「ここ・・・どこ、カナタ?」
「どこでしょうね〜?」

すっかり困り果てた様子のカイルさんに、のほほんと笑うカナタくん。
暗くなりかけた、怪しい森。
ギャァギャァとつぶれた声で泣き喚く鳥の群れが木から飛び立ちます。

「・・・・・・・・・やっぱり、大人しく迎えを待ってた方がよかったんじゃ・・・」
「えー!?そんなん待ってたら、アリシラさん、間違いなくあの世行きですよ!?」

カナタくんが後ろを振り返ります。
そこには、全身血濡れのアリシラが担架の上でうめいていました。
実をいうと、みんなで温泉旅行の途中、止まらない痴話げんかの末に、アリシラはアリムラによって瀕死の重傷を負わされていたのでした。
なぜか、女将も仲居も番頭もいない宿には、手当てできる人間などおらず、宿にひとつだけ置かれていた「てれほん」という怪しい通 信道具を使って、近くの医療施設になんとか連絡はとれたものの、さすがに状況が切迫していただけに全員でアリシラを宿から医療施設に移動させることを決めたのでした。
ところが。
慣れない土地であるためか、方向感覚を狂わされた一行は、完全に迷ってしまっていたのでした。

「こう暗いんじゃ、闇雲に歩くのも危険だね」
「そーですねぇ・・・・・・(汗)」

あたりを見回すスイさんに頷くミドリくん。

「でも、歩いたらなんかおなかへったね」
「大丈夫ですっ!!こんなこともあろうかと、宿からおにぎりを作って持ってきました!さぁ、みなさんもどうぞ」

フィランさんの言葉に嬉しそうに反応したカナトくんは、相変わらずの準備のよさで、その場にいるWリーダーさんたちに、おにぎりを配ってまわります。

「それにしても・・・本当に、ここってどこだろうね?あまり、いい感じのしない場所だけど・・・」
「カインさん、いてくれるんなら、どこでもいいけど〜」
「いくらなんでも、楽観しすぎだろう、セイ・・・」
「凍華さんも、あんまり危機感ない気がしますけど・・・」

不安げに空を見上げるカインさんと、嬉しそうなセイくん。
それにツッコミをいれる凍華さんに、さらにツッこむ皓くん。

なんとも微妙な関係です・・・・・・

「ったく、アリシラのヤローが情けねぇから、こんなことになるんだってんだ」
「・・・・・・そもそもの原因は、君にもあるだろう、セイル・・・」

アリシラを見下ろして言うセイルくんに、ライムさんもまた冷たく言い放ちます。

「あぁ・・・ラルウァさんと愛の婚前旅行だったはずが・・・・・・(涙)」
「だから、イール・・・愛するって誰と誰が・・・・・・」
「そこで勝手に不幸にでもなってれば?」

本来ならば、ラルウァさんと2人きりの温泉旅行になるはずだった、不幸同盟加盟者(おい)イールくんが涙します。
ラルウァさんは、とにかくイールくんの言葉の中の一単語だけに疑問を感じているようですが、立嵐さんは、きっぱりと言ってくれてしまいました。

「うぅ・・・あの宿もここも、なんか、ほんとに怖いです〜・・・」
「ほんっと情けない奴だなぁ、お前も」

びくびくとあたりを見渡すフェートゥスくんに、ナチさんの一言。
まぁ、とにかく、そんなわけでWリーダーさんたちは温泉宿から、こうして出てきているのです。
ただ一人、アリシラをこんな目にあわせた張本人のアリムラを除いて。
アリムラは、荷物番という名目で、一人宿でのんびりしていました。

「・・・・・・・・・?」
「お、フィアル?珍しいな〜、目覚めたか」

途中参加組のヒスイとフィアルも、くっついてきていました。
が、ぐぅぐぅといつものように眠っていたフィアルが、突然目を覚まし、きょろきょろとあたりを見渡し始めました。

「どした?」
「・・・・・・・誰か・・・いる・・・?」
「はぁ?」
「話し声・・・聞こえる・・・・・・」

眠そうに目をこすりながら、フィアルは何もない一点を見つめます。
自分達以外の話し声など、一切聞こえません。
フィアルには、聞こえるはずのない声が聞こえることもあるといいますが・・・
誰もが、ひきつった笑みをもらしました。
フィアルの見つめる方向を、カイルさんも見つめます。

