必要としない全て、必要とする貴方

 

 

必要のない押し付けられた全てのモノ

全て捨ててしまいたい………

 

欲しいものは

ただ一つ

 

抱き締めた貴方の温もり

 

 

 

「もしも貴方がいなかったら、」

「え?」

 

「もしも貴方がいなかったら、僕はどうなってたんでしょうね?」

「…………?」

ぎゅうっと抱き着いている幼い少年。

 

僕には何が言いたいのか良くわからない。

 

「きっとムチャクチャやる気がない人間か、ルカみたいになってました」

「………カナタ?」

「僕は―――――」

 

無理矢理他の者に必要とされ

無理矢理押し付けられた仮面

 

責任

束縛

 

必要としない全てのモノ

 

「僕は、」

 

貴方だけでいいんです

 

貴方だけが欲しいんです

 

貴方以外欲しくないんです

 

 

 

丁度表情は死角になって見る事は出来ない。

ただ狂気の孕んだ声だけが僕に伝わる。

 

「―――カナタ、」

「カイルさんだけが欲しいんです」

 

それに応じる事はこの少年の為にならない……

そうわかっていても、

そう知っていても、

僕は応じてしまう、

 

「うん…」

「………」

 

しがみついてくる温もりが

いつの間にか手放せなくなったのは、

お互い様で

 

もう堕とされるしか、

共に堕ちるしかなくて、

 

 

「好きです」

 

 

 

 

 

必要としないもの全てを捨てて

必要な貴方と

 

堕ちたかった

 

どこまでも

 

 

二人きりで

互いの温もりだけで

他の全てを無くして

 

 

 

 

 

 

 

 

堕ちる