お風呂上がり、まだ湯気の立つような暖かい身体。
少し眠いのか、ぼんやりと宙を見つめる透明感のある瞳。
―――――――チャンスは今ですッ…!!
「カイルさんッ!!」
「?」
「――――――膝枕させて下さいッ!!」
カナタは熱意に燃える瞳でそう叫んだ。
膝枕。(タイトル)
「…膝枕?」
「はい」
「するの?;」
「いえ、されて下さいっ!!」
カイルが首を傾げながら問いかけるのに、少年はグッ!と拳を握りしめてそう答える。
何か妙な会話になっているが、それも仕方のない事だろう。
カナタがカイルを膝枕する。
これが逆ならば、よくあったりもする行為なのだが、これは今までにない構図だ。
ちなみに、一体どうしてそんな話になったのかという事は、何か萌要素やら脳内電波司令塔やらが関与しているような気もするので、省略するが…とにかく!カナタはカイルに膝枕したかった。
「遠慮なく僕の膝へ!さあッ!!」
「遠慮って…;」
しかも、直球勝負だった。(当然カイルは困った顔をしている)
さりげないシュチェーション…。
例えば、昼寝の時に枕がないので、代わりに膝を貸す、と言うのなら未だしも…
今は夜寝る前。
幾ら、ベッドがあって(膝枕に)都合がいいとはいえ、怪しい事この上ない要求だった。
「いざ!僕の膝へ!!」
「えっと…;(どうしよう…)」
熱意にギラギラ…もとい、キラキラと瞳を輝かせている少年の願いを断るのは、至難の技だ。
とりあえず、カイルは―――…
「…何で?;」
当然の疑問を口にした。
「してみたいからです!」
「そう…;」
しかし、あっさりと自己中心的な答えを返されてしまった…。
少年の野望はこうである。
――――カイルさんから自発的(?)に、僕の膝で寛いでもらい!しかも角度的にカイルさんは僕を上目遣いに見上げる感じになるって寸法ですーーーーーーーッッッ!!!!!(燃)
「という訳でいざ!」
「…いいけど;」
少年はすでに、ベッドの中央に陣取り、正座して揃えた両膝をペしペし叩いている為、もはやカイルに断れる術はなかった。
頭が乾いている事を確認してから、カイルはよいしょとベットの上に上る。
少年はそれに、ドキドキ☆と心臓を高鳴らせた…!
――――今こそ! 今こそカイルさんの頭が僕の膝に密着!!
それは、きっと軽くて、触れた箇所から体温が伝わる甘い感触なのだ。
風呂上がりの良い香りと、自分を見上げて来る潤んだ視線…(妄想)
それが今まさに手に入ろうとしている!!
「―――――――――――――――――――ちょっちょっとタンマです!!;(///)」
「?」
カナタは鼻を押さえて、ストップとばかりに手をカイルの方へと出した。
(なっ…なんか緊張して来ました…!!;)
「カナタ?;」
「えーっと!;足ってやっぱ正座ですか!?それとも、崩した方がいいんでしょうか!?」
「さあ…?;」
小首を傾げる姿にも、ギャーッ!可愛いですーッ!!と叫びたくなってしまう。
(おっ落ち着くんですッ!!今こそ野望を叶える時です!!ああっ;でも微妙に恥ずかしいような気持ちがーーーッ!!心臓の辺りがムズムズーーー!!こうなったらカイルさんの意識のない時を狙って練習から!?嫌でも今頼んだのに、やっぱやめましたーっていうのもヘンですしッ!!薬で眠らせるッ!?いえ!薬の使用は自制する方向って事になりましたしッ!あ〜〜〜ッ!;したいのにっっ!押し倒すとかなら全然平気ですケドッ!何で出来ないんですかーーーーーーッッッッ!!;>泣)
カイルが、少年の膝の上で無防備な表情で見上げて来るのだ、そして膝の上には軽く暖かな感触が乗るのだ。
「〜〜〜〜〜〜〜(ぬぉおおおおおッ)!!;」
鼻を押さえ、膝をパンパンパン!と堪え切れないように叩き、溢れ出す妄想オーラの噴出を防ぐ。
「か、カナタ?;」
「も、もうちょっと待って下さい!(///)」
ストップー!と顔を手で覆ったまま、カナタは言った…。
――――――結局この日、待っている間にカイルは睡魔に負け、(カイルの意識がある内の)膝枕は実行されなかった結果 となった…。
………………改まった上での行為は、なかなか苦手という事らしい。
戦果報告です…(笑)