犬の瞳は1000万ボルト
「くぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!(怒)」
ギラギラと殺気の籠った瞳でを睨み付ける少年。そして、その視線の先には小犬がいた。(くわしくは、キリリク置き場の『犬の瞳は100万ボルト』を>死)
少しばかり成長した、茶色の小犬は『ここあ』と名付けられとても可愛がられていた。(カイルに)
今ここあは、大きなくりくりとした人懐っこい瞳は閉じられ、規則的に小さな身体が上下している。
そう、小犬は寝ていた。寝ているのは問題でない。寝ている場所が問題なだけだ。
カイルの腕の中。
「犬ッ!犬ッッッッッ!犬が僕とカイルさんの仲を引き裂くッッッッ!!」
ぎゃー!と、血の涙を流すような叫びをあげカナタは、地面の上でのたうちまわる。
「犬鍋ッ犬鍋ッッッ!犬鍋犬鍋ーーー!(怒)」
ぎりぎりと歯を噛みならすカナタの背後に、もう一匹嫉妬の塊の存在があった。
「ムッ……ムム〜〜〜〜っ!!ムムムムムーーーーーーーーー!(泣)」
ムクムクだった。ムクムクの言っている事は訳せないが、大体はわかる事だろう。
『憎いッ!(怒)』
二匹(?)の意志は一致した。
「焼き入れけってーですーーーーーーーーー!!!(怒)」
「ムム〜!(怒)」
「きゅぅ?!」
物凄いスピードでここあは強奪されていった………。
チチチチチチチチチ…
「ん……」
のどかな鳥の鳴き声の中、カイルは腕の中の温もりが消えた事に気付き目を開いた。
「ここあ………?」
小犬の姿が見えない事に、カイルは首を傾げ辺りを見回すが、全く見当たらない。
「?」
ちちちちちち…
鳥だけがのどかに鳴いていた……。
「犬ッ!ちゃんと聞くんですよ!!?」
「くぅん?」
ここあは少しばかり垂れた耳を、可愛く片一方あげてみせる。特に、言っている事を理解している訳ではないらしい。次の瞬間には、ムクムクにじゃれかかっているのがその証拠だろう。
「ムムーーー!(汗)」
「わぅv」
「てえーー!そんな根性でっそんな根性でカイルさんに好かれると………〜〜〜〜」
好かれる。
その時カナタは思った。
「ううっ……どちくしょうですっっ…!もう何が悪いんだか、悪くないんだかっっ………(泣)」
より、甘えるもの。それにカイルは弱かった。
うちひしがれたポーズで、地面を連打する少年だ。
「なんで、こんなにライバルまみれなんですくわあああああああッッッ!!」
「ムムー!」
一応ムクムクの言葉を訳す、『それはこっちのセリフだー!』。
「きゅう、」
ここあの声を聞いてカナタはようやく我に返る。
「はっ!そうです!説教です!説教!別名焼き入れですっっ!!」
「ムー!ムムムムムーーーー!」
早速、ムクムクが先陣を切る。
「ムーーームムムム、ムームムムムムーーーーーーーーーーー!」
「おおっ!そこまで言うなんてッ!やるな、ムクムク………!」
「ムームームーーーー!ム〜〜〜〜ムムッ!」
「あ!それは僕も言いたかった!」
何やら、騒がしい3匹(?)を通行人は首を傾げて歩いてゆく。
それもそのはずだ…………どうみても、じゃれてるようにしか見えないのだから。
「アイツら何やってんだ…?」
「仲良き事は美しきかなと言うではありませんか」
我関せずと歩き去るもの、微笑ましいと微笑むもの、彼等はムササビ語などわかるはずもなく微笑ましい(?)戯れに『焼き入れ』という感想は持たなかった…………。
〜1時間後〜
「はーーーーはーーーーー…!」
「ム〜…ムム〜〜〜…」
「くぅ?」
3匹の頭の上をモンシロチョウが通過してゆく…………。
「僕のカイルさんへの愛の深さを思い知ったかーー!」
たしかに、咽が擦れる程熱弁を振るう愛は凄いと思うが、犬相手にそこまで本気になられる愛は嫌だ。
「ムムムーーーーーー!」
「くぅん。」
わかっていないようだ。
しかし、その時―――――――
カサ、
「「「!」」」
わずかに草を踏み分ける音。
それに3匹は即座に反応を示した。
「カイルさーーーーーーーーん!!!!!!!」
「ムム〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜vvvvv」
「くぅ〜んv」
現れたカイルの姿にマッハで体当たりをかました……。
「………。(重いかも……>汗)」
「くぅんv」
ここあのみは、倒れたカイルの(上にのしかからずに)前でくるんと丸まったしっぽを嬉しそうに振っている。
「みんなで遊んでたの…?」
「はいっvそうですーーーーーー!!」
「ムム〜v」
………。
何はともあれ。
カナタ達の返答にカイルは『仲が良い』と結論付け、ほんわかとした笑みを浮かべた。
「はうっ!(カイルさん可愛いですっ!!)」
「ムム〜!」
カイルの上でうっとりと見蕩れる。が、その時!
ぺろっ
「わ、くすぐったい…っ」
ここあが、カイルの頬を舐めた。
しかも、カイルの反応が嬉しそうだった。
「「!!!!!!」」
「ぬお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!(怒)」
「ムム〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!(怒)」
再びキレたカナタとムクムクが暴れ始める………………………。
―――――――まだまだ、カイルの苦労は続きそうだった………。