別れそして始まり…

 

約束の場所にて、

「あのっ、今までありがとうございました!!」

幾分緊張した面持ちでカナタが頭を下げる、珍しい事だった…

 

一一一一彼は自らの運命に打ち勝ったのだ、

 

「よかったね」

 

喜ぶべき事なのだろうけれど…

 

「それで、僕達旅に出るんですけどッ…」

顔を真っ赤にして別れを告げようとする少年、…そんなにジョウイ君達と旅をするのが楽しみなのだろうか、

 

………当然の事だ。

 

初めて出会った時よりも幾分成長した少年、多分これからも………

別れを告げるのは辛かったけれど、いつか必ず来る事だ。

 

「うん、今までありがとう、さよなら。」

 

「えっ!?」

なぜか固まっているカナタをしり目に、別れを告げ、僕はその場を後にした。

 

 

 

 

「うわーーーーーーーっっっっっ!!!振られちゃいました〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ!!!!!!」

もう生きていく気力がないーーーっとカナタは泣き崩れた。

カイルが立ち去った十分後の事だ。

どうやらあまりのショックに立ったまま気を失っていたらしい。

「カナタ、元気だして!!」

「うわ〜〜〜〜〜んっっ!!」

死んだはずと思われていた義姉の声も聞こえない程重症だった。

 

「…僕はカイルさんにとってそれくらいの存在だったのかな………………。」

 

 

 

 

 

 

「ぼっちゃん…?どうかしたのですか?」

グレミオ、クレオ、パーンが一様にカイルを心配して部屋に集まっていた。

何故だか、この幼いままの主人は帰ってきてから塞ぎ込んでいるのだ

 

「ん……カナタがナナミちゃん達と旅に出るって言って…ちょっと、」

カイルは弱々しく微笑む、

その言葉に三人はズザッと後ずさりる。

そして『マクドール家 家族会議!!』が開かれた。(もちろんカイルには聞かれないように、)

 

「おい、あのカナタ君が坊ちゃんをおいて旅立つと思うか?」

「さすがに…それは……な、」

「カナタ君、もしそれが本当でしたら…」

チャキッとグレミオの手に愛用の斧が構えられる

ほとんど娘の幸せを願う母親の気持ちだ。

 

「あの、坊ちゃん、その時の様子を詳しく聞かせてもらえますか?」

「うん、?」

訳がわからないながらも、カイルはその時の短い状況を伝える。

 

そして訳を聞いたクレオは、

「それは………坊ちゃんを誘おうとしていたんじゃ?」

「え?僕、を?」

カイルは動揺を露にする。

三人は『どうしてこの人は色恋沙汰に疎いのだろうか、』と思った。が、口には出さなかった。

 

 

 

 

 

「カナタ、どうしたんだい?」

「…もう一回誘ってくる!!」

ようやくいつもの調子を取り戻したカナタは走り出した。

後ろで『なに〜!?』と叫んでいるジョウイや手を振って応援しているナナミにも気づかずに、

 

ただひたすら愛しい人の元へと………

 

 

 

 

 

「坊ちゃんはどうしたいのですか?」

「僕は…」

 

どうすればいいのかワカラナイ。

 

ついて行きたいという気持ちが胸を占めていた。

ただ、迷いがあるだけだ………

この死の紋章が彼を不幸にするかも知れない…。

 

「カナタ君なら大丈夫ですよ、」

 

不意にそう声をかけられ僕が顔をあげると、みんなの暖かい笑顔が目に入った

「家の事なら、俺とクレオに任せておいて下さいっ!」

パーンが自信満々にいう。

「もちろんこのグレミオはお供致しますよ!!」

グレミオが慌てて口を挟む、

その心は、

(婚前交渉許すまじっ!!)

である。

 

「あ………」

カイルは思わず黙り込む、

そしてクレオが再び声をかける。

「ぼっちゃん、ぼっちゃんはどうしたいのですか?」

「僕は一一一一一」

 

カイルの決意は決まった。

 

 

 

 

「………」

カナタは扉の前で立ちすくんでいた。

開けるか開けまいか、答えは決まっていたが…

 

カチャリ、

 

ノブに手をかけようとした瞬間、扉が向こう側から開かれる。

「あ、」

扉の向こうにはカイルが立っていた。

それも、旅の準備を持って、

 

「あの…カイルさん、旅、にでるん、ですか?」

咽に声が絡まりつつも、カナタはなんとか問いかけを発した。

「一一一一うん。」

ゆっくりと、しかし強い意志を込めた言葉でカイルは答えた。

「そう、ですか…」

「君…と、」

「え?」

ポソリといった一言をカナタは聞き逃さなかった。

よく見れば、カイルの頬は朱に染まっていた

「カナタ、と一緒に行きたいんだけど………いいかな?」

「!!!!!いいに決まってるじゃないですかっっ!!」

 

 

 

 

 

少年達の旅は今始まる

どこに行くとも知れないけれど…

 

少年達の旅は今始まる一一一一一…

 

 

じゃあ、生きましょうか♪

うん…(///)

 

手を繋いだ少年達は今歩き出す…

右手の紋章と共に、

 

                                               終わる