run away |
ある平和な昼下がり、事件は突如として起きた…。 「や、やべぇ…。」 クルガンの執務室。そこに立つ人影――シードは冷汗を流しつつ、深い絶望の声を洩らした…。 門番の元に現れたクルガンはいつもの無表情の中に怒りを含ませ、シードの行方を探していた。 「いえ、私どもは見ておりません。」 門番がクルガンに言う。 「良いか、もしシードが門を開けろと言っても、絶対に門を開けるな。奴が外に出るのを何としてでも阻止するんだぞ。解ったな。」 「は…はっ!!」 門番の返事を聞き、クルガンは踵を返すと城内へ戻って行った。 『いいか、俺がここに来たっていう事は絶対にクルガンには言うなよっ!!!』 補佐官は、先刻上司が言った言葉をぼんやりと思い返しながらティーカップを口元に運んだ。 (また何かクルガン様を怒らすような事をしたんだろうな…。) 溜息を吐くわけでもなく、只、諦めたようにぼうっとし、カップを口に運ぶ。 かちゃ 誰かが扉を開く音と、補佐官がカップを置く音が合わさった。 「シードがここに来たであろう。」 予想通りの声が、低く威圧するように聞こえてきた。 (ばればれです、シード様…。語尾にクエスチョンマークが着いていない辺り、流石はクルガン様…。) 補佐官はすっと席を立つと振り返った。 「シード様は逃げ場を探している模様です。恐らく今頃は”ご自分が一番安全だと思われる場所”へと向かおうとしていらっしゃるのではないでしょうか?」 にっこり笑って密告する補佐官にクルガンは、そうか。とだけ言い残すと慌てる様子も無く、去って行った。 (しかし…あれはかなり怒っていらしたご様子…。) 追い詰められる、いや、もう既に罠に掛かっているであろう上司を思い、彼は静かに同情した。 「いえ、退けません!!シード様をお出しするなとの命令が出ております。」 門前。門番とシードの口論が響く。 「…っくしょー。クルガンの野郎……。」 舌打ちし、強行突破を試みようと思ったその時だった。 「あ…クルガン様…。」 門番がシードの後ろを指差し、ポツリと呟いた。 「ん、んな子供だましに引っ掛かる俺じゃね―ぞっ!!」 と威勢良く言い放ち、強行突破に出ようとしたシードの腕を誰かが掴んだ。 「く、くくクルガン………。」 多量の冷汗をかき、青くなったシードにクルガンはどこまでも冷静な声音で言った。 「ようやく見つけたぞ、シード。」 「あ、…あははははは。イイ天気だから遠乗りでもしようかと思ったんだけど…。」 苦し紛れな言い訳をつらつらと並べ、シードは無表情に見下ろす男に引き攣った笑みを向ける。 「歩いてか?」 嘲笑を浮かべて言うクルガンに、ぐっと言葉に詰まるシード。 ずるずると引きずられながらシードはこれから延々続くであろう説教を思ってげんなりとした。 「ああ、そうだ。その後、私がお前に用がある。楽しみにしておけ。」 そう言うクルガンの目は笑っておらず、口元には鬼畜な笑みを浮かべていた…。
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……………あれ?
追いかけっこの筈が…。(滝汗)
ええと、ウチのクルガン氏用意周到なので…。(撲殺)
あああ、すみません!!!(涙)
こ、これでも宜しいでしょうか…水稀なみ様…。
紺野碧