ケガリ

 

 

「…………」

「ム〜ムムム〜ム〜ム〜」

 

ほわほわほわ…

 

「…………」

「ム〜ムム〜」

「ムム〜ム〜」

 

ほわほわほわほわ…

 

「…………」

「ムム〜」

「ム〜ム〜」

 

ほわほわほわ…

 

「………」

(以下略)

 

 

「だあーーーーーーーーー!!!!!!!!うっとーしーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!(怒)」

ほわほわと抜け毛が舞う青空に、少年の怒声が響き渡った……………

 

そう、季節は獣達の体毛をすっかり変えようとしている頃なのだ…

 

 

 

 

 

「そんなこんなで、毛刈り大会実施です」

 

キラリと輝く瞳は本気(と書いてマジと読む)だった…。

「けっ…毛刈り…?(汗)」

その勢いに押されつつも、フリックが尋ねる。集合をかけられた理由がそれでは納得し難いだろう………まあ、いつもの事だが。

「そうです!毛刈りです!!あの毛むくじゃら物体達の毛皮を剥ぐ為に毛刈り大会実施です!!飼い主とその動物を捕縛命令です!!」

キレた状態のまま、カナタが叫ぶ。

そして、そこで少し間が空いた。次の瞬間には、いつもの口調に戻っていたのだが―――――…

「ちなみに、捕まえない人は、その人が代わりに狩られて…いえ、刈られて下さいv」

ウィーン…

と、バリカンが鳴る。

 

ダッシュv

 

「シロッ!シロはどこだっ!!」

「鳥も動物に含まれるのか!?」

「いたぞーーーーー!!そっちだーーーーー!!!!!(汗)」

必死の形相で人々は駆け出してゆく…。

「そういえばっ!カイルはどこに行ったんだっ!?(汗)」

「さあな、(汗)」

ともかく、自らの髪を守るべく部隊と、暴走ったリーダーを止めるべく救世主(カイル)を捜索する部隊が結成された。

―――――――その中で少年は…

 

「そういえば………あそこにも居ましたよね…」

ボソリと呟くと、凶器を手に取りどこともしれず足を向けている…

 

 

 

 

にゃ〜…と呼びかけるような鳴き声が、シュウの耳に届いた。

「ん………そういえば、えさの時間か…」

珍しく平和(でも胃痛)な時間の中、ついに胃痛の元凶が姿を現すのだった。

バターーーンッ!

「猫出せーーーーーーーー!!(怒)」

「なっ!?(汗)」

刀を持った少年が、突如として乱入してくる!

「そこかーーーーーーーーーーーーー!!!!!!(怒)」

長い刀を猫に向かって、物凄いスピードで振り降ろした!

 

ザンッ―――――――――――――――――――パサリッ……

 

見事に、『毛』を切り払ったカナタだ…

 

シュウの。

 

「……………」

「……………」

ちょうど、頭のてっぺんの部分が、無惨にも剃り落とされていた…。身を斬られなかったのは、よかったと言うべきか悪かったと言うべきか………微妙な所だろう。

「………ミスりました。まあ、猫は頂いて行きます。」

 

腕に猫を抱え、少年は部屋を後にする。

そして、その後ろから少し遅れて、身の毛もよだつような絶叫が上がった……。

 

 

 

 

「う゛わ゛あ〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっ!!ブライトにッッ!ブライトに毛なんて生えてない〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ!!!(泣)」

「シロを刈るなら、僕を刈れーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!(泣)」

「フッ…なんにも聞こえませんね………」

絶叫をあげる、フッチとキニスン(他にも大勢いるが…)に、すっかり悪役に浸っている(地だろうが…)カナタが言い放つ。

ニャー!わん!ギャー!(泣)と、叫ぶ声を無視し、バリカンを取り出す。

「さ〜♪毛刈り毛刈りぃ〜〜〜〜☆」

バリカンのスイッチをOFFからONに切り替える瞬間、少年は動きを止めた。

「―――――そういえば、茶色い毛玉戦隊はどこに………?」

「!きたぞっ!!」

一人のメンバーの声に、人々は喜びの声を発した……。

遠くから、望んでいた人影が現れたのだ。

「ム〜〜〜vvv」

「ムムム〜〜〜v」

ふわふわとした毛並みをなびかせて、4匹のムササビが人影の周りを飛び回る。

そして、一匹は人影―――カイルの腕の中で喜びの声を上げている。

「出たなっ!毛塗れ茶色物体めっ!!」

「ムーー!ムムムーーーー!!」

ムクムクが、腕の中から異義あり!とばかりに声を上げた。そして、ちょっと来てみろと言うようなジェスチャーをカナタに送ってきている。

「………?」

不審に思いつつも、カナタは近付く

「!」

「ム〜〜♪」

抜け毛がない。しかも、良い匂いがするようになっている。

 

「まっまさかっっ……!」

「ム〜ムム〜〜〜v」

「カイルさんにブラッシング&シャンプーをっ!?」

「ム〜ムムム〜!」

カカッ!と、驚きと嫉妬の入り交じった表情で叫ぶ。ムクムクは余裕の表情だ。

これで、騒ぎは静まる…………そう思ったのは、誰もいない事だろう…。

 

「そっちの方がムカツキますーーーーーーーーーー!!!!!(怒)」

「ムーーー!ムムッムーーーーーー!」

「ムムーーー!」

「ムム、ムーーーーー!」

わーーーー!と戦う5匹と1匹(人)…

 

 

「――――――――カナタ…」

 

 

さ程、大きくない声が聞こえた瞬間、ピタっと騒ぎが静まる。

 

「なんですか〜?(内心:どきどき…>汗)」

「「「「「ムム〜〜?」」」」」

「この騒ぎ……何…?」

カイルが示す方向には、涙目で訴える飼い主達の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

わっしゃわっしゃわっしゃ…

 

「v〜〜〜」

嬉しそうにカイルは猫をブラシでとかす。

 

「うう゛っ………ブライト〜よかった〜〜本当によかった〜〜〜〜っ(泣)」

「シロもッ……本当によかったよっ…(泣)」

 

「(ちっ…です。)カイルさーーーんっもう一匹追加です〜〜〜〜。」

そう、カナタの必死の言い訳の結果、『毛刈り大会』から、『ブラッシング&シャンプー大会』に変更されただけの、平和的な解決となった。(洗い方の下手なメンバーは動物達に引っ掛かれ傷塗れになるという被害を被っているが…)

 

「カイルさ〜ん、後で僕もやって下さいーーーーーーっ!」

「?いいけど…???」

後ろから、タックルをかましつつ、少年はそうねだりカイルの邪魔をする。

一応は、ハッピーエンドなようだった…

 

 

 

 

 

そして、やはり。不幸なのは………

 

「シュウ殿ーーーーーーーー!!(汗)」

「シュウ軍師ーーーーーーー!?(汗)」

「………」

 

この人物だけだろう。

 

死亡エンド