麗らかな昼下がり。

――――『麗らか』、そんな言葉が似つかわしくないぼっちゃんラブ城ではあったが、珍しく平和な一時が訪れているのだった。

束の間の平和な時間、それを喜ぶのは常日頃から苦労を重ねているものだと相場は決まっており…

 

「静かだなぁ…」

「うん、そうだね」

テッドとカイルは、親友同士のお茶の時間をまったりと楽しんでいた。

かなり寛いでいるのは仕方のないことだろう…お互い色々と(方向性は違うものの)苦労しているのだから。

現在、カナタが何やらカイカにキノコ栽培を教わるとかで、その苦労の元は少し離れているのだ。

「…でも、本当にアイツにカイカを任せてても大丈夫なのか?」

「(多分…)幾らカナタでも、カイカさんに危ないことはしないと思うから。」

「だといいけどな、」

はははと笑い合うテッドとカイル。

その姿はさながら子育てに疲れた奥様方のようだったが―――その次の瞬間、

 

 

ドカーン!

 

 

…もくもくとカナタの部屋の方から黒煙が上がっている…。

「「―――…爆発した!?;」」

 

 

 

 

 

 

 

その頃、カナタの部屋では…

 

「あいたたた〜;一体何が爆発したっていうんですかー!?;怪しい新種のキノコを調合後栽培しようとしていただけでー!?;」

もうもうと煙が上がり、とても目を開けていられない空間から、カナタは咳き込みながら出て来た。

「カイカさーん、大丈夫ですか〜?」

「…、…っ!」

…咳き込んでいてそれどころではなかったようだが、大丈夫そうな気配がしたので、カナタは大丈夫だと判断した。大雑把過ぎるだろう。

「あー…新鮮な空気が美味しいですー…って、ん?」

秘密部屋から出てきた自室へと出てきたカナタは、その時に違和感を感じた。

…いつもと視界が違っている。

縮んでいたなら即座に悲鳴を上げていただろうが…高くなっていたのだ。

「こっこれはまさかっ…!さっきのキノコ実験ミスで僕の身長が伸びたとかな嬉し恥ずかしハプニングですか!?」

ガッツポーズを取りかけたカナタだったが――――世の中そんなに甘くなかった。

 

 

「あれ?僕こんな色の手袋でしたっけ…? っていうか、服も黒くなって…生足…?」

 

 

わしわしとカナタは自分の身体を確認した。

その結果―――――。

 

「カイカさんになってるんじゃないですかーーーーーっっ!!!!(怒泣)」

 

ちくしょーです〜〜〜!!…そう叫ぶ少年の頬には血涙が流れていた…。いや、イメージだが。

期待していた分、ショックが大きかったのだろう。

…というか、全てカイカの姿で行われている為、かなり違和感が大きい。

「ええいっ!もうこうなったらいいですよ!カイカさんの身体でいいですから!170センチの世界を楽しんできてやりますーー!!…って顔痛ーっ!!;さっきから叫んだりしてますけどっ!顔が引きつりますー!?表情筋使ってないだけあって無茶苦茶痛いですーーー!!」

表情筋が死んでますー!;と言いながら、カナタ(カイカの姿)は駆け足で部屋から出て行った。

 

 

 

タイミング悪く、それと入れ替わりにテッドとカイルが現れた。

 

「カナタ!?何があったの!?;」

「カイカっ!大丈夫かっ!?」

何だこの煙と少なくなった煙を窓へとあおぎ、撒き散らす。

そんな中、テッドの呼びかけに対して返事が返ってきた。

「てっど」

「無事―――…?」

 

その時の、テッドの心理は描写出来ない程のものであった…。

 

何せ、カナタが、あのカナタが裏も表もなさそうな表情と瞳でじっとこっちを見ているのだから。

「ぶっ無事じゃねーー!!;」

「テッド落ち着いて!;」

頭を抱えて絶叫したテッドを見かねて、カイルがそう言う。

確かに、カイルも混乱したが…カイルはこんな不測の事態には耐性が出来ていた。

これは確実に中身が違う。

「…カイカさん、ですか?」

「…」

カイカ(外見はカナタ)が、にこっと笑って頷いた。

…死んでいない表情筋の為、とても幼い微笑み方がバッチリと顔に出ていたりする。

「…カイル、俺…倒れてもいいか?;」

「今倒れる方が大変なことになると思うけど…;」

「?」

見ているだけで卒倒しそうな光景だ。

心配そうに寄って来ているカイカ(カナタの姿)に、カイルは(多少違和感を感じながらも)大丈夫だから、と頭を撫でてみた。

ふにゃっと笑うカイカ(でもカナタの顔)に、小動物好きなカイルとしては可愛いと思ってしまうのだけれども…テッドは限界そうだ。

「えっと…;カイカさん、顔隠してもらってもいいですか?;」

「…?(こくり)」

素直に頷くカイカ(しつこいようだが見た目はカナタ)を、素早くスカーフ外して頭に被せる。

…これで、大体の被害は防がれた。

「そう言えば…」

「何だ?;」

これ以上まだ何かがあるのかと、テッドはよろよろとカイルに視線を向ける。

「カナタはどこに行ったのかな…?」

「………」

カナタinカイカの身体。

 

…そちらの方が、ダメージが大きい。

 

「医務室に行っていいか…?」

「テッド!;しっかりして!!;」

魂が飛びかけたテッドに、おろおろする2人だったが――――

 

「ふー!カイカさん狙ってる怪しい人とか倒してゴミ捨て場に捨てて来ましたよー♪これで暫く安全ですよー!珍しく良い事しましたねー♪ …って、あvカイルさんー☆」

 

…物凄く良く喋り満面の笑顔を披露するカイカ(カナタ)が現れた…。

「テッドーー!!;」

「…!!」

「ぎゃっ!テッドさんの心配してる僕の姿って何か見てて不思議過ぎますー!?;」

倒れたテッドの反応も、無理のないことだと言えよう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で。

 

「今戻れ。すぐ戻れ。(怒)」

「そんな急に言われても戻れませんよー(笑)」

「原因も戻る方法も分からないの?;」

「原因はわかりませんけど、戻る方法はやっぱセオリー通りキッス☆で呪いが解けるんじゃないですか〜?」

「誰が、誰に?(怒)」

テッド&カイカで考えてみると…

 

中身にするにも外見はカナタ、

外見にするにも中身はカナタ。

 

………。

「…もっ盲点でしたーーーー!!;」

「阿呆かーーー!!(怒)」

ギャースと頭を抱えて叫ぶカナタ(でも見かけはカイカ)。

自分にも大ダメージが来ることに、今頃気付いたようだ。

 

 

 

まあ結局、カイルがカナタかカイカにすると言うことで落ち着いた。

…どちらにしたかは、ご想像にお任せである。

 

(ふと思いついた2主⇔4主ネタ。 
我ながら大ダメージだと思いつつ書いてみたり…>笑)