VS ムササビ戦

 

『ムササビ討伐隊』

そんな旗印がかかげられ、同盟軍メンバー達は、武装した大量のムササビ達(この辺り、全てのムササビが集まっている)の前で立ちすくんでいた………。

 

「なッなんでこんな事になっているんだ!?」

「それは僕から説明します!」

いや〜な汗を流し、呟く兵士Aに、アミー武装なカナタがピシッと言い放つ。(全身にカモフラージュ用の草木をつけ、顔にはペイントまでしているのだ。>軍人(間違っている)のつもりらしい。)

「話せば長くなりますが……」

前置きを置き、カナタは事の始まりを話し始めた。

 

午前中、僕とカイルさんはいつものようにいちゃついて(?)いたんです……。

 

 

「カイルさ〜〜〜〜んvvv」

「…………。」

すり付いてくるカナタに、カイルは少し困っているようだが本気では嫌がっていなかった。

ほっぺにちゅーーっ!vまで行われ、(カナタと城内のメンバー達にとっては)平和な時間が流れていた………………が、その平和を脅かす茶色い毛玉 が現れたのだ。

 

「ムムーーーーーv」

「あっvムクムク……」

今まさに、カナタが抱き着こうとした瞬間、カイルは窓から現れたムクムクに、自ら抱き着きに行ったのだった…………。

「ふわふわ…v」

「ムムムーーーーvvv」

スリスリとカイルに頬擦りをされ、ムクムクは嬉しそうな声を出す、そしてカナタの視線に気が付くと、更にカイルの頬にすり付く……。

―――――その時、カナタは思った。

 

コイツは敵だっ………!

 

暗い表情の中で、瞳だけがギラリと光っている。

 

しかし、カナタにはわかっていた…………どうすればカイルが自分の方を振り向いていくれるかという事を………………。

ただ、頭ではわかっていても、心がそれを裏切って殺気をみなぎらせるのだ…それがいつもの敗因だとカナタは心の中で呟き、しばらく深呼吸を繰り返してカイルに近づく。

「カイルさん……」

「? どうしたの…カナタ?」

「僕と遊んでくれないんですか……?」

うるうる…

犬と遊び、帰る時…………その犬の瞳に堪えられるだろうか…『もう遊んでくれないの?もう帰っちゃうの?』という寂し気な瞳に……………そして、それまで楽し気に降られていたしっぽが垂れ下がっているのだ……………。

見捨てられるであろうか?―――否。見捨てられまい。

 

――――――――――作戦は効を制し、カナタは抱き着いた肩ごしにムクムクに『フフン』と嘲笑を見せる。

―――――その時ムクムクは思った。

 

コイツは敵だっ………!

 

と。

バチバチと火花を散らし、そして………………。

 

〜回想終了〜

 

「そして、僕はムクムクと大げんかをし、今に至るという訳です、」

質問のある人ーーー。とカナタは呑気に手をあげる。

「はい!何故我々が巻き込まれているのでしょうかっ!?」

「僕が『オレンジドラゴン』軍のリーダーだからです。文句ありますか?」

「あっありませんっ!!(汗)」

都合のいい時だけの肩書きだ………。

「はい!!何故ムササビは武装しているのでありますかっ!?」

「いい質問です。まずはムクムク達のいる場所をよく見て下さい。」

『ぼっちゃんラブ』城からさほど離れていない平野の中、ムクムクたちは何やら大きな穴の横に集まっている。

「実は、あの穴は、僕の趣味の兵器を隠している部屋だったんです………。もー火薬から何やらぜ〜んぶ隠してるんです。」

ぎゃっ!と兵士から悲鳴が上がる。

「火薬…………つい、クライブさんの持ってたのパクって成分解析して大量生産したんですよ………(おい。)」

遠い目でどこかを眺めるカナタだ。

「さっ最後の質問であります!(カナタ様を止められる)カイル様は………」

「フッ……僕とムクムクの大げんかに呆れて帰っちゃいました…………。(泣)―――――とゆー訳で、この戦いはカイルさんをかけた戦いとも言えます!!皆さん死ぬ 気で戦って!ヤ(殺)レv」

