ナナミちゃんの事件簿
ふと、気がつくと目の前は真っ暗だった。
「―――――?」
ここどこですか?と言おうとするが、もごもごとしか音が出なかった。身動きしようとも、ロープで縛られているのか全く動けない…。
「…むーぐ?」
カナタは、うーん?と目を瞑り、悩むが全く何があったか思い出せなかった。しかも、かなり疲弊しているのか転がっているのも辛い体調だ。
「むーむむ、むむむっむむぐむぐっぐー。」
訳:どーやら、どこかに捕まってるみたいですねー
「むむむむっむむんむむ〜?」
訳:何があったんでしょうか〜?
この少年が捕まる(推測)とは、事態はただ事ではないだろう…。
しかし、本人が余りに呑気なので、たいした緊迫感はなかったりした――――――
「カナタがいなくなった……?」
呆然とした……………というより、ただ単に確認するような声でだが、カイルは呟いた。
「ああ、いきなり消えたらしい。」
「仕事(強制)するって言ってたんじゃ…?」
「仕事は残っていた。」
さぼりだ。
普通の者は、そう考える。
「…………それじゃあ…、」
仕事が終わるまで待ってて下さいーーーーー!(泣)と泣きつかれたのだから、もう帰ってもいいだろうと、立ち上がるカイルだ。
「まあ、ちょっと待て、ちょっと待て」
ビクトールが、まだ話があるとばかりに、捕獲する。
「おかしい事があったんだよ、コレが。」
「?」
「書類がな―――――――――無傷で残ってたんだよ。」
ビクトールの言葉に、カイルが黙る。首を傾げているようだ。
「いや、多少散らかってはいたんだが、被害が少なくてな。それに、一応全部揃ってたなんだよ。いつもなら逃げる時は、燃やしたり切り裂きかましたりするようなヤツが」
「そんな事してたの…(汗)」
知らなかったカイルだ。周知の事実だと言うのに………。
そして、カイルは悩んだ――――――…。心配(…する事はないが)なような、そうでないような、気になる事は気になった。
しかし
もはや、週数間もまともに家に帰っていない。
「…………」
カイルは帰宅しようと、心に決め、ビクトールを見る。相手もわかっているのか、両手を頭の横にふざけたようにあげているだけだ。
「じゃあ…」
「カイル、帰れるかどうかはわからねえぞ?」
「、?」
どういう事か尋ねようとした瞬間……
ぱたぱたぱた………!――――――コンコン!
「失礼しますっ!」
「ビクトールさん!トランの英雄様はいらっしゃいますか!?」
「おう、いるぜ」
返事するや否や、数人の青年達が飛び込んでくる。
「お願いです!カイル様ッ………!」
「カナタ様を探して下さい!」
「そうでないと、私達はっ…………!」
わーーーーっ!と泣き出す青年達。まだ若く、入ったばかりの文官なのだろう………。
―――――――しかし。何やら、作為的な臭いがする………。カイルの弱味を押さえているような…?
彼等の勢いに、たじろぐカイルだ…もう、帰るとは言い出せまい………
そして、カイルが迷った隙(?)をつくように、再び足音が轟いて来た。
ドタタタタタタタタタタタタ!
「カナタが行方不明ってホントーーーーーーー!?」
バッターン!
と、ドアをぶち破っての乱入者だ。しかも、混乱状態で、
「きっと誰かにさらわれたのよーーーーーーー!!」
「………(汗)」
きゃー!と絶叫する、ナナミに、更にたじろぐカイル。
「いや、そう言う可能性もあるんだろうけどなあ、幾らなんでも…」
「絶対そうよ!だってあたしがカナタ見た時、カナタもう縛られてたのよっ!?拉致監禁よっ!!」
――――――おい。助けろよ。
というツッコミが妥当だ。
「絶対これはカナタに恨みを持つ人の犯行なの!!カナタ!待っててね!お姉ちゃんがきっと助けてみせるから!!」
燃え上がった少女を一体誰が止められるであろう…?いや、誰にも止められやしないだろう…………。
「だから!カイルさんも協力して!ね!!」
何が、『だから』なのだろうか?大きく、疑問を残しつつもカイルに断るすべなどない。
カイルは覚悟を決めて、コックリと頷いた。
そう、ズズイッと義弟と同じ迫力で詰め寄る少女+訴えるような視線で見つめてくる青年達………(その背後では、ビクトールがにやにや笑っているが…)それを無視などどうやって出来ようか……?
