悲劇の結末
「カ・イ・ルさぁ〜んvvv」
今日も元気なオレンジドラゴン軍のカナタは、いつものごとくトラン共和国の英雄であるカイル=マクドールの滞在する部屋を訪ねた。
この無邪気な笑顔のとんでもない小悪魔な少年の行動は予測不可能。
カイルは自分の名を呼ぶその声についつい身を強張らせつつ振り返った。「お待たせしました〜vvv」
「カナタ…」
カナタによってぎゅーっと抱きしめられ、少々呆れ顔になりながらも名前を呼ぶ。
「はいv何ですか?カイルさんvvv」
見なくても想像がつく満面の笑みを浮かべているであろう返事に、暑いから離れてほしいとはとても言えず、カイルは苦笑いした。
「はぁ〜、漸く会えましたーvvv」
カナタの呟きにカイルはくすりと笑った。
「軍議は終わったの?」
小首を傾げて尋ねるカイルにカナタは、勿論ですー!と自信満々に答えながら、殊更強く抱きしめた。
苦しく思いながらも珍しく真面目に軍議に取り組んだと思われる少年の頭をカイルは撫でた。
そこへ軽やかな足取りでカナタの義姉であるナナミが笑顔全快で飛び込んで来た。「カナタ〜!カイル さ〜ん!あ、邪魔しちゃったかな?」
ペロッと可愛いらしく舌を出しながら謝るナナミにカイルはそんな事無いと言いながらカナタを剥がそうとしたが吸盤があるのではないかと思うほど見掛けよりもすごい力で抱き着かれていてそれは無駄 な抵抗に終わった。
カナタを剥がす事を諦めて、ナナミの方を見たカイルは彼女が後ろ手に何かを隠している事に気が付いた。「?ナナミちゃん、何を持ってるの?」
カイルがそう疑問を口にした時、カナタの体がビクリと大きく揺れた。
「?」
抱き着かれていてカナタの表情が見れないから詳しくは解らないけれど、カイルはとなく触れてはいけない物に触れてしまったような気がした。
そんなカイルの予感は虚しくも当たってしまった。「えへへー。さっき軍議でも出したんですけど…実はカナタに頼まれてケーキを作ったんですー♪」
満面の、そしてどこまでも清らかな笑みとともに差し出されたケーキは表現の仕様のない色と臭いの物だった。
「…………………カナタ。」
今にも裁きを発動しそうなカイルに、カナタは少しだけ離れてだらだらと冷や 汗を流しながら笑った。
「え、えへっvvv」
「笑ってごまかしても駄目っ!!」
その日、カイルの裁きが発動したとかしなかったとか。
後日談
あの日、ナナミのケーキを食べて意識不明の重体に陥った軍議参加者達はホウマン先生のお世話に短くて二週間はなり、先生は弟子に「過労死しろって暗に言われているのでしょうかね…」と、ぽつりと漏らしたそうだ。
そして、カナタはと言うと… カイルから裁きを食らう前にカイルの代わりにナナミのケーキを食べて三日間寝込んだそうだ。「うぅ…、僕は耐性がある筈なのに…。パワーアップしてる気がしますぅ〜。」
しくしく泣きながら訴えるカナタの頭にカイルはタオルを乗せてやりながら言った。
「自業自得!」
「あぅ〜〜〜。」
「…でも、ありがとう。」
「カイルさ〜んvvvvv」
ぷんぷんと可愛いらしく怒りながらも自分の代わりに倒れたカナタを結局放っておけないカイルであった。
END
後書き
てなわけで、イラストにSSをつけてみました。
私と海月の意見両方を考えていたらこんな感じになってしまいました。f^_^;
最強ですね、ナナミちゃん。
全然悪気がない辺りが余計に怖いデス。(-.-;)
キャラとか違ってたらごめんなさい。m(__)m深海紺碧