「あ・・・・・・・・・」
「カ・・・カイルさん・・・?(汗)」

カイルさんも何かを見つけたような顔。
カナタくんが、おそるおそる呼び止めました。
カイルさんも同じく「見える」人だそうです・・・

「魂魄この世にとどまりて〜・・・恨みはらさでおくべきか〜・・・・・・」

どこかで聞いたような、恨みのこもった声が森に響きました。
しかし、一行に恐怖心を与えるようなものではありません。
フィアルとカイルさんが見つめていた一点から、もわもわと霧のようなものがわきだし、それはやがて人の形となってあらわれました。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!あ・・・あなたはっ!?」

カナタくんが、その人型を指差し、叫びます。
見事な髪型の人型は、さも恨めしそうに2主軍団を見つめました。

「ようやく見つけたぞ、貴様らっ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰でしたっけ?」

怒りに燃えた人型をじっと見つめた後、カナタくんは、腕組みして首を傾げました。
2主軍団全員が同じく首を傾げます。

「誰も俺を覚えとらんのか、この能ナシどもっ!?」
「記憶には、あることはあるんですけどね〜」
「パッと出てきたと思ったら、すぐにフェードアウトしちゃった人ですよね〜?」
「名前なんだっけか?」
「記憶に薄いことで記憶に残る人」

2主軍団の酷な言葉に、人型は、どんどん情けない顔になっていきます。

「えーと・・・なんだっけ・・・ソロン・ジー・・・だっけ?」
「確か、そんな武将いましたねぇ・・・ルカが処刑させた人物でしたっけ?」

元ハイランド組(笑)のナチさんとスイさんが、人型を見て言います。
どうやら、2主くんたちに比べれば、多少は覚えてくれていたようです。

「くぅぅぅぅぅっ!!!貴様ら、許さん!!ゲーム本編だけでなく、カードストーリーズでまでも敗戦の将という屈辱的地位 に貶められ、あげくにこの扱いとはっ!!!呪ってやる!」
「あんたの呪いなんて、たいしたことないんじゃないの?」
「まだ言うかっ!貴様に一番に呪いをかけてくれる!!!」

怒り狂ったソロン・ジーの亡霊に、セイルくんが言い放ちましたが、それが気に入らなかったのか、ソロン・ジーは、びしぃっと彼を指差し怒鳴りました。

「貴様らは、最後の一人となるまで、この森で戦いつづけるのだ!!最後に残った1人のみが、この森を生きてでられる!!!」

ソロン・ジーの声がこだまし、ふとあたりを見渡すと、突然風ないのに、まわりの木々が倒れ、道をふさいでしまいました。
全員が顔を見合わせます。

「最後の一人って・・・マクドールさんたちとも戦えってこと・・・?」
「当然だ!!!」

がびーん!!!

確かに2主くんたちの間に落雷がありました・・・・・・

「僕にはカイルさんを、その手にかけることなどできませんっ!!!」
「・・・・・・カインさん・・・怒らせると怖いしなぁ・・・」
「凍華さん、まるで呪いなんか気にしてないみたいですし」
「愛するラルウァさんを殺すなんてできませんー!!!ってか、リィにも、かなう気がしないです(汗)」
「フィランさん・・・食べ物でつればなんとかなるかもしれないけど・・・僕には、そんなことできないですー(泣)」
「へっ・・・どーせ、俺のはかなわぬ片想いさ。だったら、ライム!お前殺して、俺も死ぬ !!!」
「スイさん、一流の策略家ですからね・・・殺せるかどうかっていう以前に、僕には勝ち目ないかもです・・・あの笑顔でせまられたりしたら、もう・・・」
「ナチさんにかなう人なんか、いるわけないじゃないですかぁ・・・」
「・・・・・・フィアルは、半分死んでるようなもんだし・・・」

様々な2主くんたちの思惑が飛び交う中、突然あたりの雰囲気が一変しました。
ざわざわと木々の葉がこすれあい、音をたて、どんどん暗がりが広まっていきます。
そして・・・・・・・・・

