トーマスくん城殺人事件
トーマスくん城、元城主の間。現在は炎の運び手、リーダーであるヒューゴが滞在しているその場所。
そして、そこには現在1人の少年(これがヒューゴである) が床にばったりと倒れていた。
ピクリとも動いていない。
そして、なぜだかその部屋の入り口で少年と少女…いや、やはり少年、が2人固まっていた。
中の様子に呆然としているらしく、ゆうに1分はその状態で固まっていた。
――――先に動いたのはバンダナをつけた少女のような少年、トランの英雄と呼ばれたカイル=マクドールだった。
「カナタッ!水!!早く水もって来て!それとお医者さんと解毒剤を!!」
「わかりました〜〜〜〜〜っ!!ひーーーーっ!(汗)なんで殺人事件ですかーー!!責任者はどこですかーーーーー!!(汗)」
倒れたヒューゴを抱き起こし、カイルがそう叫ぶと、頭にわっかをつけた赤い服の少年がダッシュで走り去る。―――どうでもいいが、カイルも慌てているのか、かなり無茶な事を要求している気がする…。
慌ただしい様子で、蘇生作業が行われ、何とかヒューゴの命が助かった後、関係者以外立ち入り禁止となった部屋で少年、カナタがこう言った…。
「毒です。毒を飲んで倒れたらしいです!」
「ど、毒ですか………?」
責任者こと、この城の城主であるトーマスが頼り無気な表情で尋ねた。ヒューゴの事も心配なのだろう、ちらちらとベットの方を見ている。
そこには、カイルがまだ微熱の続くヒューゴに新しい濡れタオルを額の上に乗せている姿があった。
「ヒューゴ様が…」
セシルも困った様子で呟く…。………しかし、その手にはお見舞いのフルーツ盛り合わせを持っている為、緊迫感はあまりなかったりする…。
「この毒の効き方…見覚えがあります…。確か、ゼクセンの北、無名諸国より伝わる数十種類の毒グモのエキスを調合した秘伝の毒薬、「静かなる眠りの乙女」です……!」
無名諸国の…
思わず視線がトーマスに集まる。
「え、ええっ!?僕ですかっ……!?」
慌てた様子を見せるトーマスだが、ただたんに集まっただけなので、すぐにセシルとカイルは笑って首を振っている…。
……しかし、1人の少年だけは笑っていなかった。
「まさか……愛憎劇か何かでヒューゴさんを毒殺………(汗)」
その15年前から成長を止めた身体は、ぷるぷると震えていたりする。
「あの……」
どうかしたんですか?とトーマスが声をかける、
「うひゃぎゃあっ!!(汗)なっなんですか!?」
しかし、トーマスに話し掛けられたカナタは音速でカイルの背後へと後ずさった。…どさくさに紛れて、抱き着いている所はまったく侮れない所だろう。
「あ……えっと、その…どうしてこんな事に………」
「さー!どうしてでしょうねーーー!!(汗)」
叫ぶように答えるカナタだ。
「カナタ、静かに、」
「あ、はい。(汗)」
病人がいる所で大声で叫ぶ少年に、カイルは注意を促す。
「でも、なんでヒューゴさんは毒なんか飲んだんでしょうか?(汗)」
話題を変える為かカナタは、ピッと倒れていた場所をチョークでかたどった位置を指差す。
「もしかしてっヒューゴ様!何か辛い事でもあったんでしょうかっ!?」
「セシル、ヒューゴ様は自殺なんかする人じゃないよ……、」
やんわりとトーマスがセシルの言葉を否定する。
「――――まさか、暗殺…」
カイルからの意見に一瞬、しーんとした静寂が訪れる…。
確かに、現在この集団をまとめているのは、真なる炎の紋章を受け継いだこの少年の力だと言って過言ではない…。今この要を崩せば、この脆い結束は崩れてしまうだろう…。
一気に重大な危機に瀕したトーマスくん城だった…。
「あ、アリバイを調べましょう!」
慌てた様子でカナタが宣言する。
「え、えっと……誰のですか…?」
「ここにいる人全員です!きっと…!」
この中に犯人が…!
