キャベツ畑で捕まえて☆(謎)

 

 

「子供……………ほしいですね……」

 

ポツリ………

ふと思い付いたようにカナタが呟いた。

 

「子供?」

その呟きに対して、カイルは首を傾げて聞き返す。ちなみに場所は酒場(飲めない癖に何故か集まる)で、周りで酒を飲んでいた城の人々は、

どうか、このリーダーが求めている物が『コモド大トカゲ』でありますように…

と、切なる祈りを捧げていた…。

しかし、そんな甘い期待は打ち砕かれる物なのである。

「欲しいんですv」

にこーっと、笑うと少年は問題発言をあっさりと口にした。

「僕とカイルさんの愛の結晶v」

 

「「「「「無理だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!(汗)」」」」」

 

耳をそばだてて聞いていた人々は、たまらず絶叫した。

 

 

 

間v

 

 

 

死屍累々…

確かにそんな形容詞がピッタリとなった酒場。(レオナが頭を押さえて、溜息を付いている)

「僕とカイルさんの間には愛がないってゆーんですかっ!?(泣)ええっ!?(泣怒)」

「カナタ落ち着いてっ……(汗)」

必死のカイルの止めで、一応全員殴り倒されはしたが、死人はなんとか出ていないようだ。

「はっ!そうです!!――――カイルさん!子供産んでください!!」

「…………」

思い出したのか、カナタはガシィっとカイルの手を握りながら叫ぶ…。

―――――――――――一体今度は何に影響されたのだろうか…?まったくの謎である。

「カイルさんも欲しいですよねv」

「……………(汗)」

カイルはどう答えていいのか分からず、返事に窮す。

 

――――が、答えを出すまでもなく、カナタが暴走した。

 

「はっ!!それとも僕らの間には愛はないんですかーーーーーーーーーーーー!?!?!?!?(泣)」

ぎゃーーーーーー!と少年は頭を抱えて、絶叫する…。

「カナタっ…!」

僕との事は遊びだったんですねーーーー!!と叫ばれる前にカイルは(真っ赤になりながらも、)「な、ない訳じゃ…ない……ような気も…………(汗)」となんとか答えていた。

そして、その返事に少年はコロッと態度を変える…。

「じゃあ、子供欲しいですよね!」

「…………(汗)」

―――――――――見事な三段論法(?)だ。

 

愛の結晶、子供。→愛がある。→子供が欲しい。

 

かなり、クレームがきそうな論理ではあるが、間違ってはいない。

確かに間違ってはいないのだろうが…………どこか間違っている。そう、なにか根本的な事が――――――…

 

カイルがそれに思い当たる前に、カナタは畳み掛けるように声をあげる。

「じゃあ行きましょうかっ☆」

「?」

どこへ?と問う間もなく、カイルはどこかへと引っ張られていってしまった………

 

 

 

 

 

トニーの畑。

 

「今日もいい天気だなぁ…」

兵士A。

何の罪もない彼は、城の警備交代の為に畑の前を通過中であった。

トマト畑……じゃがいも畑……そして、キャベツ畑へと通りかかった瞬間、

 

「――――――――っチェストーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

いきなり何者かが、槍を構えて飛び出してきたのだ

「うわあああああぁぁああああぁああ!?(汗)」

敵襲!? 思わず兵士Aは死を覚悟し、何故だか、今夜の夕食『トンカツ定食』の行方に付いて思いを巡らせてしまっていた……。

兵士A、享年2×歳………こんな所で朽ち果てるのか――――――…

 

「ちぃっ!また外れですか………」

――――そんな声が聞こえただけで、兵士Aが想像していたような衝撃はいつまで立っても訪れなかった…。そのかなり悔しそうな声は、とても聞き覚えがある物だった………。

「カ……カナタ様……。」

兵士Aは呆然と襲撃者であり、この同盟軍のリーダーであるはずの少年の名を呼んだ。

「はい?」

そして、呼ばれた少年はと言うと、まったく悪びれた様子を見せていない。

しかも、カナタの装いはというと………………………………………………迷彩服(ジャングル仕様)だ。

 

