――――――ッゴホッ…ゴホッ……

 

 

 

 

「――――…なんか、自分ゴトながら、凄い感じですね〜…」

 

いつもと変わらぬ口調で、カナタは呟く。

ぼんやりと口元を押さえていた手を目の前 に掲げてみる。

 

 

―――――手袋を濡らす鮮血

 

 

口内に満ちる鉄臭い味に眉を顰め、乱暴に手拭いに吐き出す

酷く意識が曖昧だ。

掲げた手のひらを裏返してみる

 

 

「や〜っぱり、コレのせいですよね〜…?」

 

 

―――――輝く盾の紋章、

 

 

欠けた紋章、

 

不完全な…

 

 

だんだんと身体が弱ってくる事が、自分でもわかった。

何度か、人前で倒れた事もあった…。

 

はあ…、

 

ため息がもれる。

 

 

「、」

 

人の気配。

 

 

 

――――コンコン…、

 

「カナタ?はいるよ…?」

「わーいvカイルさん〜〜〜vvv」

当然、赤く染まった布に、視線が向けられる。

漆黒の色を持つ瞳が大きく見開かれた。

「カナタ…それ――」

「あ、これですか?今、トマトジュースの一気飲みという過酷な挑戦にトライしてた んですけど、無情にもそれは失敗して、鼻からトマトジュースが逆流する結果になっ たんです!くうっ!次はカボチャジュースでトライですー!」

「逆流…(汗)」

「ヨシノさんに洗ってもらいに行きますね〜♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごほっ!………うっゲホ………!」

 

 

 

吐血。

 

止まらない。

 

息が整わない。

 

 

「まだです…まだ………」

霞んだ瞳が強く空を睨み付ける。

 

 

――――――まだ…言えない

 

……………まだ………言えない