「伝令兵走れーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!すぐさまトランの英雄殿を連れ戻すのだっッ!!」

まだ遠くに入っていないはずだっ!と、兵士B(ちょっと偉い)の叫びに伝令兵は即行で返事を返す。

「了解しました!!(汗)」

この戦いは彼しか止められない………そう判断した兵士Bは偉かった……………………。

 

「さあ!殺戮の始まりです!!」

 

カナタの怪しい目の輝きに生命の危機を覚える兵士達だ…………。

 

 

一方ムクムク達はと言うと……。

 

「ムーーーーームムムムムーーーーーー!!」

「「「ムーーー!!!」」」

「ムムムムムムーーーーーーーーー?」

「「「ムーーー!!!」」」

「ムム……っ!―――ムムムーーーーーーーー!!」

「「「ムーーー!!!」」」

 

?????

―――――――――斯くして、戦いの火蓋は切られた……………。

 

 

 

 

「どわああああああああああああああああっっっっっっ!!!!!!」

 

ボロ雑巾を踏み付けたような、男の悲鳴が上がる。

「さあっっ!!!フリックさん(囮)がバケツを被せられている内に、麻酔付き弓矢で敵を眠らせるんです!!敵は108星の1人です!!殺すとまずいですから死なない程度に殺して下さいっッ!!」

運の低い者を見るとついつい、攻撃をしかけてしまうムササビの本能(本当か?)を逆手にとった見事な作戦だが、ムチャクチャ言ってるのは変わらない。

そして、敵もさるもの………野生のムササビ達に、赤のマントはもとより、ピンクやらミドリやらといった他の色もまぜ込ませ、こちらを混乱させている。コレでは、元からいた5体が元々のマントをつけているとは限らない…………………。

 

「ムムムーーーーーーーー!!!」

「今のレベルで、ムササビに襲われて死にたくな〜〜〜〜〜〜〜〜いッッッッッ!!!!!」

 

もっともな言葉を残し、ムササビの波に飲まれる兵士D。哀れなり………。(合掌)

低レベルなのか、高レベルなのかわからない戦いシーンは放っておき、救世主はどうなっているかに移ろう………。

 

 

 

カイルを求め走った伝令兵は、バナーの村で釣りをしているカイルの姿を見て、ぼろぼろと涙を流し、加速した。

「あああああああああああああっっっっっ!!!!!トランの英雄様ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっっ!!!!!!」

 

ブワキィッ!!

 

感激のあまり、カイルに接近し過ぎた哀れな伝令兵は、歓喜の笑みを浮かべたまま空へと舞い上がり、そして嫌な音をたてて、地面 に落下した………。

カイルの名誉の為に言うが、殴ったのはカイルではない…………カイルの膝の上に置かれていたカナタ人形(痴漢撲殺機能付き)が作動しただけなのだ……。

「だ…大丈夫ですか…?(汗)」

「いっ、今、すぐ城にっ……戻っ…る……よう、にと……………」

そう言い残して、ガクゥっと地面に顔を埋める伝令兵。確かに彼は今、同盟軍兵士全滅の危機を救う為に死力を尽くしたのだ…。

 

 

 

「ムクムク……ファイナルバトルだ……っ!」

「ム〜……ムムーーーーー!!」

はーはーと息も荒く睨み合う、1人と一匹(いや、2匹か?)

