秘密作業現場
心地良い空気の中、トランの英雄は眠っていた…。涼しい風が、カイルの白い頬を撫でそよぐ………
同盟軍リーダーカナタの自室、そこでカイルは昼寝中のようだ。
穏やかな気候の中ではそれは当然の行為ともいえよう、しかし一つ、いつもと違う事があった。
「すー…すー…」
―――――――カナタがいない。
いつもならば、タコの様に張り付いてカイルの隣で寝ているはずの少年がいない…。
そう、それが問題だった。
………………いや、それだけならば問題はなかった。問題はこの後だ。
「ん…。」
頬を掠めるだけの存在だった風が、僅かに強く吹いた。
それがカーテンを吹き流し、カイルの頬を掠めたのだ。そのくすぐるような感触に、カイルは身じろぎ、目を覚ました。いつもは決して目覚めるはずも無いのに―――――
「………?」
辺りを見回し、首を傾ける。
「――――――カナタ…?」
隣にいると思っていた人物の不在に、カイルは身体を起こし、床の上に足を降ろした。
「?」
そのまま、数歩カイルは歩く。すると―――――――
パカッ
「!?(汗)」
床が抜けた。
「痛い……(汗)」
どこをどう落ちてきたのか、よくわからないままよくわからない部屋に放り出されてしまっている。
「ここは………?」
辺りは、薄暗く目が慣れるまで少し時間がかかった。
目がようやく暗さに慣れカイルは、場所を認識しようと何があるのか探ってみることにする。
そんなに大きな部屋では無いらしく、そんな場所にびっしりと薬品やら、何やらよくわからない物が並べてある棚が大量 にあった。―――――まず初めにみた物は、ホルマリン漬けの瓶だった……。
「!!!!!?(汗)」
しかも、謎の生命体が解剖された形で漬込まれている。
思わず後ずさり、後ろの棚にカイルはぶつかった。
「あ、」
何か壊さなかっただろうかと、とっさに心配してしまったカイルは背後の棚をも振り返った。
「h」
ビッシリと先程よりも小型の瓶に、部位ごとの解剖ホルマリン漬け。おそらく、モンスター(と、あとなんか。)なのだろうが……………。
凍り付いたまま、どう感想を漏らそうか考え込んでいるうちにその部屋の奥から声がする事に気がついた。
「……で………な方が……………〜と思う………です…〜…」
「……いや……………が………じゃろう」
「やっぱり………〜が…………わよ…………………だし…」
「?」
そっ、と近付いてみる。
どうやら、3分の1のスペースからは机が置かれているらしい。暗くて、誰が話しているのかわからなかったが、声と影の数から言うと3人のようだ。
「絶対ロケットパンチは必要ですよねーー!!」
「『みさいる』も当然搭載すべきじゃろ!」
「飛行形態もありよ!」
「???(汗)」
更にカイルは近付いてみる。
「この部分には、ゼンマイを使う!」
「それなら、ここの動力はこっちにするべきでしょ!」
「合体とか、必殺技も検討して下さいーーーー!!」
騒がしい討論が沸き起こっている、誰が喋っているのだろうか…?とカイルは姿を現した。
「あの…」
「「「!」」」
ハッとした顔が三つこちらを向く。
その見知った顔に、カイルは話し掛けようとするが、
「カ…」
瞬間、人影の方が早かった。
「っ!?」
布状の物で口をきつく塞がれる。
「みちゃったんですか……。幾らカイルさんでも、忘れてもらいます!」
息をするたびに、頭がぼやけてゆく。ぐんにゃりと視界が歪んで映った。
「―――――。」
最後に記憶に残った物は――――
企画室
と書かれた文字だった。
「ん………」
「くか〜v」
カイルは目を覚ました。隣を見ると、少年が思いっきり自分に抱き着いているのが見える。
多少それを苦しく重いながらも、カイルは目をしばたかせ考えた。
「……」
なにかあったような…
夢?
「カイルさ〜ん…v」
スリスリと擦りついてくるカナタを見る。
暫く考え込んだ結果………………
「どんな夢、だったかな…???」
わからない…と呟き、する事も無いのでもう一度目を閉じた。
「………………………………………にやり。」
そんな声がどこからともなく、(場所は確定しないが。)聞こえてきたような気がした。