その騒動は、平凡なある日の出来事から始まった―――…。
お昼を回り、おやつの時間になった時、カイカはいつも通りおやつにまんじゅうを食べていた。
最近では、カイカも周りの人間におやつ(まんじゅう)を分けるようになっており、一緒にいるテッドとカナタとカイルにも1つずつ渡していた。
「…(♪)」
袋にみっちりと詰まったまんじゅうを食べるカイカは、とても幸せそうだ。
次の瞬間までは。
「あ;」
ぽろっとまんじゅうを手から地面へ滑らせたカイルは、慌てて拾うものの既に時遅く…まんじゅうには葉っぱがくっついてしまっていた。
―――そう、この次にあった出来事だ。
「あ…;」
カイルがさすがにもう食べられないとカイルが再び声を上げ、
「じゃあカイルさん♪僕と半分――「オレの分食べるか?」
カナタが言うよりも早くテッドが提案した。
「いいの?」
「ああ、」
甘い物が好きでも嫌いでもない為、彼は他意なくカイルにまんじゅうを手渡そうとしたのだが―――
「―――っ…!」
何故かカイカが顔を青ざめさせて、衝撃を受けたようにふらふらと後退っていた。
「…カイカ?;」
訝しく思いテッドが手を伸ばしが、カイカは弾かれたようにその場から逃げ出して行った…。
「カイカーッ!?;」
「カイカさん??;」
「―――あ〜あ…」
よくわからないカイカの行動に、少年だけが何かを理解したような表情でにやれやれと肩を竦めた。
「―――きっと、カイカさん…テッドさんに振られた〜って思ったんですよ。」
「…………………………………………………………はあ?」
「カイカさんにとってまんじゅうは重要な位置を占めるアイテム…それを、自分があげたにも関わらず人にひょいっとあげてしまったなんて……カイカさんはどう思ったでしょうね〜? まさに愛の拒絶事件ですか?」
「〜〜〜〜;」
「せめて半分こなら大丈夫だったんでしょうケドね〜?何も丸ごと渡さなくても〜。 はいvカイルさん☆僕の半分どうぞです♪♪」
(半分こを邪魔されて八つ当たりでそんな事を言った)カナタが、カイルに半分まんじゅうを渡す中、テッドは悩んだ。
まさか、という気持ちと有り得る!とが責めぎあうのだ。
(〜〜〜〜取り敢えず、謝って…いや、何で逃げたのかを聞くのがいいのか?;)
この時のテッドは、彼の親友が語った所によると「かなり動揺してた…;」という事だったらしい。
―――しかし。残念ながら、カナタの(嫌がらせのような)予測は当たっていたらしい。
「カイカ!;」
「…!」
ダッシュで逃げる。
「カイ…」
「…!」
一目散に逃げる。
「カ…」
「…!」
すたこらさっさと逃げる。
「〜〜〜〜〜;」
「明らかに避けられてますねー(笑) はい、カイルさん♪雪だるま風トッピング☆アイスです♪♪」
「わ〜…;」←可愛くて嬉しいけれど、状況が状況なので言葉が出て来ない。
呑気な会話が交わされる中、テッドはテーブルに頭を預けて落ち込んでいた。
城内で逃げ回り行方知れずになったカイカに、どうフォローを入れて誤解(?)を解いていいのやら…まさか会話すら出来なくなるとは思ってもみなかったのだ。(ちなみに城内の人間らは痴話喧嘩と判断して、生暖かい視線を送るだけで協力は得られない。)
「テッド…;」
「…………;」
まさに再起不能といった様子に、カイルにはかける言葉も出て来ない…。
「誤解を解くにはまだまだ時間と努力が必要そうですね〜。 あvカイルさん♪僕ちょっと用事に行って来るんで、ここに居て下さいね〜?♪」
「どこに行くの?」
「隠れてるカイカさんに陣中見舞い持ってくんです〜☆」
うおい。ちょっと待て!;
ガッ!とカナタの肩を掴んだテッドは、口を開かずとも全身でそう叫んでいた。
「カイカがいる場所…知ってるのか?」
「大体の見当はつきますね〜」
「…何で黙ってたんだ?;」
「聞かれませんでしたから〜☆」
イイ笑顔であっさり答えるカナタだ。
いいから教えろッ!!(怒)と、テッドの怒声が轟いた。
「…」
カイカは、ぼ〜っと池の周りの茂みに座っていた。
(…よし;)
それをようやく発見したテッドは、考えた。
声をかける→逃げられる→逃げられる前に捕まえてから声をかける。この作戦で行く事に決めた。
気配を殺して、そぅっと茂みの後ろに回り、―――茂みにのしかかるように背後からカイカに手を回した!
「カイカ!」
がぶりっ。
「〜〜〜〜;」
「!!」
―――野生の獣のごとくカイカはテッドの腕に噛み付いた。
噛み付かれたテッドは割と…いや、かなりショックだった。
しかも逃げようとカイカはじたばたもがき続けている。
「〜〜〜暴れるな!;!」
「!!」
「言いたい事があるから聞けッ!!;」
「!!(ぶんぶん)」
首を横に振られ、ピキリと青筋が浮かぶ…。
「聞けッッ!!(怒)」
「…」
少しだけ動きが止まる。
が、
――――何を言うんだ…?
『もらったまんじゅうをあげたのは誤解だ!!別れるつもりはない!云々。』
…………無理だ!
羞恥に負けてテッドは即座に諦めた。
元々マトモに告白(売り言葉に買い言葉的に付き合う事になった)も出来ていないツンデレ(!?)の為、素直に恋愛感情を吐露するのは致死レベルに恥ずかしいのだ。(しかも原因が馬鹿らし過ぎる)
「〜〜〜〜;」
しかし!それでも言わなければならない!
「カイカ!アレは…!」
「…?」
――――――ふと、視界の端に山と集ったギャラリー(女の子多数)と、『ロマンティック告白会場〜見学者募集〜』と旗を掲げたカナタがいた…。
「あ。気にせず続けて下さい☆」
「出来るかッッ!!(怒)」
テッドが怒鳴る間に、カイカは再び逃げ出した…。
この後、テッドが誤解を解くに当たって数日間の時間がかかったという…。
「何でテッドの邪魔ばっかりするの…;」
「や〜何か幸せそうな人見ると邪魔したくなるんですよー(笑)」