最後の一匹となったムクムクは、身体中に爆弾を巻き付け、ムササビの嵐の中を特攻覚悟でつっこんできたカナタはライフルや手榴弾を装備している、お互い全身に傷を負っている様子だ。

ついでに言うと、瀕死状態に追い込まれた兵士達は、なんとか力を合わせ、倒したムササビ達(マクマク達は分別 済み)をバケツリレー方式でビッキーの元へと運び続けていた。(ムササビの撤去作業。)

 

「それ!――――あっ!失敗しちゃった!」

「なっ!何故オレの時に限って………っ!」

言わずと知れた青雷氏は、ムササビの代わりにどこぞヘと飛ばされるのだ。

 

 

場面を戻して…――――しばらく睨み合った末、カナタとムクムクは同時に動き始めた。

ガチャガチャと重装備を外し、お互い相手を睨み付け、火花が飛び散る………。そして―――――

 

「カイルさんは僕のだーーーーーーーーーーーーッッッ!!!」

「ムーーーー!ムムムーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

ポカスカポカスカと、気の抜けた殴り合いが始まった……………。

「僕のーーーーーー!!!」

「ムムムーーーーーー!!」

「僕のーーーーーー!!!」

「ムムムーーーーーー!!」

「僕のーーーーーー!!!」

「ムムムーーーーーー!!」

 

いつまでも終わりそうにない戦いが繰り広げられようかと言うその時、天の救いは現れた。

「カナタ様ーーーーーーーーーーーーーーー!!トランの英雄様を連れて参りましたーーーーーーーーーー!!!!!」

「なにっ!?」

「ムムッ!?」

 

「…………(汗)」

 

どうなってるんだろ…?と連れられてきたカイルは呆然と辺りを見回していた。まるで、たった今まで戦場だったような風景である…――――その通 りなのだが……。

「カイルさーーーーんっっvvvvv」

「ムムーーーーーーーーーーvvv」

2匹(確定)に勢いよく飛びつかれ、カイルは体勢を崩し、後ろにつんのめりそうになるが、なんとか堪える。

「カイルさんッカイルさんッ!!僕とムクムクどっちが好きですかッ!?もちろん僕ですよねっ!?」

「ムムムムムーーーーー!」

スリスリスリスリスリっ……と摩擦熱が発生する程両者に擦り付かれ、混乱は更に深まる。

「両…」

「却下です!!」

「ムムッ!」

両方好き(like)、とカイルは言おうとしたが、即行で却下された。

「僕ですよねっ!?」

「ムムムッッッ!!」

「僕ですよねっ!?」

「ムムムッッッ!!」

「『ムムム』じゃ、伝わりませぇ〜んだ、毛玉ーーーー!!」

「ムーーーームムムーーーーーー!!!(怒)」

「僕!!」

「ムッ!」

「僕!!」

「ムッ!」

「僕!!」

「ムッ!」

 

どんどん険悪化が進むかと思われたが、しばらくすると、両者は同時にカイルを振り返ると…。

 

「さあ!選んで下さいッ!!」

「ムーーーーーーッ!!」

「えーーっと…(汗)」

どう返事すればいいのかわからず、カイルは後ろへ後ずさる…。

「さあっ!!」

「ムムッ!!」

 

―――――グシャッ!

 

更に返事を迫ろうとしたカナタ達だったが、足元で何かを踏み付けた音がして動きをとめる。

「? 何?」

「あー、さっき僕が外した手榴弾ですね。踏んずけて、ピンがぬけて―――――――辺りにはムクムクが持ってた爆弾が……」

「ムムーーーーー。」

 

 

どかん。(爆発)

 

 

取り敢えず、引き分けになったらしい。

この勝負、ドロー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、次の日。

 

「やっぱりふわふわ〜〜〜〜vvv」

「「「「「ムム〜〜〜〜〜vvvvv」」」」」

ふわふわの毛並に顔を埋めるカイルを見て、カナタはただひたすら嫉妬の炎を燃やし続けた……。

茶色い毛玉が5匹に増え、全く太刀打ちできなくなったのだ……。

そして、カイルに気付かれないように、カナタを振り返ると

 

フフンv×5

 

と笑みを浮かべるのであった……………。

そして、カナタは『次は本気(マジ)で殺る…』と心に決めるのであった…。

 

 

 

 

 

がふっ!

ただひたすらムササビレンジャーと戯れてるって……

ラストしか戯れてねえっッ!!?(死)

海月死んどきます………。