-疵-

 

「――――カナタ」

「………」

 

目を開いた時、

最近見慣れた、――少し前までは馴染めなかった広い天井が見えた

それと………

 

心配げな表情の一番愛しい人

 

「カイルさん……」

「―――覚えてる?さっき急に倒れたの………」

 

―――欠けた紋章、

だんだんと命を削られていくのは解っていた…

 

目の前の人の紋章が、魂を喰らうというのならば………

この片割れの紋章も喰らっているのではないのだろうか……

 

 

「あ〜そういえば!昨日無理矢理溜ってた仕事片付けるのに徹夜したんでした!!」

「そう、―――あんまり無理しない方がいいよ…」

 

―――この人は気づいているのだろうか?

自分が………どんな『眼』をしているのか……

 

何も映さないような真っ黒な瞳の中に、傷ついた色が見え隠れしている………

 

 

―――――――時折、暗い欲望に誘われる…

 

 

―――この人に自分の事を一生覚えていてほしい

―――――この人の心に永遠に残りたい

 

―――方法はとても簡単………

そう、とても簡単な事だ………

 

『死』ねばいい

 

できれば―――目の前で、

 

 

そうすれば、あの人の一番綺麗で柔らかな部分に残れる、

一生、永遠に………………

 

 

 

 

「カナタ……?」

「なんですか♪」

 

戸惑う貴方に、にこぉっと笑いかけると、

僅かだが、微笑が返される…………

 

 

『死』という名の束縛………

解こうとしても解けない…………

 

昔にかけられた物は僕が解いた…

これ以上の枷は…

―――もう誰にも解けなくなるだろう……

 

 

―――でも、それは使えない。

―――――できない。

 

残ったとしてもそれは『』だから………

貴方を傷つけるだけの方法。

 

傷つけたい訳じゃないから………

本当は貴方に笑っていてほしいだけだから………

 

 

―――『』に残るのは『』だけだから

 

だから―――僕は………………