しーん…と再び静まり返る一同…。
―――最初に口を開いたのはカイルだった。
「カナタ…」
「なんですか!?」
「………この中じゃなくてもいいような気がするんだけど…(汗)」
「ああっ!!(汗)盲点でしたーーー!」
ガビーン!とショックを受けるカナタだ。最初からこの調子では、先が思い遣られる事だろう…。
しかし、一応は証言をしておいた方がいいと言う事で看病ついでの会話をする事に決まった。
〜第一発見者〜
「むろん、僕とカイルさんですね!」
「特に用はなかったんだけど、ちょっと様子を見に…」
中には他に誰もいなかったと証言する。
「ついでにいうと、『静かなる眠りの乙女』を飲んでから5〜10分って感じでしたよ」
何故わかると言うツッコミは入れないでおこう。
「最後にヒューゴさんにあった人は誰ですか?」
「あ…あの…多分、僕です」
挙手したのはトーマスだった。しかも、床に落ちていたゴミを拾っていたのか、立ち上がりながらの挙手だ…。(かなり腰が引けている)
〜最後の目撃者〜
「えっと……少し前までヒューゴ様といつも通りにお話していたんですが、用事を思い出して…それで失礼しました。」
「私も部屋の外に出たトーマス様にあってその後一緒に城内をパトロールしました!!その時ヒューゴ様とっても悲しそうに外までお見送りに来ていらして元気でしたっ!」
「うっ…;(さりげなく、ムゴイ話を聞いた気がします)」
しかし、両者とも、ほとんど身内からの証言のような物で、幾らでも偽造がききそうだった…。
「う〜ん…謎ですね〜(謎があり過ぎて、>汗)」
こうなったら、あの探偵少年でも呼んで来ましょうか?とカナタは捨て鉢になるが、その時カイルから疑問が放たれた。
「でもカナタ、犯人(仮)は一体どうやって、ヒューゴ君に毒を…?」
とてつもなく寝苦しそうなヒューゴを見遣りながら、カイルは首を傾げる。
「それですよね、問題は」
調べた結果、特に飲み物も容器も辺りには転がっていなかった上に、外傷もない。
…が、窓は空いている、隣の部屋とは繋がっている、扉の鍵は開けっ放し、現在の敵(破壊者一行)はテレポートができる、人の出入りが自由………いつでもどこでもやろうと思えば、暗殺出来そうな環境だ。(これだけ不安定要素があると、犯人を特定する方が難しい…。)
「うーん…毒は固形物だったか、犯人(仮)が持ち去ったかって感じですよね!」
「それより、そんな毒なんてどうやって手に入れて…」
「そうですよね!僕でもあるまいし。」
――――――――――一同の視線が集まる。
やはり最初に口を開いたのはカイルだった。
「……持ってるの?」
「はい☆昔ちょっとパクって……もとい、貰ってvコレクションしてますよ、今日もちょうどここに………………あれ?」
カナタはポンポンと懐を叩くが、見つからないのか、少年はだんだんと焦った表情になってきていた。
「た、確か、固体の状態にして、アメの袋で包んであったんですケドッ…!」
「………(汗汗汗)」
焦るカナタとカイルだ。嫌な予感がひしひしとして来る。
「あ、あの……(汗)」
そんな時、トーマスが上擦った声で声をかけて来た。
「も、もしかして………これですか?」
否定して欲しい、そんな気持ちがありありと現れた様子で、青年は恐る恐ると―――先程拾った愛らしいピンク色のアメの袋を差し出した…。
「……………………………それです、」
中身の空になった包み紙……
間違いなく、カナタの落としたアメ(毒)をヒューゴが食べてしまったのだろう…
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜カナタ…」
そんな危険物を持ち歩かないッ!!(怒)
とりあえず、謝らされ、説教されるカナタであった…。
〜蛇足的真実〜
「トーマス様〜っ!コレ落ちてました!!」
ぱたぱたと走りよって来たセシルに、トーマスはいつも通り多少?気弱そうな笑顔を浮かべた。
「あ、じゃあヒューゴ様の所に届けようか?ちょうどこれから行く所だから…」
現在この城の今月の目標は「落とし物は何でも届けよう!」という物であった。
「よろしくお願いしますっ!私は頑張って今日もお城を守ります!!トーマス様っ後で一緒にお城をパトロールしませんか!?」
「うん、いいよ」
そうして、トーマスはセシルと別れヒューゴの部屋(元自室)に入る。
しかし、中には誰もいない。
「ヒューゴ様…あれ?」
トーマスは首を傾げるがとりあえず、少し待ってみようと思い、手近にあった机の上に落とし物の『アメ』を置いた…。
そこへヒューゴが慌てて部屋に駆け込んで来る…。
「―――ゴメンッ!トーマスさんッ!ちょっと軍曹の所に行ってて…!」
「あ、そんな…、いいですよっ…」
――――――――不幸な偶然が重なり、『アメ』はトーマスが帰った後、ヒューゴの口へと運ばれたのだった…。
「カナタッ!そんな物何で持ち歩いてるのっ!(怒)」
「いざといった事があったら困るじゃないですかッ!」
「困らないッ!(汗)」
「ど……どうしよう…(汗)」
「どうかしたんですか?トーマス様???」
つい言い出せなくなるトーマスであった。
結局、かなりの不幸にあってしまったヒューゴはただ、ベットの上でうなされているだけだった………。
終わる。(死)