「そうと決まれば、早速犯人探しよーーーーーーーーー!」
〜カナタに最も恨みを持つ人物〜(ナナミ書)
「とゆー事で、シュウさんが犯人ね!?」
バンッ!と机を叩き付けるナナミ。
「一体、どういう事からそう言う結論になったのか、お聞かせ願いたいがッ……?」
キレかけ一歩手前の表情で、シュウが慇懃無礼に尋ねた………。
「………(汗)」
「だって!シュウさん!いっつもカナタのせいで酷い目にあってるし!カナタも仕事さぼるし!」
わかっているなら、注意しろ!―――そうシュウの顔にかかれている。
「だからそれを恨んで!カナタを縛り上げてッ!きっと地下で強制労働させてるのよっ!!」
ビシイッ!と言い切る少女探偵(?)。
「〜〜〜〜〜(怒)私にはアリバイがあるっ………それに、今ヤツを殺しても何の得にもならんッ!!」
なんとか、堪忍袋を補修して、シュウが叫ぶ。
結局、激務に追われるシュウは仕事をしていた、という補佐官からの証言により彼の無罪は証明された。
「おかしいわ〜〜〜絶対シュウさんだと思ったのに〜〜〜〜…でも!そうよね!カナタがシュウさんなんかにあっさり捕まる訳ないわよねっ!」
「ナナミちゃん…、(汗)」
ブッチィッ…!
何かのきれる音が聞こえたきがした…(血管?)
〜一番被害にあっている者〜
「なら!フリックさんが犯人ね!」
「なんでだっ!?(汗)」
断言するナナミに、フリックは叫ぶ。
「フリックさんは、カナタに何かしらの被害にあわされていて、それを恨んでたのよ!そして、仕事中で気配に鈍感になっていたカナタは、フリックさん魔の手に落ちたのよ!」
何かしらの被害にあわせているのは、ナナミにもであろう。
「違う!オレじゃない!!(汗)」
無駄な足掻きと知っていながら、フリックも断言する。
「それを証明する人は!?」
ズイッ!とナナミの追求。ちなみに、カイルは地道にカナタを探している。(ゴミ箱の中とか)
「うっ………(汗)アリバイは……ない、が………………」
「じゃあ!―――――」
犯人に決定されかけた時、樽(探すカイルの横にあった)の中から一人の少女が飛び出して来た。
「フリックさんにはアリバイがあるわ!私がここでずっと見てたもの!!」
「ニナッ!!(ストーカーされていたのかッ!?オレは!)」
ぎゃ!と叫ぶフリックをしり目に、ナナミは興味を次の犯人を探す事に移させている。
「ニナちゃんの証言があるなら、フリックさんは犯人じゃないのね〜…」
「………(そろそろ、止めた方がいいのかなぁ…>汗)」
困り顔のカイルである。
〜その他〜
「じゃあムクムク犯行ね!カイルさんを取り合っての、三角関係の縺れが原因よ!!」
「ムム〜〜〜!!」
「じゃあ、ジョウイよ!ジョウイが犯人よ!!カナタに存在すら忘れられかけてるからが動機よ!」
「遠すぎると思うんだけど……(汗)」
「シーナよ!この間、ついに女の子に連続3人に振られたのをカナタが笑い話で言いふらしたのを根に持って……っ!」
「何イッ!?あれ、アイツの仕業だったのかッ!?」
「じゃあじゃあ!――――――――」
(以下エンドレス)
〜ともかく、現場に戻る〜
「なかなか犯人は見つからないわ〜〜〜…」
「「「………(汗)」」」
犯人扱いされたメンバー達を引き連れ、犯行現場と思われる部屋へとナナミは戻って来ていた。
「犯人は現場に戻るっていうわ!ここで犯人を捕まえるのよ!」
やる気満々なナナミだが、この人数がいれば、犯人でも何でも近寄って来はしないだろう…。それに、他のメンバー達の興味は別 の所にあった。
積み上げられた書類、書類、書類、書類の山。
「よくもまあ…」
「ここまでなぁ…(汗)」
「こんな量、やる気があれば、1日で片付けられるのだっ!!」
ぎりぎりと拳を握りしめるシュウ。無論、先程のセリフの主語は『カナタ』である。
それを見ない振りをし、カイルはしゃがみ込み床に指を滑らせた。
床の上にはオレンジ色の液体が附着していた…。いい匂いがする。――――――トマトソース…?
