ぶら下がり事件

 

 

ブラーン

そんな効果音がぴったりな光景である。

「ねえ、カナタ…」

「なんですか…」

「僕達いつまでこうしてるんだろ…」

カイル達はがけっぷちにぶら下がっていた。

正確にいうと、カイルが木に引っ掛かりカナタはその腰元に掴まっていた。

この話は、約三十分ほど前に始まった

 

 

「カイルさ〜ん!!なんで逃げるんですか〜〜〜〜!!?」

「別に逃げてないって!!!カナタが追いかけてくるからッッ」

人間だれしも追われると逃げてしまうものだ。

しかも、突然血走った目で走って来られるとカイルでなくとも逃げるだろう。

「カイルさんっ!そっちはっっ!!」

慌てた声が後ろからかかる、

「えっ!?」

その声に振り向いた瞬間、ガラリと足場が崩れた

「カイルさんっ!!!」

「だ、大丈夫だよ…」

覗き込んでみるとカイルは枯れ木に引っ掛かっていた。

「上がって来れますか?」

ホッとした様子でカナタは尋ねる

「ちょっとムリ…かな?この木動くと折れそうだし、」

「じゃあ、僕の手に掴まって下さい!!」

喜び勇んで、手を差し伸ばす

「うん…」

カイルも微笑んで手を…

ずるっ

「「え?」」

 

----こんな訳だった。

 

「どうしましょう…このまま誰もこなかったら…」

「カナタ…」

「僕達海の藻屑でしょうか…」

足下に広がる波うつ景色を見て、ぎゅっとカナタは腰にまわした手に力を込める

『…なんとかカナタだけでも助けなきゃ……』

『あーvカイルさんの腰って細いな〜、それになんかいい香りするし…』

…バラバラの事を考えていた。

スリスリ…

「ひゃっっ!!!?カ、カナタッ!?」

「あ、ついvすいませ〜んvvv」

スリスリスリ

「『つい』で、腰に頬擦りしないでよっ!!」

「いいじゃないですか〜vこれくらいvv」

「あっ、ちょっどこ触って…っっ」

「……君ら何してんのさ、こんな所で」

「「ルック!!」」

2人からそれぞれ違った意味で声を上げる。

「いい所に!!助けてくれるっ?」

「いい所で…ルック邪魔しないでよっ!!」

「……落とすよ?」

珍しく怒りをあらわにするルックだった。

 

そしてこの物語は終わりを告げたかに思えたが…

 

「カイルさ〜ん!!!!」

「わーーーー!もうっ、」

ベキッ

「「わっ!?」」

ドボーンッッッ

板を踏み抜き2人とも湖へと落ちる。

 

次の日には船着き場で追いかけっこが行われたという事だ。