「ふははははははははは!無能なブタは死ね!!!」
「んなっ!?ルカ様!?」
「あ・・・ルカ・ブライト・・・・・・」

突如ルカ・ブライトの亡霊が現れ、ソロン・ジーの亡霊ごと一緒に消え去りました。
後に残されたのは、奇妙な静寂のみ。

「あははははは。ルカも相変わらずだねぇ」
「っていうより、死ねったって、ソロン・ジーの奴、もう死んでるんじゃんかなぁ?」

久し振りのルカに向かって、スイさんとナチさんが言います。
なにはともあれ、木によって完全に道は遮断され、戻ろうにも戻れません。

「ほんとに・・・殺しあうしかないのかなぁ・・・?」
「どーですかねぇ・・・宿に残ってるアリムラさんと連絡がとれれば、助けてもらえるかもしれませんけど」
「あいつのことだから、アリシラ絡みっていったら、動かないんじゃないの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・言えてますね・・・(汗)」

すっかり困り果てた一同。

「だけど、最後の一人になるまで殺し合ったとしても、結局道が開くっていう保証はないわけでしょう?闇雲に、あの武将の霊の言うことを信じるのもどうかと・・・」
「そうですねぇ・・・・・・」

とりあえず、なんとかここから出る方法を探そうと、みんなが考えあぐねている時、またも眠っていたフィアルが目を覚ましました。

「・・・今度はなんだ、フィアル・・・・・・」
「・・・・・・・・・牛とブタと鳥・・・」
「は?」
「・・・・・・声する・・・」

動物の声など、今はしません。
わずかに、虫が小さく羽音をたてているのみです。

「フィアル・・・・・・・・・(汗)」
「すごく痛そうな、悲鳴みたいな鳴き声・・・・・・」

フィアルが、声が聞こえるという方向を指差します。
すると、そこからガサガサと音が聞こえたかと思うと、突如人影が現れました。

「みんな、お待たせ〜♪」

大きなナベを片手に持ったナナミが、どこからともなく現れたのです。
当然のごとく、そのナベからは、異臭が漂っていました・・・・・・

「ナ・・・ナナミ!?」
「みんなが、この森にいるって聞いて。(誰からだ)こんなところじゃ、ご飯も何も食べれないでしょ?だから、差し入れ作ってきてあげたのvvv」
「い・・・いや、ナナミ・・・さっき、おにぎり食べたから・・・(汗)」
「それじゃ、たりないでしょ!?さぁ、みんな!!!遠慮せずに!!!!!」

周囲の静止の声も聞かず、ナナミはナベのフタを開けました。
奇妙な叫び声をあげた異形のモノが蠢き、はいだしてきます。

「ナッ・・・ナナミッ!!!それ、原料なに!?」
「えー?みんなが力つけられるようにって、牛肉と豚肉と鶏肉と・・・あとは野菜で煮て〜・・・・・・」

どうやら、フィアルが聞いた声は、この料理の材料となった哀れな動物たちの声のようです・・・

「じゃぁ、みんな。ちゃんと食べて力つけてね」

いいながら、ナナミは元きた道を戻っていってしまいました。
といっても、道らしき道は見えませんが。

「ナナミ待って〜っ!!!どーせなら、この倒れてる木をどけてから行って〜っ!!!」

泣き喚く義弟たちの声は、義姉には届かなかったようです・・・

「う・・・うぅ・・・・・・(滝汗)」

じりじりと近寄ってくる、ナナミ料理。
「食べて食べてvv」と全身で表現しているようです。
一応は、まだ食べなれている方だといえる2主くんたちは、マクドールさんたちを背中にかばいながら、どんどん追い詰められていきます。
このままでは、ナナミ料理が胃の中におさまるのも、時間の問題でしょう。

「こ・・・こーなったら・・・・・・っ!!」

カナタくんは、決意のこもった瞳で、料理を一瞥するとカイルさんに向き直りました。

「こんな料理にカイルさんを殺されるくらいだったら、僕がこの手でカイルさんを殺します!!!」
「え・・・えぇぇぇぇっ!?」
「いっしょに死んでください、カイルさんっ!!!」
「ちょっと、カナタッ!?って・・・・・・・うわっ!?」

カナタくんが、カイルさんに飛びつきます。
目が本気でした・・・
しかし、その機を逃さずに、ナナミ料理も「食べて食べてvv」と2人に襲い掛かります。
よくよく見ると、まわりでも同じような騒ぎが起きていました・・・
一部、マクドールさんと2主くんの強さの立場が逆転しているWリーダーさんも、いらっしゃるようですが・・・