「な、何を一体…」

あまりの出来事に、兵士Aは呆然と呟く。

「見て分かりませんか?コウノトリをまってるんですよ。」

頭につけたキャベツをわさわさと揺らしながら、カナタはそう答えた…。というか、見ても分かるはずがない。

「は?」

「詳しく言うと、キャベツに擬態しながら、コウノトリが来るのを待ち、そのコウノトリが持っている赤ん坊を強奪すべく待ち構えている所なんです!」

 

 

(槍で刺したら)コウノトリごと赤ん坊も死にませんか?

 

 

どう突っ込んでいいのやら、そんな事を考える兵士Aであった…。

……………ともかく、あまり長居をすると、面倒に巻き込まれると身に染みて理解している兵士Aは、素早くその場を離れていった…………そう、きょうの夕飯が楽しみだなあ…(現実逃避)などと考えながら………。

カナタはその後ろ姿を見送りつつ、愚痴を零す。

「ふう…………やっぱこんな明るい内には敵襲もありませんよね、」

「いつから敵になったの……?(汗)」

カイルがポツリと呟くが、既に目的がすり代わってしまっているカナタにはその声はまったく届かない。

既に何日間かここで過ごしているのか、2人の背後にはテント用具一式が並んでいる…。これではもしコウノトリが実在しても、気付いて近付いてこないのではないのだろうか?

「さあ!まだまだがんばりますよ!!」

「………。」

しかし、やる気になったカナタにはそんな事はお構い無しだ。しかも、そんなにはりきられては止めるに止められない…。

カイルは溜息を付いて、お茶を入れる為に立ち上がった。その時、背後から声をかけてくる者がいた。

「よお、また何かやらかしてるそうだな?」

「シュウがまた胃痛で倒れたぞ……(汗)」

「、」

フリックとビクトールがやってきた。

ちなみに、ビクトールはかなり面白そうだ、というような表情で、フリックは本当に疲れた…という面 持ちである。

「またなんでこんな騒動になってるんだ?(汗)」

「さあ…?(汗)」

本当に分からない上に、かなり唐突である少年の行動……に、意味などないのだろう。いつもの事なのだから、

 

「おーーーい、カナターーーーー。カイルとの赤ん坊まってるんだとーーーーーーー?」

2人の気持ちも知らず、ビクトールは呑気…というか、楽し気にカナタに呼び掛けている。既にキャベツ畑の中に擬態していた少年はその声に槍を振って答えていた。

「そーですよ〜」

とても本気そうな声に、ビクトールは茶目っ気を起こす。

「お前にちゃんと育てられるのか〜?」

「何がですか〜〜〜?」

「だから子供だよ、」

 

「……………………………………え?」

 

「「「『え?』?」」」

 

 

まーーーーーさーーーーーかーーーーーー?

 

 

「……………そういえば、育てるもんだったんですね。」

 

育てる気なかったんかいっ!

 

 

 

 

カナタ少年…………その生い立ちの所為か、本人の性格に寄る物からか…………いまだ『人権』と言う物を学んでいなかった。

 

 

「カナタ……………」

「は?」

ゆらり…とカイルはカナタの側まで寄ると、しっかりと少年の肩を掴んだ…。

そして、

 

「あれ?カイルさんーーーーー?なんで怒ってるんですかーーー?」

 

ずるずるずる…

 

 

カイルにどこぞヘと引きずられていったカナタはみっちり、3時間『生命とその人格、人権のあるべき姿。又は赤ん坊に対する気持ちの持ち様、親になるについての自覚と意識』を説教され続けたと言う…………。(自業自得)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあv育児方学んだら、子供OKですねvvv」

「え………?」

無理だっつの!(汗)