吸血鬼ごっこ

 

 

「あ〜〜〜〜〜退屈です……。」

ぽつりとカナタは呟いた…。その顔には誰が見ても『退屈』としか見えない表情が浮かんでいる。

「何か面白い事ないですか?」

でろーんとだれたポーズで椅子に凭れ掛かっての質問…。

―――誰にかと言うと…

 

「…………なぜわらわに聞く?」

シエラ様だ。

「だって一番の年ちょ…いえ、物知りですから〜。」

「ほほう………?」

パチッ…と静電気(?)が微かに走ったが、少年のニコニコとした表情を見て、まあ見逃す事にしたのか、シエラは再び興味なさそうな表情に戻った。

「タキの所にでも行くのじゃな、」

「え〜〜〜〜。もういって来て、ぽん菓子とお手玉貰って来ましたよ〜」

不満そうな顔を机に埋める少年だ。しかも、「ああっ!何か面白い事思い付くまで、カイルさんの所に戻る事が出来ませんッ!!」などと唸っている……。訳のわからない論理である。

それに呆れた表情を見せるシエラだが、不意に何か思い付いた表情になった。

「そうじゃのう…」

にっこり、と魅惑の笑みを浮かべ、シエラは何故か、少年の方へ一歩近付いた。

「?なんですか?」

その気配に顔をあげると、(見た目は)少女の可憐そうな顔が間近まで迫っている。

「こういうのはどうじゃ…?」

カナタの首筋に近付き――――――…吐息がかかる。

 

そして――――――――――――――――――――――――――――――――……………カプッ

 

 

ぎゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「………」

パラリ…と本のページが捲られる……。

カナタがいないので、特にする事のないカイルは、読書タイム中のようだ。

「、」

ふと、気配を感じ、顔をあげると、

 

「カイルさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっっっっ!!!!!!!」

「!!!!?(汗)」

 

ボスゥッ!!

 

マッハの速度で駆け寄られ、思わずカイルは驚いて枕を投げ付けていた………。

「……………痛いです…(泣)」

「カナタ…(汗)ごめんね…?」

いくら、柔らかいクッションとは言え、カナタが向かってくる速度と投げ付けた速度が速度な為に、意外にダメージがあったようだ。

「はっ!そうです!!カイルさん!!大変なんですっ………」

「?」

くぅっ…とその場に倒れ込み、カナタは言葉を続ける。

「実はッ……僕は吸血鬼になってしまったんですっ!!」

「え?」

カイルは意味がわからず首をかしげる。

「とゆー訳で!カイルさんの血を頂きます!!」

シャーーーッ!とマントを一瞬で着用し、飛びついてくるカナタだ。

「!?(汗)」

 

バキッ

 

棍を炸裂させ、カイルは訳のわからないまま脱出を試みたが………しかし、ドアを開けた先には………

 

あ゛ーーーーーーーーーーーー…あ゛ーーーーーーーーーー…………あ゛ーあ゛ーーーーー…

 

さながら、ラ●ーンシティのような状景が繰り広げられていた……。(byバ●オハ●ード)

「………(汗汗汗)」

「ふっ…。なんか、僕だけってのもアレな感じですから、城内に、吸血鬼ウィルスをまき散らしておきました!」

「………(ゾンビじゃないの…?>汗)」

虚ろな瞳で辺りを彷徨い歩く同盟軍兵士達を見て、カイルは当然そう思った。

「ともかく!貴方の血を頂きますvvv」

「!?」

 

 

 

 

「………………一体何が?(汗)」

なんとか逃げおおせたカイルは柱の影にもたれ、ずるずると腰をおろす。ちなみに、その手には血のついた棍が握られていたりする………。

向かって来た兵士ゾンビを撃退し、何とか休憩しているカイルだが、これからどうすればいいのか(=どうやってカナタを止めればいいのか)と悩み思わず溜息をついてしまう。

「………(汗)」

「おや、おんしは…」

「、」

突然かけられた声にカイルが振り向くと、そこには少し見知った少女が立っていた。

「あ…」

あ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜…

「「…………」」

また何処からか吸血鬼もどきの兵士の声が聞こえて来る………。

「まったく…やかましいことじゃ!」

「あの……カナタが何かまたやらかしているのですが…」

確か、シエラが吸血鬼だったと言う事を思い出し、カイルはカナタのあの暴走と何か関わりがあるかも…と思い、尋ねる。

「うむ、確かに。先刻、退屈と煩く言っていたので戯れに血を吸ってやったら、何か思い付いてい……………うるさいのう、こんな所にはおる事は出来ぬ な、」

吸血鬼もどきの声に眉を潜めると、シエラは途中で言葉を止めてしまった……………が。もうそれだけで全貌が見えた…。

少女は適当な場所へ避難する為に、カイルに背を向けた。

「―――――そう、そう。」

「?」

「――――苦労するな、おんしも、」

「………」

 

「カーーーーーーーーーーイーーーーーーーーーーールーーーーーーーさーーーーーーーーーーーんーーーーーーー♪」

 

シエラの振り向きざまのセリフに、カナタ少年の声が被った……。

 

「ちょっと待てカナタ!この城の惨状はどう言う事―――(汗)」

「邪魔しないで下さい!吸血鬼カナタはカイルさんの生き血を求めてるんですーーーー!!カイルさんが血を吸われる時に見せる苦痛と快楽に歪んだ恍惚の表情を見るんですーーーーーー!!!!!!」

「(いやもうどこからつっこめばいいのかわからんが…)血を吸う時は相手の顔は見えないと思うぞ!?(汗)」

「あ゛ーーーーーーーーーー!!(汗)盲点でしたーーーーーーーーーーー!!!!!」

 

そう…。

そう………その通り…

苦労ならめい一杯している…。

 

「ともかく!カイルさん!血を吸わせて下さいーーーーーーーーvvv吸われた後の色っぽい表情で我慢しますーーーーーーー♪」

「………」

シエラはさらに騒がしくなった為、とっくに姿を消している………。

若い内は苦労を買ってでもしろ……ということわざがある。

 

―――――もうめいいっぱい持っているので、売る方に回りたい……

 

少しだけそう思ったカイルであった…。

 

 

ちなみに、城にまかれたT-ウィ●ス(?)は一日限りの物だったと言う……。