日常的光景
「カーイルさんvかくれんぼしましょうか♪」
「え?」
突然のカナタからの提案に、カイルは一体何?と首を傾げるが、これもまあいつもの事だった。
「10数えたら、探しに来て下さいね! カイルさんに探してもらえるしあわせ〜♪(謎ソング)」
「カナタ!?(汗)」
ダーーーーーッシュ!と物凄い勢いで走り去ってしまった少年のスピードは、既に人の域をこえる走りっぷりであったりする。
そして、残されたカイルはと言うと…
「…………」
少し躊躇った後、
「……いーち、にー、さーん…」
取りあえず付き合う事にした、付き合いのいいカイルだった。
「カナタ…?」
そこらにある樽を開けて覗き込む。探し方としては正しいような、そうでないような微妙な所だ。
続いて、床下やら天井裏やらを探し始める。
テクテクと歩きながら、色々と探すのだが、なかなかカナタは見つからない。
ふと童心に帰ったような思いで、楽しいかも…と思い始めるカイルだ。
「カナタ?」
カパッと続いてゴミ箱(幾ら何でもそんな所にはいないだろう)を開けるとそこには――――…
「…………」
何故か等身大のカナタわら人形が『ハズレです☆』と掛れたメモを貼られた状態で入っていた…。
一体いつの間に…?と少し呆然とするカイルだ。
取りあえず、それを引きずりカイルは次へと進むが、出るは出るは……ハズレの山。
「…………なんでこんなに…(汗)」
まさかそのまま放置して行く訳にも行かず、カイルはズルズルとハズレ人形(可愛いのもある)を引きずり、カナタを探すのだが、まだ見つからない。取りあえず、物置きも探そうとカイルは進むのだが、
そこで悲劇は起った…。
「…………?」
薄暗い物置きの中、ぼんやりと浮かび上がっている人影―――――…
こんな所に人が…?とカイルは首を傾げるが、とりあえず近付く。
そして、それがナニかと分かった時―――――――…
「―――――――――ッ!!」
声にならない悲鳴が、物置きから響き渡るのだった…。
少し前の酒場…
ざわざわ…と騒がしい酒場。
しかし、それはいつもの喧噪ではなく、何か不審な物に対する困惑のざわめきであった。
「一体何なんだアレは…」
「いやだから、〜〜〜だろ?」
「それはわかるが、なんであんな所にあるんだよ、;」
そう―――…今、酒場には、妙な物があった。
その妙な物と言えば、『枕』だ。
しつこくいう、『枕』が転がっていたのだ。
そう、何のへんてつもない『枕』が、
しかし、同盟軍メンバー達は分かっていた………普通である物程危ないと、
普通の『肉じゃが』は人を襲い、普通の『少年(リーダー)』は小悪魔で、普通だと思う物は『罠』なのである。
「フリックさん、ちょっと見て来て下さいよぉ!」
「オレがか!?」
いつも通りの不幸っぷりで、フリックが押し出される事となった。
「………」
取りあえずフリックは、枕の前に立つのだが、―――何故か、それに触れられなかった。
ガマの油を絞るかのごとく、だらだらと汗が流れ続けるだけだ。
その瞬間である。
「はーーーーーーーっ!!どこかでカイルさんの悲鳴ですーーーーっ!!」
「「「「ぎゃーーーーっ!!(汗)」」」」
枕からニョロリと顔が生えた。思わず絶叫だ。
ちなみにその正体は、言わずと知れた、カナタ少年だ。
「カナターーーッ!!なんでそんな所にーーーっ!?いや、それよりどうやってそんな所に入ってたんだーー!!」
「カイルさんとかくれんぼ中なんですよ!酒場に枕が転がっていると言う不条理かつ、トラップ的な盲点をついた隠れ方なんです!で、どうやって入っていたかと言うと、まず関節を外して―――…」
「うわーーーっ!!いい!やっぱり、聞きたくない!!;」
枕から脱皮(?)しているカナタに向かってフリックが絶叫する。
「つか!こんな事してる暇ないんですよ!(怒)カイルさんの身になんかあったらどうするんですかーーーッ!!」
ベチィッ!と枕をフリックにぶつけて、カナタはマッハのスピードでかけてゆく…。
「お、おい、ちょっとまて…カイルが一体???」
――――よせばいいのに、人のいいフリックはついカナタの後を追ってしまった…。
「カイルさーーーんッ!!ここですかーーーー!!!!!?」
愛の力か、本能からか、カナタはカイルの元(物置き)に1分以内に辿り着いた…。フリックもそれに巻き込まれたのか、死にかけで床へ転がっていた。
薄暗い中、べったりと床に座り込んだカイルの姿を発見する。(周りには散らばったハズレカナタ人形が…)
「カイルさん!何があったんですか!?(何か変な事したヤツがいたら、冗談でも何でも血祭りです…)」
「………カナタ…、」
予想とは違い、カイルは疲れたような表情で少年を振り返った。
そして、ゆっくりと目の前にある物を指差す…。
「あれ…何?」
カイルの指差した物はというと…
「うっ…(汗)こ、これは……」
「ハズレ僕人形☆理想体型ですけど、」
逆三角形のボディに、テカリの入った筋肉…(しかもポーズ付)なマネキンの首を自分の物と付け替えた、恐ろしいとしか言い様のない代物だった…。
「目指せ筋肉!ですよねっ!」
「絶対止めて…」
「やめとけ、カナタ…」
行き過ぎな体型に、カイルとフリックはフルフルと横に振る…。どうみても、このマネキンは通 常のマッチョ以上の体型である…。
「ええっ!?――――あ〜でも、やっぱり『テカリ』が行き過ぎてましたか…じゃあ、サンオイルはなしと言う事で!」
「「そう言う問題じゃないっ!!」」
「はっ!なんでそんなに仲良くはもるんですか!?浮気ですかっ!?わーーーーーっっ!!グレてやりますーーーー!!」
「カナタ!?(汗)」
いつも通り騒々しい声が城内に響き渡る…。
まあ、何のへんてつもない、日常の風景。