキ………

 

 

ありとあらゆる破壊音が同盟軍リーダーカナタの自室から響いて来る………。

 

「なっなんだ!?」

あまりの騒々しさに、側を通りかかったフリックは止せばいいものを、ついつい生来の人の善さから部屋を覗き込んでしまう。

たしか、カイルがいるはずなのになんでこんな騒動がっ!?そう考えたフリックだったが、そこで思考は一旦中断された。

なぜならば……………

 

「カナターーーーーーーッッッ!!!」

 

ゴゲンッ!

 

カイルが放った椅子がフリックの顔面に直撃したからだ…………。

 

「なっ……?」

ズルリと椅子が顔から離れ、床へと落ちる。そして、目の前ではとんでもない光景が繰り広げられていることがわかった。

 

「今回僕、悪くないですーー!!」

「っっっ!!ちょっとは反省してッ!!」

 

ガッシャーーーーーーーン

 

怒声とともにカイルが投げ付けた燭台をカナタが避け、窓ガラスが破壊される…………

部屋中至る所に破壊の痕跡を残し、床にはへし折れた棍とトンファーが転がっている。

どうやら激しい攻防戦によって壊れたらしい、後で修理が必要だろう。

「なっ何が起きてるんだ……?」

フリックが訳が分からずに困惑している間にも激闘は続く…………。

 

「愛情表現の一種じゃないですかーーーーーッッッッッ!!!!」

「絶対に違うッ!」

 

業を煮やしたカイルが机を掴み、思いっきりぶん投げた。

「ちょ――――まてっ!お前らっ……」

 

ゴインッ

 

「「フリック(さん)」」

思いっきり巻き添えを喰らい、首が変な方向にまがってしまってはいるが、フリックはなんとか口を開いく。

 

「…ま、まずは話し合え………(オレの命とシュウの髪と城の平和のために…)」

 

 

 

 

「――――で、何があったんだ?」

今のカイルをここまで怒らせるなんて、という言葉を飲み込んで、フリックは尋ねる。

即席で修理した椅子に腰掛けての対談だ。

「………」

「僕悪くないです。」

フリックの問いにカナタが答えはするものの、更に状況が悪くなるばかりだ。その証拠に辺りに身震いする程の殺意が満ちる。

どう見ても『喧嘩』中なのだろう。

どちらかが一方的に相手を怒っているのはよくあることだが、(特にカイルが怒りカナタが謝ると言う図式が多い)両方ともが意地をはっているのはかなり珍しい。

無論、カナタがカイルにたいして攻撃をすることはないのだろうが、ここまで戦いが長引いているのは危険だろう………色々。

フリックはやはり係わるべきじゃなかった…と後悔し始めた……。死ぬ程身の危険を感じる。

「だ、だから何をしたんだ?」

なんとかカナタにそう尋ねることが出来たが、そのことをフリックは永遠に後悔することになった………。

 

「えー?ここ1週間くらい毎日(コレ以上は発禁用語となりますので、どうか皆様の御想像にお任せいたします。御容赦下さい。)しただけで、今日は公衆の面 前で――」

――――ブワキィッッ!!!

 

カイルの渾身の一撃がカナタにヒットした。ちなみに、折れた棍(しかも尖った方で)を使ったようだ………。

フリックは顔を青ざめ、慌てて退避しようとするがすでに時は遅く、第にラウンド火蓋は切って落とされたのだ。

カイルは花も綻ぶような微笑みを浮かべて――ついでに青筋も――口を開いた。

 

「カナタ、一回地獄見てくる?」

「だから、愛情表現じゃないですかーーーーーーーーーッッ!!」

 

ソウルイーターと輝く盾の紋章が互いに発動しあう………。

それっきりフリック氏の意識は無くなった……………。

 

 

 

 

「あれーーーー?なんでなんで???なんかお家いっぱい壊れてるーーー?」

ちょうど騒動の最中、レオナと一緒に出かけていたナナミは、ほぼ全壊状態の本拠地の姿を見て、?マークを大量 に発生させる。

「また城の修繕費が………っ」

「あーシュウさんまた倒れてるー。身体弱いわよねーーー。」

目の前の惨状に胃が痛くなって、その場に倒れこんでいるシュウを見つつ、ナナミがてくてく歩いていくと、グにャと足下に妙な感触を感じた。

きょとんとしてナナミは自分の足の下に転がる物体を見る。

 

――――まきまき包帯のミイラ男?

 

「きゃーーーーきゃーーーー!!ミイラよーーミイラ男よーーー!!」

きゃーきゃーとさわぎながらも、風月百花棍をとりだし、ビシッと戦闘体勢にはいるナナミだ。

「なっナナミ……オレだっ………フリック………(汗)」

そのミイラ男こと、変わり果てた姿のフリック氏はコレ以上のダメージは即、死に繋がると判断し虫の息でナナミにそう告げた。

「え?フリックさん?」

今まさに武器を降り下ろそうとしている所だった。―――――セーフ。

「フリックさんって、ミイラ男だったの?」

「……………」

もはや何も言う気力のないフリックだった…。

そしてナナミはふと、視界に可愛い弟の姿とそのお嫁さん(間違った認識)の姿を捉えた。

 

「ひーーーんっっけっこう染みますーーーーーーっっ!」

「あっごめん………大丈夫?」

「大丈夫ですーーーー」

 

カイルに傷の手当てを受け嬉しそうなカナタの姿、2人の周りにはのどかな雰囲気が満ちている………。

 

「うんv今日も仲良しさんよね!さすが私の弟だわ!!」

「……………」

この言葉にもフリックはコメントを控え、ただ澄み渡った空を眺めた…………。

 

 

世の中、知らない者は幸せでいられると言う話。

どっぴんしゃらりんのぷう。(死)

 

昔話風に終える