「そういえば、ナナミちゃんが見たカナタの様子ってどんな風だったの…?」
カイルは立ち上がって尋ねる。
「あっ!そういえば、私が最後の目撃者よね!えっとね〜…私が来た時、カナタロープでグルグル巻きで私が何してるの?って聞いたら、『ちょっとね〜』って笑ってたから、なんでもないっぽいから『お昼ごはん』渡して、すぐ部屋を出たの。」
「「「ナナミの料理…?」」」
ビシリッ!と凍り付くメンバー達だ。
カイルの視線は、何か巨大な生命体が暴れたような(トマトソースによって残された)跡に釘付けだ。
「お昼ごはんって……『スパゲティ』…?」
「そうです!」
よくわかりましたね〜っといった表情で答えるナナミだ。
カイルが何か考えるような仕種をした間に、少女はビシッとポーズをとりどうどうと言い放った。
「まあ!やっぱりここは最終手段しかないわね!カナタ本人を呼び出すわ!!」
ナナミの発言に周りの視線は集中する…。
「カイルさんにも協力してもらわなきゃダメなの!ここに座って下さい!」
「?」
カイルは疑問に思いつつも、反射的に指定された場所に移動する。
ナナミは大きく息を吸い込むと……………
「きゃーーーーーーーーーっっっっ!!!!!カイルさんが暴漢(複数)に襲われてるわーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
「Σ!?(汗)」
ナナミの叫び声(+内容)に、ビクッとなるカイルだが、すぐ(0.05秒後)にもっと驚く事になる…。
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
轟く足音…。
「どこだーーーーーーーーー!!!(怒)そんなピ〜〜〜ッ(不適切な表現がであった為掲載出来ません)野郎はーーーーーーーー!!!!!(激怒)ぜってーーーーーー!ブッ殺すッ!!!!!!!!」
ドッカーーーーーン!と壁をぶち破って登場するカナタ少年…。
全身にトマトソースをたっぷりと、暗黒オーラ(?)を大放出中な感じだ……………
そして、カイルと視線があうと…
「――――――カイルさ〜〜〜んvvv(泣)ぶじだったんですね〜〜〜〜vvvvvうわーーーーーん!!よかったです〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
「…………(さっきの…???>汗)」
他のギャラリー達は我関せずと(今近寄ると、何の弁解もなしに激殺されるから)、カナタが破壊して来た壁の中を覗き込んでいる。
「こんな所に通路が………(汗)」
「この分じゃ、城中にありそうだな…隠し通路やら、隠し部屋やらが……」
わいわいと呑気に会話中だ。
「さあ!カナタ!!事件のあらましを語るのよ!」
「え?事件…?あ〜…うん!」
何の事だかは、思考回路が一緒なのですぐにわかった。
取りあえず、カイルが無事なのがわかったので、少年は落ち着きを取り戻している。ついでに、抱き着いてもいる。
「まず、ナナミが僕が縄抜けの練習をしてる時に入って来て〜」
よく見てみると、全身に巻き付いているのは、スパゲティの麺だ。(しかもアルデンテなので切れないらしい)
「縄ぬけッ!?仕事中にッ!?」
「シュウ!ここは押さえろ!!(汗)」
「そして、過酷な死闘の末、結局両手が使えなかった僕は不利で、気絶したために『スパゲティ』に隠し通 路の中まで引きずられていたみたいです!!」
涙ぐむ演技をするカナタだ。胃凭れでもしているのか、かなり辛そうだ。
ちなみに、皆こんなオチだろうとよめていたのか、大して驚いていない。
「な〜〜んだ〜〜〜v殺人事件じゃなかったのね〜〜〜♪よかったーー!お姉ちゃん心配したのよ〜v」
「あははvごめ〜ん♪」
のほほんムードが流れる中、カナタが爆弾発言をよこした。
「ところで――――――」
「?」
カナタが、カイルに擦りつきながら、辺りのもの全員に言い放つ。
「僕、3分の2くらいは食べた覚えあるんですけど、それ以上は、気絶したから覚えてないんですけど?(ナナミ料理)」
し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん………。
その後…本拠地にて、『連続殺人事件〜トマトソースは死の味〜』が起こったとか、起こらなかったとか………………………………………………。
えんど…