「ちょっと、カナタっ!!いい加減にしてっ(汗)」
「安心してください、カイルさん!!!僕も、すぐに後をおいますっ!!!」
「そういう問題じゃないでしょ!!!」

ソウルイーターと輝く盾の紋章とが、そこここで発動を始めました。
トンファーと棍がぶつかり合う音も聞こえてきます。
そのまま壮絶なる争いは、森が明るくなる頃まで続けられました。
どうやら「湯煙温泉宿殺人事件〜愛憎の行方〜」は、こちらが本編のもようです(謎)
そして、騒ぎがおさまりかけた頃・・・Wリーダーさんたちの悲鳴が、森にこだましました。






「・・・・・・みんな遅いなぁ・・・また、アリシラが迷惑でもかけてるんじゃ・・・」

夜明けを迎えても帰ってこない一行を心配したのか、はたまた単に待つことに飽きたのか、アリムラが森へと入ってきました。
道を進んでいくと、大きな倒木が行く手を遮っています。

「・・・・・・・・・・・・・?????」

これでは進めない、と思いながらも、木の向こうでなにやら呻き声が聞こえることに気付き、アリムラは宿へ一旦戻ると、チェーンソーを持ち出し、(どこに置いてあったんだ・・・)その先へ行ってみました。
が、後悔先に立たず。

「う・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

食べ残しのナナミ料理の餌食になりましたとさ。






「う〜・・・・・・うぇっ・・・いくらなんでも、食べ過ぎました・・・」

あれから、どれだけの時間がたったのでしょう。
ソウルイーターと棍の応酬を受け、さらにナナミ料理が無理矢理胃の中におさまったことで倒れていたカナタくんは、青い顔で、ふらふらと立ち上がりました。
そのまま、きょろきょろとあたりを見回すと、大勢のWリーダーさんたちが青い顔をして倒れています。
「こ・・・これは・・・・・・?はっ!!!ということは!!!僕が、最後の1人なんですね!?生き残りなんですね!?」

どうやら、戦い続けて身体が疲弊しきっていたWリーダーさんたちは、そのままナナミ料理を食すハメになったようです。
青い顔をして倒れているのは、単に食あたりか何かでしょう・・・
しかし、カナタくんの目にうつったのは、アリムラが入ってくるときに、チェーンソーで道をこじあけた倒木。

「!!!道が開いてます!!僕が勝者なんですねっ!はっ、そうです!カイルさんは・・・・・・」

カナタくんが、足元を探すと、カイルさんも、まわりのWリーダーさんと同じく、青い顔で倒れていました。
ただの食あたりのようですから、当然生きています。
わずかな呻き声を聞いたカナタくんは、何か考え込みました。

「・・・・・・・・・人気のない森・・・カイルさんの意識はないし・・・・・・これは据え膳なのでしょうか・・・」

そんなことを考えながらも、ふと思い立ったようにカイルさんを抱きかかえて立ち上がります。

「そうです!今、みんな、この森で死んでいる(違います)ということは!!!あの宿には誰もいない!僕とカイルさんの貸切!?」

きゅぴーんとカナタくんの目が光りました。

「さぁ、カイルさん、行きましょう!!!しなびた温泉宿で、2人きり!!!とことん愛し合いましょう!!!」

そのまま宿の方向へとダッシュしていくカナタくん。
残されたWリーダーさんたちは、連絡をもらってから、あまりにも到着が遅いと心配した医療施設の人々が様子を見に来た時に発見され、医療施設へ搬送されたそうです。(本当に申し訳ございません・・・)
そしてこの結末が、本当にソロン・ジーの呪いなのかどうかは、謎のまま、闇に葬り去られたのでした

 
カウンター5800(キリ番)ゲットの陸海月様からのリクエスト。
「なりきりでバトルロワイヤル!!」
・・・・・・・・・鈴鳴は、まだバトロワ見たことないのですよ(汗)
でも、あれって戦闘プログラムなんですよね、確か?
各クラスごとにクラスメイトと殺し合い、最高の戦闘の達人を作り上げよう、という?
なんで、こんな話になってるのでしょうか・・・そして、あまりにも戦っていないような・・・
さんざん、書きあぐねた結果がこれじゃ、どうしようもねぇっすよ!反省なさい、わし・・・
なりきりネタでは、いつもリクをいただいたWリーダーさんたちをできるだけ活躍させようとしているのですが・・・う〜ん・・・相変わらず、難しいですね・・・
できる限り、まんべんなくWリーダーさんたちを出したいと思いながらも、それもできてないし。
海月様、本当に、毎度毎度すみませんっ(汗)こんなんでよろしければ、もらってやって下さい・・・(いらねぇだろ)