非日常的…

 

 

 

「……………」

カイルは思っていた。そして、困っていた。

 

(なんで…あんな所にいるんだろう…)

 

と、

ここ3年間程、自分があまり感情を表に出せなくなっていたように思うが、ここ最近では出ていない方が珍しくなってしまっていた。

―――――そう、少年…カナタと出逢ってから。

それはいい事なのだろうと、最近思うようになっていたが、それはまあさておき…

 

………なんで熊の上にカナタがぶら下がっているんだろう…

 

カイルは呆然とその場に立ち尽くしていた。

熊は熊でも、熊(のような)男、ビクトールではなく、本当の野生熊。続に言うツキノワグマ(睡眠中)の上にカナタがぶら下がっているのだ。それも、折れそうにしなった細い木の枝に掴まって、

―――カナタの姿を探してはいた物の、予想もしていなかった光景に、カイルは困って目を泳がせてしまう。

少年と出会ってこの方、退屈な日と言う物がどんどんなくなって行っている気がする…。

熊…熊は敵なのか、それとも動物なのか…分類に困って倒す事も会話を試みる事も出来なくなる。しかも、踏まれて怒った熊は、確かに怒る理由があるのだから、止める訳にもいかない。

………とりあえず、我に返り、カイルは首を傾げてカナタに無音で問いかけてみた。

 

※以降、読唇術会話。

『カナタ…』

『あ、カイルさーん!(泣)』

『なんでそんな事に……?(汗)』

『いえ、ちょっと童心に帰って木登りしようとしたら、何故かツキノワグマが下で昼寝をし始めて…!それからそーっと逃げようとしたら、失敗してこんな宙ぶらりんに…』

『………(汗)』

『どーしたらいーんでしょーか〜!?(泣)』

…カナタの掴まっている枝は今にも折れそうだ。

昼寝中の熊に何とか退いてもらおうかと思ってカイルが試みようとした所、カナタが全身で『危ないですー!』と抗議した為、その試みは中止された。

『とにかく…カナタ、そ〜っと…そ〜っと、降りて…(汗)』

『うううっ…;ですよねー』

そーっと…って。

 

折れそうな枝。

足下3cmの所に熊。

全身1m50cmの熊。

 

そーっと?

 

「っむ、ムリですーーーーーーーーーっ!!!!!!(汗)」

「!?;」

「グオッ!?;」

パキッ!

ムギュッ!!

「「………。」」

…実況中継をすれば、カナタが叫び、熊が跳ね起き、枝が折れ、カナタが落ち、熊を踏んだ…といった光景だ。

 

「…グオーーーーーーーーーーーーッ!!!!!(怒)」

 

当然、熊は怒った。

「ギャーーー!!(汗)」

ダッシュでカナタがカイルを抱えて逃げ去った…。

 

 

 

 

何故城内に熊が…?

その謎はどうしてもとけなかったが、

その日、ナナミが鍋料理を作ろうとしていた事だけは、某料理長の証言により、わかっていた。

 

 

オチない…;